「EC-PX700」は、2015年10月22日にシャープから発売となった、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。
この機種は、ダイソンのように2段サイクロンを持つ、高遠心分離力の本格サイクロンシリーズ "パラレルフローサイクロン" の、(現在)下位機種ということになります。
この機種特有の特徴としては、ヘッドには自走(パワーアシスト)式 "モーター駆動パワーヘッド" を採用しており、ヘッドに関してはどうにか高性能といったレベルです。
また、フィルターに関しては、前々度までは "HEPAフィルター" と表記されていたものなので、かなり高性能です。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (3.5)
この「EC-PX700」のヘッドは、"モーター駆動パワーヘッド" と呼ばれています。しかし、これは固有名称というよりも、ヘッドの方式を表す言葉のはずです。
機能的には、回転ブラシが自走式(シャープ名:自走パワーアシスト)なので、割と良いものですが、ブラシは毛ブラシとゴムブレードが交互に回るもので、若干安い造りとなっています。
▼ 吸込仕事率 (1)
この機種の吸込仕事率は、210〜約40Wです。この "パラレルフローサイクロン" は、本格サイクロンで、空気の渦の生成にパワーを割いていますので、この数値はかなり低めとなっています。
▼ 清掃力 (2.5)
ヘッド性能はそこそこですが、やはり吸込仕事率に不安があるのでこの程度だろうと・・・。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
このシリーズは、ダイソンや、東芝・トルネオV、パナソニック・ダブルメタルサイクロンとも同じ、2段式の本格サイクロンです。
この方式は、大きなゴミを遠心分離するダストカップ内の(大)サイクロンと、その上の見えないところに設置された、細かなゴミを遠心分離する為の複数の小サイクロンからなり、シャープの場合その小サイクロンは、8個設置されています。
それにより、
「お手入れが面倒だったダストカップ上部のプリーツフィルターがありません。さらに、本体後部の取り外し可能なフィルターは約2年半お手入れ不要となりました。」
と表記されるに至っています。
ただし、8年程前までの数年間は、問題のプリーツフィルターに電動除じん機構を取り付け、"約10年間フィルターの手入れ不要で、99%以上の吸引力を維持" と宣伝するのが流行っていました。
10年というのは、製品寿命に匹敵するので、それはつまりフィルター掃除の必要はないということを意味していました。しかし、勿論実際の使用ではそのような性能はなく、1年持たない等個別メーカーのみならず業界の信用を破壊しかねない状況になるに至り、そのような年数表示自体国内メーカーではなされなくなってしまいました。
また、格上のダイソンの最新のヨコ型機は、現在1年に1度のフィルター掃除をユーザーに要請していることもあり、その "2年半" という数値にも殆ど信憑性がありません。
実は、その数値が出た試験は、"ダストカップ満量まで吸引・ごみ捨てを繰り返す" という形で行われますが、ずっと「強モード」で運転しているはずです。
しかし、通常の掃除では電源のON/OFFを繰り返すはずですし、この機種にはエコモード(自動パワーコントロール)もありますので、遠心分離力が高い「強」でずっと運転する訳ではありません。
そして、このシリーズの場合、サイクロン部の中心にある筒型フィルターの目が粗く、他メーカー製(※ダイソンを除く)と比べてホコリがそこを通りやすいです。
2段目の8つある小サイクロン部分も、ダイソンと比べれば性能は劣るはずなので、特に吸引速度が遅く、遠心分離力が低い時間帯には、その分のホコリもフィルターにまで達しやすいはずです。
▼ ゴミ圧縮 (1)
シャープ製サイクロンでは、上位シリーズ以外は、特にゴミ圧縮効果は謳われていません。
ただ、ダストボックス内でゴミが回っている間に、ゴミ同士が自然とくっついてある程度固まる効果ならありますし、また、ゴミが多く溜まり、ダストボックスのどこかで引っかかると、そこでゴミは圧縮されることになります。
▼ ゴミの捨てやすさ (1.5)
この "パラレルフローサイクロン" のダストカップは底がワンタッチで下に開くタイプです。
確かにワンタッチなので、それ自体は簡単なのですが、ゴミがボトッと落ちるとホコリが舞います。なので、下開きの蓋を下から抑えながらゆっくりと開き、しかもゴミ袋等の底にそっと落とす必要があります。
この方法だと、ゴミ箱の底に捨てるのは困難ですし、ゴミ箱に捨てた場合、その上から何かを投げ込んだ際に、ホコリが舞う原因となってしまいます。
また、この方式では、下に開く蓋の内側に残るチリの扱いもまた厄介です。しかもそのチリは、捨てる際に蓋とダストカップ開口部とが合わさる部分に付着しますので、気分も非常に悪いです。
ただし、この機種の場合、静電気抑制作用のあるプラズマクラスターイオンをダストカップ中心部に放出する機能があります。
その為、他の類似機種よりも、ダストカップへのチリの付着が少なく、比較的綺麗にゴミを捨てることが出来るはずです。
▼ ダストボックスの容量 (1)
この "パラレルフローサイクロン" のダストボックスの容量は、0.25Lです。サイクロン式の小型機としてはこれが標準ですが、通常サイズ機の標準・0.4Lの約63%しかなく、あまり一軒家向きとは言えません。
ダイソン以外のサイクロン式の小型機は、元々高齢者家庭や、マンション向けとして無理に作られた物であり、自然な発想として小型化された訳ではありません(※ダイソンのみ、「重い」との評判を覆す為に作った可能性大で、集塵容積もDC63で0.5Lです)。
▼ フィルター (4)
この「EC-PX700」には、"抗菌・消臭高性能プリーツフィルター" が採用されていますが、これは前々年度までは "HEPAフィルター" と表記されていたものです。なので、一応かなり高性能なはずです。
他にも、本体後部の排気口フィルターとして "Ag+アレルディフェンスフィルター" が採用されています。
尚、"プリーツフィルター" とは、表面積を増す為に、アコーディオン状に折り畳まれたフィルターのことを表し、"AG+" とは抗菌効果のある銀イオンを表しています。
▼ 本体重量 (5)
この「EC-PX700」の本体重量は2.9kgなので、小型機相当です。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらは1.4kgですので、全体としては普通です。しかし、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドの装備型としては最軽量で、これで自走(アシスト)式とはなかなか見事です。
▼ 運転音(最大値) (1)
当「EC-PX700」の運転音は、65〜約61dBですので、単に普通にうるさい掃除機です。
▼ エコモード (3)
シャープのエコモードはシンプルで、絨毯かフローリングかを判別してのパワー制御と、ヘッドを浮かすと運転を停止する "節電アイドリングストップ" から成っています。
時々、「掃除動作に合わせてパワーを自動でコントロール」と記述されていることもありますが、これは床質検知機能が、床面から受ける抵抗の変化から「誤検知」するのでしょう。
これらにより、最大約40%の消費電力削減になると言われています。
▼ 消費電力 (3.5)
この機種の消費電力は、850W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを載せて遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。
実は、当機より150g軽いダイソンDC63は1,150Wモーターですので、そういった単純な面でも実はダイソンとは差があります。
▼ 付属ブラシ類 (2)
この「EC-PX700」には、手元ブラシ(シャープ名:ベンリブラシ)はありますが、延伸管先端部ブラシがありません。
あとは、普通のすき間ノズルが付属しています。
▼ 価格 (3)
これとほぼ同型の前年度型の最安値が2万円程度でしたので、この機種もそれと同等である可能性が高いです。
▼ 総合評価 (2.6)
この「EC-PX700」は、比較手頃な価格で買えるはずの本格サイクロンシリーズの1機種として、それなりの高い価値があります。
しかし、200Wの低吸込仕事率で、この中途半端なヘッドを付けていて十分なのかと疑問に思います。勿論、フローリングであれば問題なく、絨毯でも表面の糸屑等は大丈夫だろうと思いますが・・・。
前年度型「EC-PX600」との違い
EC-PX600 | EC-PX700 | |
発売日 | 2014年9月18日 | 2015年10月22日 |
吸込仕事率 | 200〜約45W | 210〜約40W |
サイクロン部名称 | 2段階遠心分離 | パラレルフロー |
プレフィルター | × | 〇 |
まず、"2段階遠心分離" と "パラレルフロー" の違いですが、基本的に同一品です。前者は、あまりに一般名詞的だったのと、愛嬌が足りないので、カッコ良くカタカナにしたのだろうと思えます。
名前以外では、サイクロンの形状は(ほぼ)同じでも、その外観に違いがあり、旧 "2段階遠心分離" では、
このように、8個の小サイクロンが1個1個別々に成形されています。
しかし、実はこれだとそれらの表面積が大きくなりすぎて、静電気で汚れが付きやすく、また、目立ちやすかったのです。
その為、"パラレルフロー" では、全部を一体にして、その中に8個の穴を開ける形状に変更しています。
また、"プレフィルター" とは、この機種の場合、メインフィルターの上に敷くスポンジ状のフィルターの事です。
特には大きめのホコリが捕捉の対象となりますが、これによりメインフィルターにまで達するホコリを減らすことが出来ます。
これに関しては、別売品(1枚300円)があるのでそれを買えば、旧型にも装着は可能のはずです。
価格の通りに、あってもなくてもそれ程変わりはないとは思いますが。
シャープ製2段階遠心分離サイクロン 上・下位機種との比較
EC-LX700 | EC-PX700 | EC-FX60T | |
ヘッド名 | パワフル一毛打 尽 自走ヘッド | モーター駆動 パワーヘッド | タービンヘッド |
ヘッド自走力 | 中 | 弱 | × |
ヘッド洗浄 | 〇 | × | |
吸込仕事率 | 210〜約40W | 200〜約45W | |
フィルター | ULPAフィルター | HEPAフィルター級 | |
運転音 | 65〜約61dB | 66〜約61dB | |
エコモード | 〇 | × | |
ヘッド+延伸管 +ホース重量 | 1.6kg | 1.4kg | 1.3kg |
付属品 | 2段伸縮 すき間ノズル | すき間ノズル | |
スタンド収納 時の高さ | 890mm | 900mm |
この上位機種との主な違いは、ヘッドとフィルター性能です。
ヘッドは、植え込まれたブラシが廉価的なゴムブレードを排して全て毛ブラシとなっており、自走力も強化されています。
また、その回転ブラシのモーターを、ヘッド本体側に残してヘッドを分離することで、主に汚れる部分の丸洗いが可能となっています。
フィルターに関しては、ULPAフィルターなので、不要な程の高性能さです。
下位機種は、ヘッドがタービン(風力)式にダウングレードされているので、その分低性能です。
しかし、それに加えてタービン式は本来の吸引口とは少し違う位置から吸気をして(この「EC-FX60T」の場合は両サイド)回転ブラシを回しますので、その分吸引口部でのそれも弱くなります。
その為、この機種のように吸込仕事率が200Wしかない掃除機には、そもそもあまり向いていません。
もっとも、タービン式自体、一般的に絨毯用としては非力で、フローリング向きだとされていますので、あくまでそのつもりで選ぶのが良いと言えるでしょう。
こちらにはエコモードもありませんが、殆どフローリングのみで使うのであれば、それも特に必要ありません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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前年度型
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関連ページ:
・EC-LX700(上位機種)
・EC-FX60T(下位機種)
・EC-PX600(前年度型)
関連サイト: