「CV-PC500」は、日立から2015年9月中旬に発売となる、新型(モデルチェンジ)の紙パック式掃除機です。
このシリーズ名は "かるパック" で、一応軽量をコンセプトとした日立製紙パック式上位シリーズの1機種となります。しかし、今回のモデルチェンジにより、当機に限っては本体重量・2.3kgの、例外的な小型機と化しています。
また、この機種は排気の綺麗さにも特徴があり、0.3μメートル以上のチリの捕集率は99.999%と、家庭用掃除機としてのトップクラスとなっています。
しかし、それらの反面、吸引力を表す吸込仕事率は360Wと低水準に止まっており、その分清掃力では不利にならざるを得ないはずです。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
この「CV-PC500」のヘッドは、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれる日立製の最高性能ヘッドです。
これは、日本製の大抵の他メーカー製の最上級ヘッドと同様に、フローリングの菌までその内蔵回転ブラシで拭き取る性能があるとされています。
また、ヘッド幅が30cmと例外的な広さを誇り、一度に広い面積を掃除できるよう作ってありますが、カーボン素材を用いることと、余分なスペースをなくすことでの軽量設計となっています。
以前のモデルでは、ヘッドを手前に引く際には、どんな掃除機にも吸込口後方に大抵付いている起毛部分(※これは、吸い逃したゴミ、及び回転ブラシが後方に弾いたゴミを逃さないようにする為の物)が邪魔をし、ゴミを吸い込めないことがあるそうですが、このヘッドではそれを解決する為に、起毛部分がヘッドを引く際にのみ回転する日立製だけとなるローラー式となっています。
2015年度からはそれに加え、ヘッド内に "ワイドプレート" と "サンクションキーパー" という部品でもう一つ(横長の)小さなヘッドがあるような状態とすることで、床面に対する吸引力を高めています。
これにより、この2015年度型の "スマートヘッド" は、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれることとなりました。
また、このヘッドは付け根の可動部が柔軟に動く為、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等の狭い場所に押し込めたり(「クルッとヘッド」)、ヘッドと延伸管をほぼ水平にまで出来ることで(「ペタリンコ構造」)、高さ8cm以上の家具の下等のすき間を、掃除しやすく出来ています。
▼ 吸込仕事率 (2)
この機種の吸込仕事率は360W〜約50Wです。
紙パック式の通常の下限は500Wで、この前年度型もそうでしたので、これはその3分の2強という低水準なものとなっています。
▼ 清掃力 (3.5)
ヘッド性能は高いですが、吸込仕事率の低さがやはりネックとなります。
そもそも、横幅30cmもの "スマートヘッド" は、この小さな機種には大きすぎるはずです。
▼ 吸引力持続 (0)
この「CV-PC500」には、吸引力持続の為の仕組みは存在しません。
▼ 紙パック+フィルター性能 (5)
この「CV-PC500」のフィルターは、超高性能で有名なULPAフィルター相当ですので、性能は国内外での業界最高レベルです。0.3μm以上のホコリの約99.999%を捕塵可能だとされています。
(※ULPAフィルター[ULPA規格のフィルター]と呼ばれる為には、フィルターの単独性能として、0.15μm以上のホコリの99.9995%以上の集塵率が必要です。しかし、日立製の場合には、ドイツ・SLG社によって、本来の基準より大きなサイズのゴミを用いての、フィルター単独ではなく実機を用いた計測が行われている為、控えめな数値が出ているようです)
また、アレル物質の活動を抑制する "アレルオフフィルター" も装着されています。しかし、このフィルターは取り外せる訳ではないですし、また、後方には前述のULPAフィルターが位置しています。なので、アレルギー性物質が漏れ出ることは考えにくく、アレル対策の意味があるとはとても思えません。
日立製紙パック式の最上位機種であるこの「CV-PC500」の系統の製品には、代々専用紙パックとして日立製最上位紙パック「GP-2000FS」が指定されています。
これは海外メーカーをも含めて全メーカー中で断トツの価格を誇る超高級品ですが、本体内蔵の超高性能ULPA級フィルターを詰らせたくなければ、必ずこれを使用する必要があります。
▼ 標準紙パックの容量 (2)
この新ボディの "かるパック" では、紙パックの容量は1.3Lですので、通常の87%程度となっています。相当な小型機なので、まあこんなものでしょう。
ただし、以下に見るようにこの1枚の価格は非常に高いので、そう考えると少々頭が痛いです。
▼ 標準紙パック価格 (1)
この機種に指定されている紙パック「GP-2000FS」は、定価・税別で1枚約667円もします。
その為、その価格が気にならないのであれば問題ないにせよ、気軽に買える掃除機ではないはずです。
しかし、紙パック式で排気性能が確実に高い日本メーカー製機種はこれしかありません。なので、アレルギーがある等してこういった製品が必要な方には、かなりありがたい存在だと言えるはずです。
あまり売れないと、販売がなくなる可能性もない訳ではないでしょうから、売れるといいな、と思います。
▼ 本体重量 (5)
この機種の本体重量は2.3kgなので、紙パック式としては日本では業界第2位の軽さということになります。
前年度までは、ヘッドや延伸管部に使用されていた軽量・カーボン素材が、今年度からは本体にも採用されています。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (2)
それらの重量は1.6kgですので、全体としては若干重めという程度ですが、モーター式回転ブラシの機種としては普通程度です。
ヘッドの回転ブラシの軸部分と、延伸管とに軽量カーボン素材を用いると共に(「カーボンライト」)、従来品より細くて軽く、表面が滑りやすくて取り回しの良い "スマートホース" を用いることで軽量化がなされたというのが、この機種のウリの一つとなっていますが、何故か軽くはありません(汗)。
しかも、実は日立製は、手元ブラシ、もしくは延伸管先端ブラシとして使う "クルッとブラシ" が後付け式となっており、これを取り付けるともう100g程度重くなります。
▼ 運転音(最大値) (4)
この「CV-PC500」の運転音は、57〜約51dBですので割合静かで、紙パック式の静音型がない現在では、実はトップの数値ということになります。
これは、業界最軽量のパナソニック製「MC-JP500G」よりは300g重いですが、その分静かだと思えばその程度は気にならないでしょう。
▼ エコモード (3)
この「CV-PC500」のエコモード(自動パワー制御)は、"床面検知" と、恐らくはその仕組みを応用した、ヘッドの操作速度等を検知する "操作力検知"、そしてヘッドを止めていると自動でパワーダウン⇒停止へと至る "アイドリング&ストップ" から成ります。
"床面検知" と "操作力検知" を用いて6分間フローリングを掃除した場合、「強モード」のみで同等の条件下を掃除した場合と比べて、最大約75%の省エネになるとされています。しかし、それは要するに、「強」と「中」が殆ど使用されず、ほぼ「弱」のみで運転された場合との比較を表しているはずです。
メーカーサイトには、エコモードと「強」で掃除した場合とを比べて、"ごみ取れ性能は同等です" とありますが、差は勿論あるはずです。
▼ 消費電力 (4)
この機種の消費電力は840〜約180Wですので、"強" で使用時には平均より16%消費電力は低いです。なので、一応は省エネではあります。
しかし、"強" モードで使用時にも、吸込仕事率は従来500Wあったものが360Wしかありませんので、28%減ということとなり、パワーが低いだけではなく効率も悪くなっています。
▼ 手元グリップ形状 (4)
この機種の延伸管最上部の手元グリップは、輪状となった上位バージョンで、日立では "かるワザグリップ" と命名されています。
これはそのように輪になった物の方が手前に引き易く、掃除を楽に進めることが可能です。
ただ、この日立製は、これを握った際に電源やパワー切替のボタンが親指から遠くて押しにくいので、若干良くないと思います。
▼ 付属ブラシ類 (3.5)
付属ブラシ類は、通常のすき間ノズル("すき間用吸口")と、延伸管先端部か手元グリップ部のどちらかに接続して使うブラシ、"クルッとブラシ" 、そして高所・狭所用ノズルの "ワイド曲が〜るロング吸口" となります。
日立製の高額ヘッドは、ヘッド付根の関節が横に90度曲がることで、比較的狭い場所も掃除出来ます。なので、延伸管先端部はそちらに任せて、"クルッとブラシ" に関しては、手元グリップ部に付けておくのが、普通なのではないかと思います。
また、すき間ノズルについてですが、別売の "すき間用吸口ホルダー" なしでは、本体・延伸管に取り付けて保管することが出来ないはずです。勿論、そのようなことはどちらでも構わなければ、問題はありません。
▼ 特記項目 "サッとズームパイプ" (4)
この「CV-PC500」を含む、日立製の中程度以上の機種には、"サッとズームパイプ" という、足でヘッドを抑えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能があります。
これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっています。
▼ 価格 (2)
この機種は、従来モデルの傾向からすれば、最安時には30,000円程度となるはずです。
しかし、これは今回のモデルチェンジで以前とは全くの別物となりましたので、実際に時間が経ってみないと何とも言えません。
ただ、無理な小型化で幾らか高くなっている可能性が高いと思います。
▼ 総合評価 (3.13)
ゴミ捨てが清潔な紙パック式で、業界最高レベルの排気性能を持つ日本メーカー製の機種はこれしかありませんので、そういう製品が必要な方には、この「CV-PC500」しかありません。
しかし、小型化の反面、吸込仕事率は元々紙パック式としては最低限であったものが従来比約7割に止まることとなり、肝心の清掃力には疑問符が付きます。
もっとも、一般的にフローリングや畳上であれば、吸引力は「強」ではなく、「中」や「弱」でも一応OKだとされています。なので、それらの床で使用するのであれば、問題は生じないかもしれません。
しかし、絨毯上使用するのであれば、やはりスウェーデン・エレクトロラックス社の高排気性能機種「エルゴスリー」の方が良いでしょう。
欧米製は、基本的に室内も土足ですので、そういった性能が重視されています。逆に日本製は、使い勝手が優先されており、米粒等の固形物や壁際を無理なく吸えたり、薄いラグ等に吸いつきにくくなっている代わりに、床を吸う力が弱く出来ています。
当「CV-PC500」と、前年度型「CV-PA300」との違い
CV-PA300 | CV-PC500 | |
発売日 | 2014年7月19日 | 2015年9月中旬 |
ヘッド | 4方向吸引 スマートヘッド | 4方向+ジェット吸引 スマートヘッド |
吸込仕事率 | 500〜約80W | 360〜約50W |
消費電力 | 1,000〜約200W | 840〜約180W |
紙パック 目詰まり対策 | 紙パック振動機構 パワー長持ち流路 | ― ― ― |
本体重量 | 3.7kg | 2.3kg |
ヘッド+延伸管 +ホース部重量 | 1.5kg | 1.6kg |
運転音 | 55〜約50dB | 57〜約51dB |
排気方法 | 分散上方排気 | 上方排気 |
前述の通り、新型は超小型機です。重量は従来比何と約62%に止まります。
"紙パックの目詰まり対策" については、中位機種では以前は付いていたそれらが省略されて来ていますので、あった方が良いにしても、あまり違いはないのかもしれません。
また、ボディカラーにはブルー系が追加されて計3色となっていますが、何と延伸管主要部と、ヘッド上面のカバーもそれに合わせた同一色に塗られています。
これは見たことがなかったので、見事だと思いますが、その分価格は高くなっていそうです(汗)。
日立・かるパック 下位機種との比較
CV-PC500 | CV-PC30 | |
吸込仕事率 | 360W〜約50W | 680W〜約110W |
消費電力 | 840W〜約180W | 1,190W〜約250W |
運転音 | 57dB〜約51dB | 65dB〜約59dB |
捕塵率 (0.3μm以上) | 99.999% (ULPAフィルター相当) | 99% (HEPAフィルター相当) |
紙パック 目詰まり対策 | 紙パック振動機構 パワー長持ち流路 | ― ― ― |
標準紙パック | GP-2000FS | GP-130FS |
本体/全体重量 | 2.3/3.9kg | 3.7/5.4kg |
スマートホース (小径&軽量ホース) | 〇 | × |
ワイド曲が〜る ロング吸口 | 〇 | × |
一応の下位機種「CV-PC30」は、名前は同じ "かるパック" ですが、現在の基準ではやや大型の機種で、パワーは何と業界最高です。
新型ヘッド "ジェット吸引スマートヘッド" も、そちらでこそ本来の力を発揮すると言えるでしょう。
また、排気性能はこちらの「CV-PC500」程ではないにせよ、日本メーカー製の紙パック式掃除機としては2番目の高さです。
その上で、本体価格にしても、紙パック代にしても、こちら程高くはないので、その面で欲しい方もいらっしゃるかもしれません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・CV-PC500 かるパック | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:ジェット吸引スマートヘッド(自走式) ・目詰まり対策:― ― ― ・吸込仕事率:360〜約50W[エコ自動モード有] ・本体重量:2.3kg/ 全体重量:3.9kg ・運転音:57〜約51dB ・排気方法:上方排気 ・持ち手(本体):固定式×1 ・色:レッド(R)、シャンパン(N)、ブルー(A) ・超高性能なULPAフィルター(と同等)仕様 ・専用紙パック:GP-2000FS(1枚付属) ・ワイド曲が〜るロング吸口付(高所用ノズル) | |
前年度型
・CV-PA300 かるパック | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:4方向スマートヘッド(自走式) ・目詰まり対策:コード連動式紙パック振動機構(&パワー長持ち流路) ・吸込仕事率:500〜約80W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.7kg/ 全体重量:5.2kg ・運転音:55〜約50dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×1、折り畳み×1 ・すき間ノズル収納:なし ・色:ディープレッド(R)、ディープシャンパン(N) ・超高性能なULPAフィルター(と同等)仕様 ・ワイド曲が〜るロング吸口付(高所用ノズル) | |
関連ページ:
・CV-PC30 かるパック(下位機種)
・CV-PA300 かるパック(前年度型)
・エルゴスリー(エレクトロラックス社・高排気性能機種)
関連サイト:
・CV-PC500(R)(N)(A) かるパック|日立公式サイト