「VC-S500」は、2015年9月1日に東芝から発売となる新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "トルネオV(ヴイ)" と呼ばれる、同社製本格サイクロンシリーズの1機種で、これはその中でも、その廉価版的な位置付けとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (4)
この「VC-S500」のヘッドは、モーター自走式の "カーボンヘッド" と呼ばれています。
"自走式" とは、ヘッド内に仕込まれた回転ブラシの回転力が強く、その力でヘッドを若干前進させることが出来ることを意味しています。
これにより、使用者は軽い力での操作が可能となっています(引く時には通常より力が必要ですが、押す時より引く時の方が楽なのと、引く時にはヘッド後部を僅かに浮かせる事が出来るため、総合的には使いやすいです)。
この機能は、国内メーカー各社の高額機種には普通にある機能です。
そして、"カーボン" とは、軽量の炭素素材を意味しており、これを用いることでヘッドの軽量化がなされています。
つまり、この名前は、一応このヘッドが使いやすいものであることを表すものとなっています。
その他でも、ヘッドを横に90度近くに曲げて縦にすることで、家具の間等、ヘッドを外さずに狭い場所に押し込めたり、ヘッドと延伸管を水平にまで出来ることで、家具の下等の約6.5cm以上の高さのすき間を掃除することが可能です。
また、回転ブラシに毛等絡んだ場合には、ヘッドを裏返すことなく、ヘッド上のカバーを取り外すことで、お手入れをすることが可能です。
この仕組みは東芝独自のもので、現在はこの "カーボンヘッド" 及びその上位版の "イオンファイバーヘッド" にしか採用されていません。
▼ 吸込仕事率 (1)
この型番の吸込仕事率は200Wです。この数値は、遠心分離力がウリとなる本格派のサイクロン掃除機としては標準的ですが、国内有名メーカー製の掃除機全体を見ると、かなりの低さということになります。
▼ 清掃力 (3)
海外の掃除機メーカーでは、200W前後の吸込仕事率が標準ですので、この機種の200Wが一概に問題だとは言えません。
しかし、海外製は、ヘッドと床のすき間を最低限にして床に吸引力が集中する設計になっているのに対し、この東芝製のヘッドでは、そうはなっていません。これにおいても他の日本メーカーと同様に、ヘッド前の米粒等固形物を吸いやすいよう、床とのすき間を多めに開けた設計となっているので、原理的に無理があると思えます。
もっとも、ヘッドには回転ブラシが付いているので、元々「弱」運転でも良いと言われるフローリング上では特に問題ないはずですし、絨毯上でも、モーター式の回転ブラシが絨毯表面のゴミは掻き取るはずですので、その面では問題はないはずです。つまり、絨毯内部に入り込んだチリには弱いだろう、という話となっています。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
この系統のサイクロン部は、"バーティカルトルネードシステム" と称されており、ダイソンと同じく大きなゴミを遠心分離する大きなサイクロンと、2段目としての小さなゴミを遠心分離する12個の小サイクロンから成っています。
※バーティカルトルネードシステムの解説動画。再生してみて下さい。
遠心分離力は、数を増やしてでも、小径のサイクロンを使用する方が高まるとされており、ダイソンDC63では、上下2層の計24個の小サイクロンを、前作のDC48では計10個を採用しています。この「VC-S500」を含むトルネオVでは、計12個の小サイクロンを採用していますので、その数だけを見れば、遠心分離力はそこそこのはずです。
しかし、ダイソンでは、高性能・高回転の直流モーター "ダイソンデジタルモーターV4" を使用しています。
掃除機に使われる通常の交流モーターが、毎分3万〜ハイパワー型でも4万回転であるのに対し、ダイソンの "V4" は、10万4千回転が可能です。
しかも、ダイソンでは消費電力が1,150Wある、通常の1,000Wより15%も高いモーターを使用しているのに対し、トルネオVシリーズでは、逆に15%低い850Wのモーターを使用しています。
なので、モーターの回転力の差は、およそ3倍に上っているはずです。
ダイソンの2段サイクロン方式(ルートサイクロンテクノロジー)は、特許で守られているので、他メーカーは真似できないでいるはずです。しかし、東芝がダイソンの特許を回避できた要因として、ダイソンでは、複数の小さなサイクロンで分離した微細なゴミを、ダストカップの中心部の空洞を通して落とす構造であるのに対し、東芝ではそのゴミをダストカップの外延部に溜め、下には落とさない構造としていることが挙げられるはずです。
この点は、そこに溜まるゴミを再びサイクロンの渦に巻き込みかねない問題と、その部分のゴミの、ゴミ捨ての際の若干の扱いづらさに繋がっています。
尚、トルネオシリーズのサイクロン部の正式な名称は、外からゴミの回るのが見えるダストカップのサイクロン部は、"デュアルトルネードシステム" 。
トルネオV(+コンパクト)の複数の小サイクロン部は、上述のように "バーティカルトルネードシステム" 。
そして、生産を既に終了したトルネオWの同部分は、"ミクロトルネードシステム" となっています。
どれもカッコ良い名前ではあるものの、自称に過ぎません。
▼ ゴミ圧縮 (3)
この系統のゴミ圧縮は、ゴミの回るのが見える大サイクロン部の下部で、サイクロンの回転の余波でゴミが転がり続けている内に、約5分の1になるとされています。
小サイクロン部の下部に溜まる細かなチリも、サイクロンの渦で下に押しつけられるせいか、再び吸われずにそこに残っている分は、ある程度固まっています。
▼ ゴミの捨てやすさ (2)
この「VC-S500」を含むトルネオシリーズでは、ダストカップは、底が下に開くダイソン方式とは違って普通のカップ型ですので、そっとゴミを捨てることが可能です。
しかも、確かにある程度ゴミが圧縮されて塊となっていますので、捨てる際にもチリが舞いにくいです。
ただし、小サイクロンで遠心分離された細かなチリは、小サイクロンの直下にくっ付いていますので、お手入れブラシかティッシュか何かで、時々掃ってやる必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (3)
この系統のダストボックスの容量は0.4Lとなっています。一応は、平均的な一軒家全体を掃除できるだけの容量となっているはずです。
この部分に関しては、近年流行りのもっと小型のサイクロン掃除機(0.25L)とは違って、真面目であると言えると思います。
▼ フィルター (2)
この「VC-S500」のメインフィルターは、"排気清浄・脱臭フィルター" ですが、東芝製にしては珍しく具体的な集塵率について触れられていません。
また、排気口部のフィルターとして、脱臭力を持つ "ゼオライトフィルター" も装着されています。
実際にどれだけの効果があるかはともかく、脱臭力のあるフィルターが2枚付いていますので、それに関しては基本的に優秀であるはずです。
▼ 本体重量 (3)
トルネオVの本体重量は3.2kgで共通です。現在は小型機だとは言いにくいですが、通常サイズ機扱いされる製品の中では相当軽いです。
とは言え、サイクロン式の本命であるダイソンDC63の2.75sにはかなり負けていますが。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
この型番のそれらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度です。しかし、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドとしては若干軽いです。
前述の通り、カーボン素材で出来ているので軽いというのが、一応ウリともされています。
▼ 運転音(最大値) (2)
この型番の運転音は、64〜約58dBです。これは単に普通のうるさい掃除機といったレベルです。
ただし、消費電力が少ない割には、数値は悪いです。
▼ エコモード (2)
この「VC-S500」のエコモード(自動パワーコントロール)は、
- 床面識別
- 節電アイドリング機能
- 及び、強モードの不使用
の2+1からなっています。
"床面識別" は、回転ブラシにかかる負荷により、絨毯とフローリングとを識別する機能のことです。絨毯と識別した場合には、高い吸引力を選択します。
"節電アイドリング機能" とは、ヘッドを浮かすと1秒でパワーを低減⇒6秒で一時停止⇒その状態を60秒継続で電源OFFとなる機能のことです。
最後の "強モードの不使用" に関してですが、この型番の消費電力は850W(強)〜約300W(弱)なのですが、実はエコモード時には最大消費電力は500Wに制限されます。
この型番には何と「中」モード がないのですが、そのエコモード時の最大吸引時が、事実上の「中」モードに相当するはずです。
この型番のエコモードは、消費電力を最大44%削減するとされていますが、「強」を使用しないだけで、既に最大42%の削減が達成されています。こういった方法をとるのは、他メーカーでは日立の中位機種だけですので、さすがに感心できません。
結局、絨毯上では「強」を使い、フローリングや畳上では、「エコモード」を使って欲しいということなのでしょうか。何とも中途半端です。
また、ヘッドを浮かせると吸引が止まるアイドリングストップ機能も、エコモード時にしか働かないので、必然的に最大吸引時には一切使えない設定となってしまっています。
これらはやはり、よく考えず、作り込んでいないことを意味しているのかもしれません。
▼ 消費電力 (4)
先程も述べたように、トルネオVの消費電力は、850W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを載せて遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。なので、このシリーズの場合消費電力が少ないからと感心することは出来ません。
▼ 手元グリップ形状 (4)
この機種の延伸管最上部の手元グリップは、"新らくわざグリップ" と呼ばれます。
形状としては、輪状となった掃除機用グリップとしての上位バージョンです。
一般的に、これはそのように輪になった物の方が手前に引き易く、掃除を楽に進めることが可能です。
東芝製の同グリップは、一応全てが "人間生活工学認証" なる認証制度の認証を受けています。
ただし、これはそれっぽいことを書いて審査・登録料と共に提出すれば、申請者が責任を負う条件で認められるものです。
▼ 付属ブラシ類 (3)
当「VC-S500」には、手元ブラシと延伸管先端部ブラシ(併せて「2WAYブラシ」)に加えて、通常のすき間ノズルのみが付属しています。
ただし、すき間ノズルを本体に収納する、もしくは延伸管に取り付ける仕組みがないので、非常に残念です。
▼ 価格 (3)
この型番は、前年度型の実績から予想して、発売後1年近く経てば25,000円程度にはなるかもしれません。
▼ 総合評価 (2.88)
この「VC-S500」は、東芝製本格サイクロン掃除機・トルネオVの廉価機種ですが、サイクロン部は同等ですし、ヘッドも一応それなりのものです。
なので、価格次第ではあり、と言いたいところですが、一軒家でなければ同じ本格サイクロンの、シャープ製「EC-PX600」辺りでも良いかもしれません。
当「VC-S500」と、前年度型「VC-S214」との違い
VC-S214 | VC-S500 | |
発売日 | 2014年9月1日 | 2015年8月11日 |
ヘッド | 軽量コンパクト パワーヘッド | カーボンヘッド |
フラボノイド フィルター | 〇 | × |
今年度型は、ヘッドが自走力を持つものにバージョンアップしています。
"軽量コンパクトパワーヘッド" は、主に1万円台後半の掃除機に付けるヘッドでしたので、一応少しマシになっています。もっとも、この価格帯では少なくとも、静電気抑止効果のあるイオン発生機能が付加された "イオンカーボンヘッド" が望ましかったと思いますが。
また、以前は排気口部のフィルターとして、抗菌・ウィルス抑制効果のある "イチョウ葉エキス入りフラボノイドフィルター" も付いていましたが、あまり必要性がないからか今回省略されています。
東芝・トルネオ 上・下位機種との比較
VC-MG600 (トルネオV) | VC-S500 (トルネオV) | VC-C4 (トルネオミニ) | |
サイクロン | 2段式(本格サイクロン) | 1段式(簡易タイプ) | |
ヘッド | イオン ファイバーヘッド | カーボンヘッド | 軽量コンパクト パワーヘッド |
自走式回転ブラシ | 〇 | × | |
マイナスイオン プレート | 〇 | × | |
吸込仕事率 | 200〜約50W | 290〜約20W | |
消費電力 | 850〜約300W | 850〜約120W | |
本体/全体重量 | 3.2/4.7kg | 2.2/3.6kg | |
運転音 | 64dB〜約58dB | 63〜約58dB | |
フィルター | ・排気清浄・脱臭 ・脱臭 | ・高集塵プリーツ ・フラボノイド | |
捕塵率 | 0.3μm以上を 約99.9% | 標準品 (特に言及なし) | 0.5μm以上を 約99% |
ゴミ残しまセンサー | 〇 | × | |
集塵容積 | 0.4L | 0.25L | |
サイクロン部 完全分解 | 〇 | ×(△) | 〇(元々簡易型) |
手元グリップ | らくわざフリーグリップ(最新) | 新らくわざグリップ | |
ダストカップ部 と後輪の間の すき間埋め用部品 | 大 | 小(引っ掛かりにくい 進化型/起毛付) | 別ボディに付き 必要なし |
上位機種「VC-MG600」との主な違いは、ヘッドと、赤外線で吸気内のホコリを見分ける "ゴミ残しまセンサー" ですが、基本的には同型です。
下位機種「VC-C4」は、更に小型の "トルネオミニ" となります。そちらは本格サイクロンではなく、多くのホコリをフィルターで取り除きます。
また、本格的な空気の渦を作らないせいで、これらトルネオVよりも吸込仕事率は高いです。
フィルターに関しては、集塵性能は全く同等ですが、トルネオVでは脱臭力にも力が入っています。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・VC-S500 トルネオV | |
・楽天 ・amazon ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:カーボンヘッド(自走パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/12気筒) ・吸込仕事率:200W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.2kg/ 全体重量:4.7kg ・運転音:64〜約58dB ・排気方法:― ― ― /集塵容積:0.4L ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:シルキーバイオレット(V) | |
前年度型
・VC-S214 トルネオV | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:軽量コンパクトパワーヘッド(非自走パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/12気筒) ・吸込仕事率:200W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.2kg/ 全体重量:4.7kg ・運転音:64dB〜約58dB ・排気方法:― ― ― /集塵容積:0.4L ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:ダークメタリック(H) | |
関連ページ:
・VC-MG600 トルネオV(上位機種)
・VC-C4 トルネオミニ(下位機種)
・VC-S214 トルネオV(前年度型)
関連サイト:
・VC-S500(V) サイクロンクリーナー|東芝公式サイト
・サイクロン部も分解して水洗いできるサイクロン式クリーナーの発売について|東芝プレスリリース