「TC-ZXE20P」は三菱から2015年9月1日に発売となった、新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名として "風神" とも呼ばれおり、これはその2種類ある内の下位機種ということになります。
その特徴としては、一応サイクロンでの遠心分離力が強化されており、ダストボックスからフィルターを排したことがウリとなっています。
しかし、本体には高性能フィルターが2枚装備されていますし、ダイソンや、それを真似た東芝・シャープ・パナソニックのように、2段式サイクロンで、2段目で高い遠心分離力を得る為に、複数の小さなサイクロンに分けた構造になっている訳ではありません。なので、他社の本格サイクロンと比べて、仕組みとしてかなり劣っています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (4)
この「TC-ZXE20P」のヘッドは、三菱製掃除機の上位ヘッド "自走式パワーブラシ" です。
まず、"パワーブラシ" というのは、ヘッド内にモーター式の回転ブラシが内蔵されていることを表しています。特に絨毯を掃除する際には、その回転ブラシが絨毯を掻き分け、ゴミを掻き出すので、高い清掃力を誇ります。
"自走式" とは、その回転ブラシの回転がヘッドを前進させる程のパワーを持つので、ヘッドが楽に操作出来るものであることを表しています。
他社の上位ヘッドだと回転ブラシの回転で、フローリングの拭き掃除効果があるとされていますが、三菱製のこのヘッドの場合には、吸引口後部の細長い起毛部分によって、拭き掃除効果があるとされています。なので、これは若干頼りないです。
また、代々三菱製自走式ヘッドの回転ブラシには、かなり硬いブラシが採用されています。そして、このヘッドは軽量掃除機ビケイ「TC-FXE8P」のものと基本同一のはずですので、そうなるとやはり硬過ぎです。
なので、床のゴミを掻き取る力は強いはずですが、フローリングや絨毯、畳等の床に負担をかけたくない方には、向いていません(※モーター式回転ブラシの中でも中・上位の機種であれば、どれでもそういう傾向を持つと思いますが、硬めの回転ブラシは、弱めのヤスリのように、床をほんの僅かづつ削る可能性があります)。
正直、少なくとも私の家では、あまり使いたくない物です。
▼ 吸込仕事率 (1)
この「TC-ZXE20P」の吸込仕事率の最大値は200Wですので、かなり低いです。
実のところ、サイクロンによるゴミの遠心分離力を強化したタイプはこの程度が普通で、例えば東芝・トルネオVだと200W、ダイソンDC63だと170/160Wです。
しかし、三菱・風神は、それらに比べると原理的に遠心分離力が不足しているのに、吸込仕事率はそれらと全く同等です。
なので、事実上不当に低いと思います。
▼ 清掃力 (4)
ヘッド性能は高いですが、吸込仕事率は低いので、一応こういった形となります。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (3.5)
この「TC-ZXE20P」を含む "風神サイクロン" は、サイクロンの渦にパワーを割くことで遠心分離力を強化したタイプなので、日立製には有利に立ちます。しかし、他社製上級機で現在標準の2段サイクロンには原理的に敵いません。
というより、この1段1個しかサイクロンがないタイプは、ゴミの完全遠心分離を目指す本格派ではあり得ません。
それでも、この機種の清掃・洗浄が必要なフィルターは、小さくてしかも円形ではなく四角形なので、手間はそれ程かかるとは思えず、気にせず使えば、良いサイクロンだと思って使える範囲のものであるかもしれません。
あと、ダイソン・パナソニックとは違い、サイクロン部の水洗いが可能となっていることも、一応の特徴となっています。しかし、この機種のサイクロン部はかなり単純な構造なので、水洗い出来ない理由こそあり得ないと思えます。
▼ ゴミ圧縮 (1)
風神サイクロン型には、特別なゴミ圧縮効果はありません。回っている内にゴミ同士が集まって、自然に圧縮される程度です。
ただし、ゴミ捨ては、ダイソンのように底が豪快にパカッと開くタイプではなく、カップ型ですので、ゴミを舞わせないようにそっと捨てることも可能です。
あと、風神サイクロンにおいては、ゴミは遠心力でサイクロン室から外部屋へ弾き出されて溜まりますので、溜まったゴミの内部を吸気が通る率が低く、ゴミの臭いを拾いにくい、つまり排気が臭いにくいとも一応言われています。
まともに遠心分離をするサイクロン掃除機であれば、どれでもそういう傾向はあるものと思いますが。
▼ ダストボックスの容量 (5)
風神サイクロンのダストボックスの容量は、0.7Lもありますので例外的に多いです。特別なゴミ圧縮効果がないという悪条件もありますが、これだけ入ればさすがに問題はないでしょう。
▼ フィルター (5)
この「TC-ZXE20P」では、汚れたら洗浄が必要なモーター前フィルターに高性能なHEPAフィルター、そしてモーター後フィルターに超高性能なULPAフィルターを用いています。
風神の排気性能はドイツの試験機関SLGによって測定がなされており、0.3μメートル以上のチリの99.999%が捕塵可能だという試験結果が出ています。
これは、日立製のサイクロン式・紙パック式の両最高性能機種と並ぶ、家庭用掃除機としての最高レベルの排気性能ということになります。
もっとも、サイクロン式では、排気性能がどれだけ完璧でも、ゴミ捨て時には不要にホコリと接しなければならないわけですが。
▼ 本体重量 (4)
「TC-ZXE20P」の重量は、2.9kgですので小型機相当です。
ただし、通常このレベルの小型機は、ゴミの集塵容積が0.25Lしかなく、あまり一軒家向けではありません。
なので、集塵容積0.7Lを誇るこの機が2.9kgというのは、特にはペットの抜け毛にお困りの方等で、軽い掃除機をお求めの方には、それなりに価値があるということになります。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.5kgですので、モーター式回転ブラシの機種としては若干軽めという程度です。
▼ 運転音(最大値) (2)
「TC-ZXE20P」の運転音は、64dB〜約62dBですので、普通にうるさめの掃除機です。
風神は遠心分離力維持のために、弱モードでも強く吸っているようで(※サイクロン掃除機としては健全な話です)、弱モード時にも音は割と大きいです。
▼ エコモード (1.5)
この「TC-ZXE20P」のエコモードは、手元グリップ部に "加速度センサー" を埋め込み、使用者がヘッドを早く動かすとそれを察知して吸引力を強くし、逆に動きがないと掃除の中断と判断して吸引力を弱め、その状態が30秒続くと電源をオフにします。その後者は、"スマートSTOP" と呼ばれています。
加速度センサーによる、ヘッド動きで吸引力を決定するのは三菱独自の方法ですが、ヘッドが浮くと吸引が止まる機能であれば、他社製にも普通にあります。
また、日立とシャープでは回転ブラシにかかる負荷から、ヘッドの動きを察知して、吸引力を上下させもしています。
他社製だと、絨毯とフローリングの区別や、高額機種では赤外線センサーによる吸気内のゴミの有無の判断によって吸引力を上下させることもありますので、三菱製はいささか頼りないです。
▼ 消費電力 (3)
この機種の消費電力は、800〜約600Wです。
最大値の800Wは、標準値の80%に過ぎず、確かに省エネにはなります。しかし、サイクロン掃除機としては低すぎで、遠心分離を重視しているとは思えない数値です。
逆に、最低値の600Wは相当高く、これは遠心分離力を維持する為であるはずです。なので、サイクロン掃除機としては好ましいです。しかし、根本的には800Wでも低すぎですので、600Wでは当然もっと低すぎです。
ここから見るに、これは事実上、「強」と「中」モードのみの機種だと言えるのかもしれません。
そしてこれは、サイクロン掃除機としては、王道のあり方なのかもしれません。
▼ 手元グリップ形状 (4.5)
この機種の延伸管最上部の手元グリップは、輪状の上位バージョンです。
これはそのように輪になった物の方が手前に引き易く、掃除を楽に進めることが可能です
通常、この部位には名前等ありませんが、この三菱製の場合には何と "フィジ軽(カル)グリップ" と名付けられており、人間工学に基づいて設計されているため、従前品より持ちやすいということになっています。
また、グリップ部の下の延伸管部分をサブグリップと位置付けて持ちやすいように設計されているため、高所を掃除する際等には、そちらを持った方が掃除がしやすいとされています。
▼ 付属ブラシ類 (3)
「TC-ZXE20P」には、手元ブラシと、延伸管先端部ブラシが付属し、勿論普通のすき間ノズル(三菱での名称は「サッシノズル」)も付属します。
▼ 価格 (2)
この機種は、モデル末期の最安時には、3万円を切る価格で買うことが出来るかもしれません。
▼ 総合評価 (3.10)
まず、この三菱風神「TC-ZXE20P」は、一応高遠心分離力をウリにするサイクロン掃除機ですが、あくまで "ギリギリ本格サイクロン" でしかありません。
そうであれば、吸込仕事率ももう少し高くて良いはずですが、そうでもありません。
エコモードも、他の日本製高額機種と比べて、床面検知やゴミセンサー機能がありませんので、とても残念です。
しかし、良いところは、フィルター性能が文句なしに高いことです。もっとも、どうしても清潔さが必要な方は、紙パック式にした方が良いと思いますが。
当「TC-ZXE20P」と前年度型「TC-ZXD20P」との違い
TC-ZXD20P | TC-ZXE20P | |
発売日 | 2014年6月21日 | 2015年9月1日 |
吸込仕事率 | 230〜約130W | 200〜約120W |
消費電力 | 850〜約600W | 800〜約600W |
運転音 | 64〜約61dB | 64〜約62dB |
本体重量 | 3.7kg | 2.9kg |
集塵容積 | 0.9L | 0.7L |
サイズ (幅×奥行×高さ) | 216×357×283mm | 222×333×270mm |
フィジ軽(カル)グリップ | × | 〇 |
加速度センサー | × | 〇 |
大型コード リールボタン | 〇 | × |
昨年度型との大きな違いは、やはり小型・軽量化です。
一旦本体内部を通していた吸気の風路を、ホース部とダストカップ部を直接接続するシンプルな形態に変更し、また、モーターフレームをアルミ化(および低パワー化)したことで、800gもの軽量化を果たしています。
"大型コードリールボタン" とは、足踏み用の電源コード巻き取りボタンの事を指しています。これは便利であるはずで、全ての掃除機に付けてもらいたいところですが、小型・軽量化に伴ってか、今回廃止となっています。
三菱製サイクロン 上・下位機種との比較
TC-ZXE30P | TC-ZXE20P | TC-EXE10P | |
ヘッド | ワイドクリーン 自走式パワーブラシ ・毛絡み除去 ・拭き(回転)ブラシ ・ブラシ抗菌加工 ・抗アレル植毛 | 自走式パワーブラシ (※軽くてスマート) ― ― ― ― | ワイドクリーン 自走式パワーブラシ ・毛絡み除去 ・拭き(回転)ブラシ ・ブラシ抗菌加工 ・抗アレル植毛 |
吸込仕事率 | 200〜約120W | 320〜約80W | |
サイクロン部 | 高遠心分離 | フィルター部 ティッシュ装着 | |
運転音 | 64〜約62dB | 64〜約59dB | |
本体重量 | 2.9kg | 2.4kg | |
ヘッド+延伸管 +ホース部重量 | 1.6kg | 1.5kg | |
フィルター | ULPA×1+HEPA×1 | HEPA×1 | |
自動パワー切替 | 〇(加速度センサー) | × | |
手元グリップ | フィジ軽(カル)グリップ | 旧かるスマグリップ | |
ブロア機能 | 〇 | × | |
カロナビ | 〇 | × | |
ゴミ量確認 LEDランプ | 〇 | × | |
付属品 | 2WAYロングノズル ふとんブラシ エアブローノズル | すき間ノズル | 2WAYロングノズル |
上位の「TC-ZXE30P」は、装備を充実させた三菱製サイクロンの最上位機種となります。ブロア機能があるのが最大の特徴となっています。
下位の「TC-EXE10P」は、名前こそサイクロン式であるものの、実態としては単なるフィルター式の製品です。なので、基本的には購入の選択肢に入りません。 "毛絡み除去機能" がどうしても欲しければ、話は少し別となりますが・・・。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・TC-ZXE20P 風神 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:(かるスマ)自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:(高遠心分離力サイクロン) ・吸込仕事率:200〜約120W[節電モード有] ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.4kg ・運転音:64〜約62dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ブラシ収納:延伸管横 ・色:ビオラレッド(R) ・HEPA×1+ULPAフィルター×1仕様 ・ヘッド上空のチリも吸引 | |
前年度型
・TC-ZXD20P 風神 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:(高遠心分離力サイクロン) ・吸込仕事率:230〜約130W ・エコモード:掃除中断察知のみ ・本体重量:3.7kg/ 全体重量:5.1kg ・運転音:65〜約62dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ブラシ収納:延伸管横 ・色:シャインバイオレット(V) ・HEPA×1+ULPAフィルター×1仕様 ・ヘッド上空のチリも吸引 | |
関連ページ:
・TC-ZXE30P 風神(上位機種)
・TC-EXE10P Be-K(ビケイ)(下位機種)
・TC-ZXD20P 風神(前年度型)
関連サイト:
・三菱サイクロン式掃除機「風神」TC-ZXEシリーズ新商品発売のお知らせ|公式サイト