「EC-VX700」は、2015年8月下旬にシャープから発売となった、新型のサイクロン掃除機です。
シリーズ名としては、今年度新登場で "パラレルフローサイクロン" と呼ばれており、これはその上位機種・シャープ製サイクロンの最上位機種ということになります。
シャープは、昨年度から遠心分離力の強い本格サイクロンのシリーズを発売していますが、1年遅れて最上位機種も本格機の仲間入り、ということになります。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
この「EC-VX700」のヘッドは、"パワフル一毛打尽 自走ヘッド" です。
回転ブラシの回転力による自走は上位ヘッドでは当然ですが、"パワフル一毛打尽" は、固いブラシを植え込むことで、ペットの毛に強いのだとアピールしています。
フローリング上の乾拭き効果については触れられていませんが、回転ブラシに植え込まれたブラシは3種類ですので、シャープ製最上位ヘッドとして、その能力はあるはずです。
▼ 吸込仕事率 (1)
この機種の吸込仕事率は、210W〜約15Wです。
このシリーズは、サイクロンによるゴミの遠心分離力が高い本格サイクロンなのですが、このタイプの平均的な吸込仕事率の最大値はやはり200W程度です。
なので、このタイプとしては、単に平均的ということになります。
▼ 清掃力 (4)
新開発のヘッドはさすがに高性能であるはずですが、吸込仕事率は日本製としては非常に低いので・・・。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4.5)
このシリーズのサイクロン部は、"パラレルフローサイクロン(平行して空気が流れるサイクロン)" と呼ばれています。
しかし、これはシャープで昨年度から発売されている "2段階遠心分離サイクロン" をカッコ良く横文字で言い換えたものに過ぎません。
実のところ、この方式は、ダイソンと同じく2段階方式で、2段階目に8個の小サイクロンを設置した本格サイクロンではあります。
ただし、遠心分離力の強さに基本比例する小サイクロンの数は、東芝トルネオVの12個、そしてダイソンDC63の24個(DC48は10個)に比べると少ないのが気になります。しかし、ダイソンはともかく、東芝に劣るかは何とも言えません。少なくとも、似たようなレベルではあるはずです。
ダイソンに関しては、1分間に10万1千回転が可能な高性能直流モーターを吸引モーターとして使用しており、そもそも3〜4万回転の交流モーターで、しかも消費電力を850Wと通常より低く抑えている東芝とシャープでは、その3分の1程度の回転数しかないはずです。
なので、ダイソン製とは性能が全く違います。
▼ ゴミ圧縮 (1)
シャープ製サイクロンでは、この「EC-VX700」でのみ、新開発の "強力ごみプレス" という機能が存在するとされています。
しかし、この機能は実は運転中にゴミを圧縮するものではなく、何と珍しくもゴミを捨てる際に圧縮する機能となっています。
運転中に関しては、シャープ製では特にゴミ圧縮効果は謳われていません。
ただし、ダストボックス内でゴミが回っている間に、ゴミ同士が自然とくっついてある程度固まる効果ならありますし、また、ゴミが多く溜まり、ダストボックスのどこかで引っかかると、そこでゴミは圧縮されることになります。
▼ ゴミの捨てやすさ (2.5)
この "パラレルフローサイクロン" は、フィルター掃除の必要の少ない高遠心分離タイプで、ダストカップは底がワンタッチで下に開くタイプです。
そこまでなら、ダイソンと同じです。しかし、この「EC-VX700」には、まずダストカップを掃除機本体から取り外すと、ストッパーが外れてバネ仕掛けでその内部のゴミを上から押しつぶす "強力ごみプレス" があります。
また、静電気抑制作用のあるプラズマクラスターイオンをダストカップ中心部に放出する機能もありますので、他の類似機種より、比較的綺麗にゴミを捨てることが可能となっています。
ただし、プラズマクラスターイオンは、ダストボックスの外周部にある細かなチリが落ちて溜まるスペースには届きません。その為、細かなチリは透明なダストボックスの(内側の)表面に付着してしまい、それを取ろうとすると、水洗いを行うのが現実的な対処法ということになってしまっています。
もっとも、これに関しては、内部が見にくくなるという重大な欠点を生じさせるものの、実は放っておいても問題はありません。
また、ゴミを捨てる際には、やはりそれがボトッと落ちるとホコリが舞うことになります。なので、その際には、下開きの蓋を下から抑えながらゆっくりと開き、しかもゴミ袋等の底にそっと落とす必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (1)
このシリーズのダストボックスの容量は、0.25Lです。サイクロン式の超小型機としてはこれが標準ですが、通常サイズ機の標準・0.4Lの約63%しかなく、あまり一軒家向きとは言えません。
ダイソン以外のサイクロン式の小型機は、元々高齢者家庭や、マンション向けとして無理に作られた物であり、自然な発想として小型化された訳ではありません(※ダイソンのみ、「重い」との評判を覆す為に作った可能性大で、集塵容積もDC63で0.5Lです)。
▼ フィルター (5)
この「EC-VX700」のフィルターは、高性能で有名なULPAフィルターですので、性能は家庭用掃除機として最高レベルです。0.3μm以上のホコリの約99.999%を捕塵可能だとされています。
このフィルターには、掃除機のそれとしては珍しく、何とフッ素加工がなされているということなので、汚れが付きにくく、また落ちやすいはずです。
また、最終フィルターとして、ペット等の臭いに強い、"Ag+アレルディフェンスフィルター" も装着されています。
▼ 本体重量 (3)
この機種の本体重量は3.1kgです。なので、軽めではありますが、現在では一応普通程度の重量の掃除機ということになります。
これと同型ボディの下位機種「EC-LX700」では、2dB分の静音構造+ "強力ごみプレス" +ULPAフィルターがないせいか、本体重量は2.9kgに留まります。
なので、本来は本体が2kg代の製品だと言って良いはずです。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (2)
それらの重量は1.6kgですので、全体としては重めですが、モーター式回転ブラシの機種としては普通程度です。
▼ 運転音(最大値) (2)
この「EC-VX700」の運転音は、63dB〜約49dBです。
酷くはないという程度で、そこそこうるさい普通の掃除機だと言えるはずです。
その最小値の49dBは、かなり静かですが、それはパワー(吸込仕事率)を弱モードの約33%に抑えた "ナイトモード" によるものです。
▼ エコモード (3)
シャープのエコモードはシンプルで、絨毯かフローリングかを見分けてのパワーの変更と、ヘッドを浮かすと運転を停止する "節電アイドリングストップ" からなっています。
時々、「掃除動作に合わせてパワーを自動でコントロール」と表記されていることもありますが、これは床質検知機能が、床面で検知する抵抗の変化から「誤検知」するのでしょう。
▼ 消費電力 (4)
この機種の消費電力は、850W〜約150Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを搭載して遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。
実は、当機より350gも軽いダイソンDC63は、1,150Wモーターですので、サイクロンに対する本気度が足りなのではないか、としか言いようがありません。
▼ 手元グリップ形状 (4)
この機種の延伸管最上部の手元グリップは、輪状となった上位バージョンです。
これはそのように輪になった物の方が手前に引き易く、掃除を楽に進めることが可能です。
▼ 付属ブラシ類 (4)
この「EC-VX700」には、手元ブラシはありますが、延伸管先端部ブラシがありません。
すき間ノズルも、普通の物は付属せず、先端にブラシの付く "2段伸縮(ロング)すき間ノズル" が付属しています。
なので、延伸管の先端にすき間ノズルを付けるという普通の使い方も、出来ない訳ではないですが、長過ぎとなるのであまり向かないでしょう。
その場合、延伸管そのものを取り外して、その代わりに2段伸縮すき間ノズルを付けた方が使いやすいかもしれません。
また、ソファやカーテン用ノズルとして "2WAYベンリヘッド" が付属しています。
これは、ペットの抜け毛等を掻き取る為のゴムブレードとエチケットブラシの2つを切り替えつつ、吸引口に装着して使用するヘッドです。
これは元々は布団用ではありませんでしたが、ソファやカーテンにつかえて布団に使えないと言うことはありませんので、言わば "準布団用ヘッド" ということにもなっています。
▼ 価格 (2)
この機種は、一応新登場機種ではあるものの、その価格はスペック&構造的に見て、従来の "2段階遠心分離サイクロン" に準じるはずです。
恐らく、モデル末期の最安時には3万円程度にはなると思えます。
▼ 総合評価 (3.00)
この「EC-VX700」は、本格派のサイクロン掃除機であるのは良いのですし、性能も全般的に高いですが、特筆すべき部分は特にありません。
一応改めて注意点を書いておくと、小型であるのは良いのですが、ゴミの集塵容積が少ないです。その為、あまり一軒家向きではないと思います。
また、フィルター性能が非常に高いのも良いのですが、サイクロン式であるが故に、ゴミを自分で取り出して捨てなければならないですし、また、集塵容積が少なさ故に、その頻度も比較的多くなります。なので、掃除機の使用者がアレルギー持ちである場合には、あまり意味がありません。
この機種では、一応ペットの毛を吸い取りやすいこともウリとなっていますが、集塵容積が少ないが故に、あまりペット向きという感じでもありません。
前年度型「EC-VX600,LX600」と、当「EC-VX700」との違い
EC-VX700 | EC-LX600 | EC-VX600 | |
発売日 | 2015年8月下旬 | 2014年9月18日 | |
サイクロン方式 | 2段階遠心分離 | 1段階遠心分離 | |
吸込仕事率 | 210〜約15W | 210〜約45W | 260〜約45W |
ヘッド | パワフル一毛打尽 (※洗えます!) | 洗えるパワーヘッド | |
自走力 | 〇 | 事実上なし | |
ナイトモード (※極弱モード) | 〇 | × | |
運転音 | 63〜約49dB | 65〜約61dB | 54〜約49dB |
強力ゴミプレス | 〇 | × | 〇(スクリュー有) |
本体重量 | 3.1kg | 2.9kg | 3.4kg |
ヘッド+延伸管 +ホース部重量 | 1.6kg | 1.5kg | |
集塵容積 | 0.25L | 0.35L | |
サイズ | 215×350×241mm | 215×350×229mm | 257×308×293mm |
布団用ヘッド | 2WAYベンリヘッド | × | 電動型 |
この機種は、直接的には "2段階遠心分離サイクロン" の2014年度型「EC-LX600」のモデルチェンジということになります。
しかし、2014年度までのシャープ製最高性能サイクロン "スクリュープレスサイクロン" の廃止に伴い、その最大の特徴であったゴミ圧縮機能が言わば "移植" されています。
スクリュープレス型は、1段階遠心分離サイクロンに過ぎなかったので、シャープの中・高価格帯では、これを持って2段階型に完全移行しています。
パラレルフローサイクロン 下位機種との比較
EC-VX700 | EC-LX700 | |
ヘッド自走力 | パワフル | 中 |
吸込仕事率 | 210〜約15W | 210〜約40W |
ナイトモード (※極弱モード) | 〇 | × |
消費電力 | 850W〜約150W | 850W〜約300W |
強力ごみプレス | 〇 | × |
運転音 | 63〜約49dB | 65〜約61dB |
本体重量 | 3.1kg | 2.9kg |
2WAYベンリヘッド | 〇 | × |
下位機種「EC-LX700」は、同形モデルの簡略化版ですが、ヘッドの自走力の差と "強力ごみプレス" の有無がありますので、使い勝手に若干の差があるかもしれません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・EC-VX700 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:パワフル一毛打尽 自走ヘッド ・目詰まり対策:(パラレルフローサイクロン) ・吸込仕事率:210W〜約15W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.1kg/ 全体重量:4.7kg ・運転音:63〜約49dB ・排気方法:― ― ―/ 集塵容積:0.25L ・持ち手(本体):固定式 ・色:ゴールド系(N) ・ULPAフィルター仕様 ・強力ごみプレス(ゴミ圧縮) ・2WAYベンリヘッド、2段伸縮すき間ノズル付 | |
前年度型
・EC-LX600 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:洗えるパワーヘッド(自走式) ・目詰まり対策:(2段階遠心分離サイクロン) ・吸込仕事率:210〜約45W[エコ自動モード有] ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.5kg ・運転音:65〜約61dB ・排気方法:― ― ―/ 集塵容積:0.25L ・持ち手(本体):固定式 ・色:レッド系(R)、ゴールド系(N) ・ULPAフィルター仕様 ・ダストカップ中心部プラズマクラスターイオン放出(静電気防止用) ・2段伸縮すき間ノズル付 | |
関連ページ:
・EC-LX700(下位機種)
関連サイト:
・ラグマットに絡んだペットの抜け毛もかき取るプラズマクラスターサイクロン掃除機 2機種を発売(シャープ・プレスリリース)