「VC-MG600」は、2015年8月11日に東芝から発売となる、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "トルネオV(ヴイ)" と呼ばれる、東芝製本格サイクロンシリーズの1機種で、これはその4機種中の上から2番目の機種となっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
このトルネオV「VC-MG600」のヘッドは、東芝製最高性能ヘッド "イオンファイバーヘッド" です。
まず、"イオン" とは、ヘッド内部で回転ブラシとマイナスイオンプレートとの摩擦で生じている、静電気を抑える効果があるものです。これと銀イオンを練り込んだ回転ブラシとで、フローリングから細かなチリを掻き取りやすく出来ています。
"グラスファイバー" とは、軽量のガラス繊維素材を意味しており、これを用いることでヘッド(及び延伸管)の軽量化がなされています。
また、このヘッドは、各社の上位品であれば当然ではありますが、回転ブラシの回転力が強い "自走式" でもありますので、軽い操作が可能です。
その他でも、ヘッドを横に90度近く曲げて縦にすることで、家具の間等、ヘッドを外さずに狭い場所に押し込めたり、ヘッドと延伸管を水平にまで出来ることで、家具の下等の約6.5cm以上の高さのすき間を掃除することが可能です。
回転ブラシに毛等絡んだ場合には、ヘッドを裏返すことなく、ヘッド上のカバーを取り外すことで、お手入れをすることも出来ます。この仕組みは東芝独自のもので、現在はこの "イオンファイバーヘッド"、及びその下位版 "イオンカーボンヘッド" 、廉価版 "(自走式)カーボンヘッド" にしか採用されていません。
▼ 吸込仕事率 (1)
この「VC-MG600」の吸込仕事率は200Wです。この数値は、最新のダイソン・DC63の170/160Wに比べれば少し高いですが、国内有名メーカー製の掃除機としては、この下位機種のトルネオVコンパクトの180Wよりは高い程度で、相当な低さということになります。
▼ 清掃力 (3.5)
日本でも製品を販売している前述のダイソン社や、ドイツのミーレ社、スウェーデンのエレクトロラックス社では、200W前後の吸込仕事率が標準ですので、この機種の200Wが一概に不可だとは言えません。
しかし、それらのメーカーでは、ヘッドと床のすき間を最低限にして床に吸引力が集中する設計になっているのに対し、この東芝製の最上級ヘッドでは、そうはなっていません。これにおいても他の国内メーカーと同様に、ヘッド前の米粒等固形物を吸いやすいよう、床とのすき間を多めに開けた設計となっているので、物理的・原理的に無理があると思えます。
もっとも、ヘッドには回転ブラシが付いているので、元々「弱」運転でも問題はないと言われるフローリング上では特に問題ないはずですし、絨毯上でも、モーター式の回転ブラシが絨毯表面のゴミは掻き取るはずですので、その面では問題はないはずです。つまり、絨毯内部に入り込んだチリには弱いだろうという話となっています。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
このトルネオVシリーズのサイクロン部は、"バーティカルトルネードシステム" と称されており、ダイソンと同じく大きなゴミを遠心分離する大きなサイクロンと、2段目としての小さなゴミを遠心分離する複数の小さなサイクロンから成っています。
(※ただし、2015年度からは、サイクロン部をより細かく分解して洗えるようになったということで、"バーティカルトルネードシステムクリア" と余計な改名がなされています)
※バーティカルトルネードシステムの解説動画。再生してみて下さい。
遠心分離力は、数を増やしてでも、小径のサイクロンを使用する方が高まるという話で、ダイソンDC63では、上下2層の計24個の小サイクロンを、前作のDC48では計10個を採用しています。この「VC-MG600」を含むトルネオVシリーズでは、12個の小サイクロンを採用していますので、その数だけで見れば、遠心分離力はそこそこのはずです。
しかし、ダイソンでは、高性能・高回転の直流モーター "ダイソンデジタルモーターV4" を使用しています。
掃除機に使われる通常の交流モーターが、毎分3万〜ハイパワー型でも4万回転であるのに対し、ダイソンの "V4" は、10万4千回転が可能です。
しかも、ダイソンでは消費電力が1,150Wある、通常の1,000Wより15%も高いモーターを使用しているのに対し、トルネオVシリーズでは、逆に15%低い850Wのモーターを使用しています。
なので、モーターの回転力の差は、およそ3倍に上っているはずです。
ダイソンの2段サイクロン方式(ルートサイクロンテクノロジー)は、特許で守られているので、他メーカーは真似できないでいるはずです。しかし、東芝がダイソンの特許を回避できた要因として、ダイソンでは、複数の小さなサイクロンで分離した微細なゴミを、ダストカップの中心部の空洞を通して落とす構造であるのに対し、東芝ではそのゴミをダストカップの外延部に溜め、下には落とさない構造としていることが挙げられるはずです。
この点は、そこに溜まるゴミを再びサイクロンの渦に巻き込みかねない問題と、その部分のゴミの、ゴミ捨ての際の若干の扱いづらさに繋がっています。
尚、トルネオシリーズのサイクロン部の正式な名称は、外からゴミの回るのが見えるダストカップのサイクロン部は、"デュアルトルネードシステム" 。
トルネオV(+コンパクト)の複数の小サイクロン部は、上述のように "バーティカルトルネードシステム" 。
そして、生産を既に終了したトルネオWの同部分は、"ミクロトルネードシステム" となっています。
どれもカッコ良い名前ではあるものの、自称に過ぎません。
▼ ゴミ圧縮 (3)
トルネオシリーズのゴミ圧縮は、大サイクロン部の下部で、サイクロンの回転の余波でゴミがゴロゴロと転がっている内に、約5分の1になるということになっています。
小サイクロン部の下部に溜まる細かなチリも、サイクロンの渦で下に押しつけられるせいか、再び吸われずにそこに残っている分は、ある程度固まっています。
▼ ゴミの捨てやすさ (2)
この「VC-MG600」を含むトルネオシリーズでは、ダストカップは、底がパカッと開くダイソン方式とは違って普通のカップ型ですので、そっとゴミを捨てることが可能です。
しかも、確かにある程度ゴミが固まって塊となっていますので、捨てる際にも舞いにくいです。
ただし、小サイクロンで遠心分離された細かなチリは、小サイクロンの直下にくっ付いていますので、お手入れブラシかティッシュか何かで、時々取ってやる必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (3)
トルネオVシリーズのダストボックスの容量は0.4Lで共通です。
一応は、平均的な一軒家全体を掃除できるだけの容量となっているはずです。
この部分に関しては、近年流行りのもっと小型のサイクロン掃除機(0.25L)とは違って、真面目であると言えると思います。
▼ フィルター (4.5)
この「VC-MG600」のメインフィルターは、0.3μm以上のホコリの99.9%を捕塵可能です。
この集塵性能は、HEPAフィルター相当で、家庭用掃除機としては相当高性能なものとなります。
また、最終フィルターとして、"脱臭フィルター" も装備されています。
▼ 本体重量 (3)
トルネオVの本体重量は3.2kgで共通です。現在は小型機だとは言いにくいですが、通常サイズ機扱いされる製品の中では相当軽いです。
とは言え、サイクロン式の本命であるダイソンDC63の2.75sにはかなり負けていますが。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.4kgですので、全体としては少し軽めという程度ですが、モーター式回転ブラシ内蔵のメーカー最上級ヘッドとしては驚異的な軽さです。
ヘッドの項目で既述ですが、グラスファイバー素材の採用で、軽く出来ているのがウリの一つとされています。
▼ 運転音(最大値) (2)
トルネオVシリーズの運転音は、64〜約58dBで共通です。これは単に普通のうるさい掃除機といったレベルです。
ただし、消費電力が少ない割には、数値は悪いです。
▼ エコモード (3)
この「VC-MG600」のエコモード(自動パワーコントロール)は、
- ゴミ残しまセンサー
- 床面識別
- 節電アイドリング機能
- 及び、強モードの不使用
の3+1からなっています。
"ゴミ残しまセンサー" とは、赤外線センサーで吸気内のゴミ(チリ)を見分けて、吸引力を上下させる仕組みのことです。これは東芝とパナソニックの上位機種にしかありません。
"床面識別" は、回転ブラシにかかる負荷により、絨毯とフローリングとを識別する機能のことです。絨毯と識別した場合には、高い吸引力を選択します。
"節電アイドリング機能" とは、ヘッドを浮かすと1秒でパワーを低減⇒6秒で一時停止⇒その状態を60秒継続で電源OFFとなる機能のことです。
最後の "強モードの不使用" に関してですが、この機種の消費電力は850W(強)〜約300W(弱)となっているのですが、実はエコモード時には最大消費電力は500Wに制限されます。
この機種には何と "中モード" がないのですが、そのエコモード時の最大吸引時が、事実上の "中モード" に当るはずです。
この機種のエコモード時は、消費電力を最大52%削減するとの記載がありますが、"強" を使用しないだけで、既に最大42%の削減が達成されています。こういった方法をとるのは、他メーカーでは日立の中位機種だけですので、さすがにどうかと思います。
結局、絨毯上では "強" を使い、フローリングや畳上では、"エコモード" を使うのが良いということなのでしょう。
▼ 消費電力 (4)
先程も述べたように、トルネオVの消費電力は、850W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを載せて遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。
特に、このシリーズより小型のダイソンDC63は1,150Wの直流モーターですので、サイクロンに対する本気度が足りなのではないかとしか言いようがありません。
▼ 特記項目 "ゴミ残しまセンサーランプ" (4.5)
エコモードで使われる "ゴミ残しまセンサー" は、吸気内のゴミを探知すると、赤いランプを点灯させて使用者に知らせます。このゴミ吸引の視覚化は、掃除のモチベーションを上げるのに一定の効果があります。
ただし、このせいで念入りに掃除をするようになると、消費電力が増えますが、室内が綺麗になるのは掃除機として良いことだと言えるでしょう。
▼ 付属ブラシ類 (3)
「VC-MG600」には、通常のすき間ノズルに加えて、手元ブラシと延伸管部先端ブラシ(併せて「2WAYブラシ」)が付属しています。
▼ 価格 (2)
この機種の最安値は、3万円強程度となるはずです。
トルネオVが欲しくて、かつ余計な付属品が必要ない場合には、良い選択肢となると思います。
▼ 総合評価 (3.16)
このトルネオV「VC-MG600」は、ヘッドの回転ブラシは優秀ですし、サイクロン部も日本メーカー製としては最優秀の一つですが、やはりヘッドの構造と低吸込仕事率の組み合わせの問題で、信用が置けません。フローリング用としてなら十分のはずなので、その用途であれば、やたらと高価なダイソンよりも良いかもしれませんが。
また、"ゴミ残しまセンサー" と "床面検知" に制御される自動パワーコントロール機能(エコモード)が付いているのは良いのですが、切替モードが "中" と "弱" のみで、肝心の "強" が含まれていません。トルネオVシリーズは吸引力がただでさえ弱いのに、エコモードで使うと "強" まで失ってしまうとは、正直本当に真面目に作るつもりがあるのか? 掃除性能より "消費電力量最大約52%削減" と書くことが出来る方が、東芝には重要なのではないか、と思えてしまいます。
ヘッドを浮かせると吸引が止まるアイドリングストップ機能も、エコモード時にしか働かない為に、必然的に最大吸引時には一切使えない設定となってしまっているので、何ともな話です。
しかし、やはりフローリングであれば、"強" でなくても十分ですので、やはりこの機種はフローリングで使うのが好ましいのではないでしょうか。
ダイソンの欠点として、サイクロン部分(2段目の複数の小サイクロン部分)を掃除出来ないということがあるのですが、トルネオVシリーズでは何と同部分は分解・水洗いが可能です。
勿論、そこは掃除出来なくて問題がないですし、分解できる構造にすると、やはり微妙な空気漏れや騒音の増加に繋がりますので、真面目にサイクロンを作るとなると、妥協できない部分となるのではないかと思います。
実のところ、その部分の清掃不能が気になる方も、慣れてしまえば気にならなくなるのではないかと思います。しかし、慣れない内は東芝のように分解できた方が、気分的に楽と言えばそうなのかもしれません。
ちなみに、サイクロン掃除機にも必ずフィルターは付いていますので、掃除機内部がホコリで汚れていても、そのホコリが外へ漏れ出ることは、フィルター性能の範囲内においてないはずです。
そういった所が気になって仕方がない方は、きっと殆ど毎日掃除するタイプの方でしょうから、そう思うと気になる気持ちも分かります。
そういう方は、紙パック式にしておけば、分解して洗おう等と余計なことを考える必要もなく、安心して掃除ができるのではないでしょうか。
当「VC-MG600」と、前年度型「VC-SG314」との違い
VC-SG314 | VC-MG600 | |
発売日 | 2014年9月1日 | 2015年8月11日 |
ヘッド | イオンカーボンヘッド | イオンファイバーヘッド |
硬質床用新素材 追加型回転ブラシ &毛絡み対策 | × | 〇 |
ヘッド+延伸管 +ホース部重量 | 1.5kg | 1.4kg |
捕塵率 | 0.5μm以上を 99.9%以上 | 0.3μm以上を 99.9%以上 |
サイクロン部 分解(洗浄目的) | △ | 〇 |
ダストカップ親水 性コーディング | × | 〇 |
ダストカップ部 と後輪の間の すき間埋め用部品 | 大 | 小(引っ掛かりにくい 進化型/起毛付) |
後輪の横滑り | 原則なし | 有(本体の引っ掛かり対策) |
まとめると、
- ヘッドの軽量化&高性能化
- 排気性能の強化
- ダストカップ・サイクロン部が更に水洗いしやすくなった
- 本体の取り回し対策
ということになります。
ヘッドに関しては、昨年度型は上位機種に対して少し劣っていましたが、今年度からは、上位機種と同じ東芝製の最高性能のそれとなりました。また、後輪が横滑りしやすいということに関しては、普通に引っ張った場合にも、車輪が回らずに滑りながら移動する場合が多くなることを意味しています。
なので、それが嫌な方には、向かないかもしれません。
トルネオV 上・下位機種との比較
VC-MG800 | VC-MG600 | VC-S500 | |
ヘッド | イオンファイバーヘッド | カーボンヘッド | |
床の菌まで 除去 | 〇 | × | |
ヘッド+ 延伸管+ ホース部重量 | 1.4kg | 1.5kg | |
捕塵率 | 0.3μm以上を 約99.999% (※ULPAフィルター級) | 0.3μm以上を 約99.9% (※HEPAフィルター級) | 標準品(特に言及なし) |
ゴミ残しま センサー | 〇 | × | |
消費電力 削減率 | 約52% | 約44% | |
ワイドピカッ とブラシ | 〇 | × | |
手元グリップ | (最新)らくわざフリーグリップ | 新らくわざグリップ | |
サイクロン部 完全分解 | 〇 | × (※でも水洗いは可) | |
付属品 | 伸縮ロングノズル ロングブラシ 付属品用ホース すき間ノズル | ― ― ― すき間ノズル |
上位機種との大きな違いは、複数のオプション品と "ワイドピカッとブラシ" です。
"ワイドピカッとブラシ" は、ヘッドを付けていても、外してブラシノズル状態にしいても、前方をLEDライトで照らすことが可能です。
これにより、テーブルの下等、昼間でも暗い場所を掃除しやすくなっています。
排気性能に関しては、どちらも相当高性能ですので、深刻なハウスダストアレルギーがある訳でなければ、事実上どちらでも関係ありません。
下位機種は、ヘッドが少し劣っていますが、それでも東芝製ヘッドとしては上位なので、高性能品に分類されます。
"ゴミ残しまセンサー" とは、前述のとおり吸気内のゴミの有無を赤外線で見分ける装置です。
これはゴミの有無をランプで視覚化すると共に、エコモード(パワー自動コントロール)においても吸引力決定の一因となるものですが、下位機種にはこれがないせいで、同モード使用時の消費電力の削減率に少し差があります。
手元グリップに関しては、最新版 "らくわざフリーグリップ" の方が少しだけ曲線的ですが、どちらでもあまり変わりません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・ | |
![]() | ・楽天![]() ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ![]() ・ヘッド形状:イオンファイバーヘッド(自走式パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/12気筒) ・吸込仕事率:200W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.2kg/ 全体重量:4.6kg ・運転音:64〜約58dB ・排気方法:― ― ― /集塵容積:0.4L ・持ち手(本体):固定式 ・色:グランレッド(R)、メタリックピンク(P) ・ゴミ残しまセンサー付 ・HEPAフィルター(相当)仕様 |
前年度型
・ | |
![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:イオンカーボンヘッド(自走式パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/12気筒) ・吸込仕事率:200W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.2kg/ 全体重量:4.7kg ・運転音:64dB〜約58dB ・排気方法:― ― ― /集塵容積:0.4L ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:サテンゴールド(N)、メタリックピンク(P) ・ゴミ残しまセンサー付 |
関連ページ:
・VC-MG800 トルネオV(上位機種)
・VC-S500 トルネオV(下位機種)
・VC-JS4000 トルネオVコンパクト(ジャパネットたかた専売機)
・VC-SG314 トルネオV(前年度型)
・東芝掃除機(トルネオ・シリーズ解説有)
関連サイト:
・VC-MG600(R)(P) サイクロンクリーナー|東芝公式サイト
・サイクロン部も分解して水洗いできるサイクロン式クリーナーの発売について|東芝プレスリリース