「CV-SC100」は、日立から2015年8月8日に発売となる、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "2段ブーストサイクロン" と呼ばれます。
実は、このシリーズは元々は大型機だったのですが、小型化し、更にラインナップは2機種に縮小されています。
そしてこの機種は、昨年度までなら中位機種扱いでしたが、今年度は上位機種の位置づけとなっています。
その性能的特徴としては、モーター式回転ブラシを内蔵したヘッド "ごみハンターヘッド" を装備しています。なので、絨毯掃除にも一応適していますが、決して高性能ではありません。
また、サイクロン掃除機として肝心なサイクロン部分は、ティッシュをフィルター代わりにして集塵する方式であり、遠心分離も一応取り入れてはいるものの、あってもなくてもあまり変わらない中途半端なものとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (3.5)
この「CV-SC100」のヘッドは、"ごみハンターヘッド" と呼ばれる日立製のモーター式回転ブラシ内蔵ヘッドです。
名前は華々しいですが、実のところ、モーター式によくある自走力までは持ち合わせていません。なので、性能はモーター式としては高くありません。
ただし、"かるふきブラシ" という、床の菌まで拭き取れるというフローリング用ブラシが植え込まれていますので、フローリングでは比較的高い性能を発揮できるはずです。
また、これは日立製最上位ヘッドの "スマートヘッド" と同様ですが、ヘッド付け根の可動部が柔軟に動く為、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等の狭い場所に押し込んだり(「クルッとヘッド」)、ヘッドと延伸管をほぼ水平にまで出来ることで(「ペタリンコ構造」)家具の下等のすき間を、掃除しやすく出来ています。
▼ 吸込仕事率 (2)
この機種の吸込仕事率は、340W〜約40Wです。数値的に、小型機として普通程度ではあります。
▼ 清掃力 (3)
前述の通り、この高性能とは言えない "ごみハンターヘッド" においても、"かるふきブラシ" というフローリングの菌まで拭き取れるという効果が謳われています。なので、フローリング上においては、そこそこの清掃力を誇るはずです。
しかし、自走力がない=絨毯を引っ掻く力も弱いということで、絨毯上では上位機種の自走式との差は、それなりにあるはずです。
また、この「CV-SC100」は、従来の基準で小型2段ブーストサイクロンの中での "軽量タイプ" に分類できますが、この本来の姿である "強力タイプ" の吸込仕事率が最大400Wあったことを考えると、こちらはそこから60Wも低いです。
そこはやはり、ネックとなっていてもおかしくありません。
▼ 吸引力持続 (2)
この「CV-SC100」を含む "2段ブーストサイクロン" は、基本的にメインフィルター前にティッシュを挟み、それをフィルター代わりにして使い捨てにする "なんちゃってサイクロン" です。
ただし、ややこしいのは、この "2段ブーストサイクロン" では、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" とは違い、そのティッシュを挟んだ集塵部に吸気が届く前に、吸気を横に(原則)一回転させて、その円状の風路の中心部に吸気の一部を強引に抜き出して吸い上げ、遠心力でそちらに曲がり損ねて本来の円状の風路に沿って進んだ大きなゴミを含む空気のみを、ティッシュを挟んだ集塵部に届けています。
それは遠心分離だと言えばそうなのですが、その程度の仕組みで細かなチリまで遠心分離出来るとはとても考えることは出来ません。
そして、その円状の風路の中心に抜き出して吸い上げられた、大きなゴミと分けられた吸気は、ティッシュ部を通らずに、何とメインフィルターに直接到達します。
遠心分離されて、ティッシュ側に分けられた大きなゴミを含む吸気も、そのティッシュ部で濾されて、その後にメインフィルターに到達することになります。
なので、遠心分離とは言っても、そこで2手に分けられた吸気は、どちらもメインフィルターを通ることになります。
しかし、主な集塵部となるティッシュ側には、大小を問わずのゴミが溜まることで、空気の流れが早めに悪くなります。そうなると、吸気はメインフィルターに直接到達する側の風路に多く流れ始めますので、遠心分離の効率も下がり、次はメインフィルターが詰まることになります。そしてそうなると、ちょうどゴミの捨て時ということになります。
実のところ、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" のように、遠心分離部を持たず、全てのゴミがティッシュ部を通っても、結局は "2段ブーストサイクロン" と同じく、全ての吸気はメインフィルターを通ることになります。なので、中途半端な遠心分離を行う必要は特にないはずです。
事実上、(日立として)中位シリーズの "2段ブーストサイクロン" では、そのティッシュ部にゴミが溜まって詰まってきた際に、まだ余裕のあるメインフィルターにゴミを多く含む空気を直接流すことで、吸引力を若干長続きさせるという方式となっています。
メインフィルターは、電源コードの出し入れと連動したフィルター振動で、到達したチリを自動で落としてある程度綺麗に維持される仕組みとなっていますが、それでもフィルター振動で落ち切らないチリが徐々に溜まって行きます。
なので、メインフィルターに出来るだけチリを到達させないことで、1回1回ではなく、長い目で見て吸引力を持続させようとするならば、メインフィルターに直接チリを流す風路のある、中途半端な遠心分離部を設けずに、吸気は全てティッシュ部を通過させ、そこが詰まれば、それでゴミを捨てましょう、とした方が良いはずです。
つまり、このような方法をとるのであれば、そもそも下位シリーズのティッシュ部だけを持つ "ごみダッシュサイクロン" で良いのではないかと思えます。
しかし、自社製品を "サイクロン掃除機" として堂々と売る為には、明らかに遠心分離をするサイクロン部がどうしても必要なので、少し高めのこのシリーズでは、そのようなよく分からない方式でも、ないよりはマシと採用しているのではないかと思います。
▼ ゴミ圧縮 (3)
"2段ブーストサイクロン" におけるゴミ圧縮原理は、単に紙パック式と同様のはずです。
ただし、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" においては、全ての吸気がティッシュを挟んだダストボックスを通るのに対し、この "2段ブーストサイクロン" では、直接メインフィルターに流れる分の吸気もありますので、圧縮効果もその分劣るはずです。
また、これらにおいては、紙パックの場合のように中が一杯になる前にゴミを捨てることになるので、あのように無理やり圧縮される訳ではありませんが。
ただし、圧縮効果があるのは、ティッシュで集塵する大きなホコリのみで、メインフィルターから出る厄介な微細なチリには、圧縮は無関係です。
▼ ゴミの捨てやすさ (1)
この "2段ブーストサイクロン" は、ダストボックス部は "ごみダッシュサイクロン" と同一の構造で、ゴミ捨て時に開口ボタンを押すと、ティッシュを挟んだ部分がバネで飛び出す仕組みとなっています。
また、ティッシュを挟んでおいてゴミを捨てる際には、下に落ちた際にティッシュが上に被さる形になることにより、ゴミの舞い上がりを抑えることが出来るとされています。
そしてそれらにより、これらの機種では、"ごみ捨て簡単・清潔" と堂々と謳われています。
しかし、バネで飛び出してボトッと落ちれば、やはり落ちた際にホコリが舞います。なので、そうならない為には、中身が飛び出さないように容器を開け、溜まったホコリをティッシュを持ってそっと取り出す必要があります。
また、フィルター振動によりメインフィルターから出る微細なチリは、ティッシュを通り抜けており、ティッシュとは別に捨てなければならないので、舞いやすく厄介です。
▼ ダストボックスの容量 (1)
小型版 "2段ブーストサイクロン" におけるダストボックスの容量は、0.25Lです。この数値はサイクロン式の小型機としては標準ですが、ゴミ圧縮効果もありますので、少し多めに入るはずです。
ただ、この容量だと、一軒家向けという感じではありません。ゴミは毎回捨てるつもりでいた方が良いでしょう。
▼ フィルター (4.5)
この「CV-SC100」のフィルターは、高性能で有名なHEPAフィルター相当ですので、性能は十分以上です。0.3μm以上のホコリの約99%を捕塵可能だとされています。
(※HEPAフィルター[HEPA規格のフィルター]と呼ばれる為には、フィルターの単独性能として、0.3μm以上のホコリの99.97%以上の集塵率が必要です。しかし、日立製の場合には、ドイツ・SLG社によって、フィルター単独ではなく実機を用いた計測が行われている為、控えめな数値が出ているようです)
▼ 本体重量 (4)
「CV-SA100」の本体重量は2.9kgなので、小型機相当です。
ただし、近年どのメーカーも小型化を推進していますので、特別では全くありません。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度ですが、モーター式回転ブラシの機種としては軽いです。
このヘッドのバージョンでは、ヘッドの特別な軽量化はなされていません。
しかし、従来品より細くて軽く、表面が滑りやすくて取り回しの良い "スマートホース" を用いることで軽量化がなされたというのが、この機種の密かなウリとなっています。
▼ 運転音(最大値) (3)
この機種の運転音は59〜約55dBですので、星の数こそ3つですが、それでも掃除機としては比較的静かな部類に入ります。
▼ エコモード (2)
この「CV-SC100」のエコモード(自動パワー制御)は、"床面検知" と、恐らくはその仕組みを応用した、ヘッドの操作速度等を検知する "操作力検知" から成り立っています。
ただし、この機種の場合、上位機種との格差を作る為か、パワーの切替は「中」と「弱」のみで、「強」は対象外となっています。
そのエコモードを用いて6分間フローリングを掃除した場合、「強モード」のみで同等の条件下を掃除した場合と比べて、最大約75%の省エネになるとされています。
しかし、それは要するに、この機種ではエコモード時に選択されない「強」は勿論として、「中」も殆ど使用されず、ほぼ「弱」のみで運転された場合との比較を表しています。
▼ 消費電力 (4)
2015年度型2段ブーストサイクロンの消費電力は、840W〜約180Wですので、その最大値は小型サイクロン掃除機としては標準的ながら、通常の掃除機より16%少なく、その分エコだと言えばエコとなります。
ただし、最小値の約180Wも妙に低いですが、弱モード時に低いのは諸刃の剣です。掃除機は掃除道具なのでしっかり吸ってくれた方が良いと言えますし、また、特にサイクロン式の場合には、しっかり吸引しないと遠心分離力が上がりません。
▼ 手元グリップ形状 (3)
延伸管最上部の手元グリップですが、この「CV-SC100」には、半月状の下位バージョンが付いています。
これは輪になった上位バージョンの方が手前に引き易く、掃除が楽に進みます。
勿論、これでも付いていないよりは、付いている方がずっと良いのですが。
付属ブラシ類は、先端に折り畳み脱着式のブラシの付いたすき間ノズル、"クルッと切換えブラシ吸口" のみとなります。
尚、延伸管にはすき間ノズル用ホルダーがありますので、上位機種とは違って別売ホルダーを買わなくても、延伸管に取り付けておくことが可能です。
▼ 特記項目 "サッとズームパイプ" (4)
この「CV-SC100」を含む、日立製の中程度以上の機種には、"サッとズームパイプ" という、足裏でヘッドを押えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能があります。
これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっています。
▼ 価格 (3)
この機種の最安値は、前年度型の実績から見て、(発売後1年近く経てば)2万5千円を割る程度になるものと思われます。
基本性能の割に意外と高く、困惑します。
▼ 総合評価 (2.82)
この「CV-SC100」は、小型・軽量がウリとなる製品ですが、同程度の製品は各メーカーから発売されています。
その中でも日立製は、サイクロン部の構造が何とも残念で、特にこの "2段ブーストサイクロン" では、遠心分離部はなくても良いのではないかと思えます。
敢えて買う理由を探すとすれば、運転音が割とマシで、フィルター性能も高いから、ということになると思います。
前年度型「CV-SA100」との違い
CV-SA100 | CV-SC100 | |
発売日 | 2014年8月9日 | 2015年8月8日 |
捕塵率 | 未記載(標準品) | 約99% |
ボディカラー | シャンパン(N) | シルバー(K) |
前年度型との違いは、フィルターが高性能となり、事実上のHEPAフィルター相当品となったことと、色の違いだけです。
フィルター性能は、以前の物で普通ですので、アレルギーがある等でこだわりがある訳でなければ、前年度型でも特に問題はありません。
日立製サイクロン 上・下位機種との比較
CV-SC300 (パワーブースト) | CV-SC100 (2段ブースト) | CV-SC90 (2段ブースト) | |
ヘッド | スマートヘッド (自走式) | ごみハンター ヘッド (非自走) | パワフル エアーヘッド (タービン式) |
吸込仕事率 | 410〜約60W | 340〜約40W | 330〜約40W |
消費電力 | 950〜約190W | 840〜約180W | |
サイクロン構造 | パワーブースト (※一応の遠心分離) | 2段ブースト (※遠心分離のフリ) | |
エコモード | 「強・中・弱」自動 | 「中・弱」自動 | × |
アイドリングストップ (※エコモード時に動き を止めるとパワー抑制 ⇒停止) | 〇 | × | |
本体/全体重量 | 3.5s | 2.9kg | |
ヘッド+延伸管 +ホース部重量 | 1.5kg | 1.3kg | |
運転音 | 56〜約51dB | 59〜約55dB | |
捕塵率 (0.3μm以上) | 99.9% | 99% | |
集塵容積 | 0.4L | 0.25L | |
軽ワザグリップ (※円状グリップ) | 〇 | × | |
サッとズームパイプ | 〇 | × | |
クルッとブラシ | 〇 | × | |
すき間ノズル | 通常型 | 先端ブラシ付 | 通常型 |
上位機種は、日立製としては本格サイクロンと言える "パワーブーストサイクロン" です。
ジャニーズの嵐のメンバーが宣伝しているのは、そちらとなります。
サイクロン部だけではなく、ヘッドやパワーも優れていますので、そちらの方が良いのですが、当然価格もそれに応じたものとなります。
下位機種の「CV-SC90」となると、ヘッドの回転ブラシがモーター式ではなく、タービン(風力)式となります。
一般にフローリングであれば、タービン式でも十分だとされますが、絨毯を掃除するには非力である為、絨毯ではモーター式が好ましいとされています。
もっとも、フローリングであっても、回転ブラシが床を強力に磨くモーター式の方が、より良いのですが。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・CV-SC100 小型軽量版2段ブーストサイクロン | |
・楽天 ・amazon ・楽天レビュー: ・ヘッド形状:ごみハンターヘッド(非自走版) ・目詰まり対策:コード連動式フィルター振動機構&ティッシュ装着 ・吸込仕事率:340W[エコ自動モード有] ・本体重量:2.9kg[小型機]/ 全体4.4kg ・運転音:59〜約55dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×2 ・色:シルバー(S) ・HEPAフィルター相当品仕様 | |
前年度型
・CV-SA100 小型軽量版2段ブーストサイクロン | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:ごみハンターヘッド(非自走版) ・目詰まり対策:コード連動式フィルター振動機構&ティッシュ装着 ・吸込仕事率:340〜約40W[エコ自動モード有] ・本体重量:2.9kg[小型機]/ 全体4.4kg ・運転音:59〜約55dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×2 ・すき間ノズル収納:延伸管横 ・色:シャンパン(N) | |
関連ページ:
・CV-SC300 パワーブーストサイクロン(上位機種)
・CV-SC90 2段ブーストサイクロン(下位機種)
・CV-SA100 2段ブーストサイクロン(前年度型)
・ごみダッシュサイクロン(下位シリーズ)
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