「CV-PC30」は、日立から2015年7月18日に発売となった、新型(マイナーチェンジ)の紙パック式掃除機です。
これは "かるパック" というシリーズ名で呼ばれる、日立製紙パック式の上位シリーズの1機種で、業界トップの吸込仕事率680Wがウリとなる、その下位バージョンということになります。
ただ、重量が軽いということで、"かるパック" のはずですが、吸引力が高く、また、マシなフィルターが付いているという程度の機種としては、軽いという訳ではありません。単純にこれはこの程度だと思います。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
この「CV-PC30」のヘッドは、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれる日立製の最高性能ヘッドです。
これは、日本製の大抵の他メーカー製の最上級ヘッドと同様に、フローリングの菌までその内蔵回転ブラシで拭き取る性能があるとされています。
また、ヘッド幅が30cmと例外的な広さを誇り、一度に広い面積を掃除できるよう作ってありますが、カーボン素材を用いることと、余分なスペースをなくすことでの軽量設計となっています。
以前のモデルでは、ヘッドを手前に引く際には、どんな掃除機にも吸込口後方に大抵付いている起毛部分(※これは、吸い逃したゴミ、及び回転ブラシが後方に弾いたゴミを逃さないようにする為の物)が邪魔をし、ゴミを吸い込めないことがあるそうですが、このヘッドではそれを解決する為に、起毛部分がヘッドを引く際にのみ回転する日立製だけとなるローラー式となっています。
2015年度からはそれに加え、ヘッド内に "ワイドプレート" と "サンクションキーパー" という部品でもう一つ(横長の)小さなヘッドがあるような状態とすることで、床面に対する吸引力を高めています。
これにより、この2015年度型の "スマートヘッド" は、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれることとなりました。
また、このヘッドは付け根の可動部が柔軟に動く為、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等の狭い場所に押し込めたり(「クルッとヘッド」)、ヘッドと延伸管をほぼ水平にまで出来ることで(「ペタリンコ構造」)、高さ8cm以上の家具の下等のすき間を、掃除しやすく出来ています(※⇒公式サイトによるヘッド機能の解説)。
▼ 吸込仕事率 (5)
この機種の吸込仕事率の最大値は、680Wです。
この数値は、この前年度型の「CV-PA30」と共に、断トツで業界最高です(※⇒「掃除機の吸引力ランキング」)。
▼ 清掃力 (5)
ヘッド性能は高いですし、吸込仕事率も文句なしです。
▼ 吸引力持続 (2)
この「CV-PC30」には、日立製紙パック式の吸引力持続の仕組みである "パワー長持ち流路" と "パックチリ落とし機構" の2つが設けられています。
まず、"パワー長持ち流路" ですが、これは紙パックの後部だけではなく、上部からも吸う為の構造です。これはないよりはある方がずっと良いでしょう。
"パックチリ落とし機構" とは、電源コードを出し入れする度にそのエネルギーを利用してギアを回し、紙パックの上部(※実はパワー長持ち流路の部品そのもの)を振動させて、紙パック内のゴミを下に落とすという仕組みです。
これは一見合理的ですが、紙パック内にゴミが溜まって来るとあまり意味がなくなる仕組みです。それにそもそも、紙パックの繊維内に入り込んだ微細なチリは、幾らか振動させる程度では落ちないでしょう。
▼ 紙パック+フィルター性能 (4.5)
この「CV-PC30」のフィルターは、高性能で有名なHEPAフィルター相当のはずです。
日立は2009年に、"分かりにくいから" という理由でHEPA/ULPA表記を止めてしまいました。
そしてその際に、代々HEPAの表記のあった、この機種の直接の先祖となる紙パック式の1機種と、サイクロン式の1機種とで、この機種と同じく0.3μm以上のホコリの約99%が捕塵可能だとの表記を始めました。
なので、この機種もHEPAフィルター採用型だと判断しています。
(※HEPAフィルター[HEPA規格のフィルター]と呼ばれる為には、フィルターの単独性能として、0.3μm以上のホコリの99.97%以上の集塵率が必要です。しかし、日立製の場合には、ドイツ・SLG社によって、フィルター単独ではなく実機を用いた計測が行われている為、控えめな数値が出ていると思われます)
また、日立製紙パック式の上位シリーズ機種であるこの「CV-PC30」の系統の製品には、標準紙パックとして日立製上位紙パック「GP-130FS」が付属しています。
本体には前述の通りHEPAフィルター相当の高性能フィルターが内蔵されていますので、それを詰まらせたくなければ、これかこれより上位の紙パックを使用することが必要とされます。
▼ 標準紙パックの容量 (4)
この機種を含む日立製紙パック式・上位シリーズ "かるパック" では、紙パックの容量は1.7Lですので、普通より若干多めに入ります。
▼ 標準紙パック価格 (1)
標準紙パック「GP-130FS」は、定価で1枚約433円です。
これは全メーカー中で2番目の高さですが、日立製には全メーカー中1番で、定価にして1枚約667円の「GP-2000FS」もありまして、それよりはずっと安いです。(笑)
尚、実売価格としては、ネット価格・送料別で1枚300円程度ということになります。
▼ 本体重量 (3)
この「CV-PC30」の本体重量は3.7kgなので、掃除機として普通程度です。
ただし、本体前部・ホース付け根部に装着可能な "サッとハンドル" を装着すると、100g増しとなります。それでもまだ普通の範囲内ではありますが。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (2)
それらの重量は1.7kgですので、全体としては重めですし、モーター式回転ブラシの機種としてもどちらかというと重いです。
それでも、ヘッドの回転ブラシの軸部分と、延伸管とに軽量カーボン素材を用いることで軽量化がなされた(「カーボンライト」)というのが、この機種のウリの一つとなっています。
ただし、日立製は手元ブラシ、もしくは延伸管先端ブラシとして使う "クルッとブラシ" が後付け式となっており、これが実は150gもあります。なので、もしかすると合計で1.9kg近くあるかもしれません。これだと現在では重い範疇に入ります。
▼ 運転音(最大値) (1)
この機種の運転音は、66〜約60dBですので、単に普通のうるさい掃除機です。パワーが非常に高い割に、特別うるさい訳ではないと言うことは出来ますが。
▼ エコモード (3)
この「CV-PC30」のエコモード(自動パワー制御)は、"床面検知" と、恐らくはその仕組みを応用した、ヘッドの操作速度等を検知する "操作力検知"、そしてヘッドを止めていると自動でパワーダウン⇒停止へと至る "アイドリング&ストップ" から成ります。
"床面検知" と "操作力検知" を用いて6分間フローリングを掃除した場合、「強モード」のみで同等の条件下を掃除した場合と比べて、最大約75%の省エネになるとされています。
しかし、それは要するに、「強」と「中」が殆ど使用されず、ほぼ「弱」のみで運転された場合との比較を表しているはずです。
メーカーサイトには、エコモードと「強」で掃除した場合とを比べて、"ごみ取れ性能は同等です" とありますが、差は勿論あるはずです。
▼ 消費電力 (2)
この機種の消費電力は1,190〜約240Wですので、"強" で使用時には平均より19%消費電力は高いです。
もっとも、エコモードで使用すれば、それなりに省エネとなるはずですが、それでも褒められたものではありません。
吸込仕事率は600Wもあれば十分高く、それならば消費電力の最大値は従来通りの1,000Wで済みますので、消費電力を上げてまで吸込仕事率を上げるのは、電気代と開発努力の無駄でしかありません。
しかし、吸込仕事率の数値が高ければ、アピールポイントとなって売れやすくはなりますので、結局消費者に高い電気代を強いてまで、"商売上手" として吸込仕事率を上げていると言えるでしょう。
ちなみに、ダイソン等海外メーカーの吸込仕事率は200W程度ですが、床に吸引力を集中させていますので、それでも十分な清掃力を誇ります。
▼ 手元グリップ形状 (4)
この機種の延伸管最上部の手元グリップは、輪状となった上位バージョンで、日立では "かるワザグリップ" と命名されています。
これはそのように輪になった物の方が手前に引き易く、掃除を楽に進めることが可能です。
ただ、この日立製は、これを握った際に電源やパワー切替のボタンが親指から遠くて押しにくいので、若干良くないと思います。
▼ 付属ブラシ類 (2)
付属ブラシ類は、通常のすき間ノズル("すき間用吸口")と、延伸管先端部か手元グリップ部のどちらかに接続して使うブラシ、"クルッとブラシ" のみとなります。
日立製の高額ヘッドは、ヘッド付根の関節が横に90度曲がることで、比較的狭い場所も掃除出来ます。なので、延伸管先端部はそちらに任せて、"クルッとブラシ" に関しては、手元グリップ部に付けておくのが、普通なのではないかと思います。
また、すき間ノズルについてですが、別売の "すき間用吸口ホルダー" なしでは、本体・延伸管に取り付けて保管することが出来ないはずです。勿論、そのようなことはどちらでも構わなければ、問題はありません。
▼ 特記項目 "サッとズームパイプ" (4)
この「CV-PC30」を含む、日立製の中程度以上の機種には、"サッとズームパイプ" という、足でヘッドを抑えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能があります。これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっています。
▼ 価格 (3)
この機種は、最安時には2万円強程度で買うことが出来るはずです。
割とお得な価格設定です。
▼ 総合評価 (3.16)
この「CV-PC30」は、ヘッドが日立製の最高性能品で、吸込仕事率も業界最高、排気性能も日本メーカーの紙パック式としては2番目相当で、重い訳でもなく、基本的に相当優秀な製品です。
しかし、運転音だけは、ごくごく普通にうるさい掃除機なのですが、そこは特に気にならないのであれば、良いのではないでしょうか。
当「CV-PC30」と、前年度型「CV-PA30」との違い
CV-PA30 | CV-PC30 | |
発売日 | 2014年7月19日 | 2015年7月18日 |
ヘッド | 四方向吸引スマートヘッド | ジェット吸引スマートヘッド | 運転音 | 65〜約59dB | 66〜約60dB |
消費電力 | 1,190〜約250W | 1,190〜約240W |
前年度型との大きな違いは、ヘッドの変更です。
前述の通り、新ヘッドでは内部に、"ワイドプレート" と "サンクションキーパー" という部品でもう一つ(横長の)小さなヘッドがあるような状態とすることで、床面に対する吸引力を高めています(※参考⇒家電Watch1,2)
しかし、ヘッド内に余計な仕切りを設けることで、回転ブラシが掻き上げたゴミを吸込みにくくなっているはずですし、特に、大きめのゴミは仕切りの下を通過しにくいはずです。
つまり、改良と言っても、良い事ばかりではないはずで、地味ながら運転音も、これに伴い1dB上がっています。
また、前年度の "四方向吸引スマートヘッド" は、両側面に "サイドブレード" という部品を備えることで、側面からの吸引に強いのをウリとしていました。
今年度型では、せっかく開発したその部品をなくしてしまいましたが、公式サイトの「強い吸引力」という項目の写真を見るに、それでも "ジェット吸引" の効果によって側面に関しても性能は上がったようです。
※前は当然として、上述の通り後も(前年度と同様に)吸いますので、四方向吸います。
日立・紙パック式 上・下位機種との比較
CV-PC30 (かるパック) | CV-PA9 | |
ヘッド | ジェット吸引 スマートヘッド | ごみハンターヘッド |
吸込仕事率 | 680W〜約110W | 650W〜約100W |
消費電力 | 1,190W〜約240W | 1,170W〜約240W |
運転音 | 65dB〜約59dB | 66dB〜約60dB |
エコモード | [強][中][弱]自動 | [中][弱]自動 |
アイドリング &ストップ | 〇 | × |
捕塵率 (0.3μm以上) | 99% (HEPAフィルター相当) | 未記載 (※通常未記載) |
標準紙パック | GP-130FS | GP-110FS |
手元グリップ | らくわざグリップ (輪状) | 通常型 (三日月状) |
本体/全体重量 | 3.7/5.4kg | 3.5/5.2kg |
クルッとブラシ | 〇 | × |
すき間ノズル | 通常版 | 先端ブラシ付 |
下位機種「CV-PA9」も、吸込仕事率の高さに特徴のある機種ですが、当「CV-PC30」より安価な代わりに、全般的に劣っています。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天![]() ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ![]() ・ヘッド形状:ジェット吸引スマートヘッド(自走式) ・目詰まり対策:コード連動式紙パック振動機構(&パワー長持ち流路) ・吸込仕事率:680〜約110W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.7kg/ 全体重量:5.4kg ・運転音:66〜約60dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×1、折り畳み×1 ・色:シャンパン(N)、ルビーレッド(R) ・HEPAフィルター(と同等)仕様 ・標準紙パック:GP-130FS(1枚付属) |
前年度型
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:スマートヘッド(自走式) ・目詰まり対策:コード連動式紙パック振動機構(&パワー長持ち流路) ・吸込仕事率:680〜約110W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.7kg/ 全体重量:5.4kg ・運転音:65〜約59dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×1、折り畳み×1 ・すき間ノズル収納:なし ・色:シャンパン(N)、ルビーレッド(R) ・HEPAフィルター(と同等)仕様 |
関連ページ:
・CV-PC500 かるパック(上位機種)
・CV-PA9(下位機種)
・CV-PA30 かるパック(前年度型)
関連サイト: