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CV-SC700 パワーブーストサイクロン〔3.40点〕

CV-SC700は、日立から2015年7月18日に発売となった、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "パワーブーストサイクロン" と呼ばれ、これはその今年度型の最上位機種ということになります。

その特徴としては、日立製最上位ヘッド "ジェット吸引スマートヘッド" を装着しており、フィルター性能も家庭用掃除機としての最高性能の一つです。

サイクロン部に関しても、昨年度からは一応まともな遠心分離構造を備えていますが、それは決して本格的なものではなく、数年遅れでシャープやパナソニックと似た中途半端な物を採用したに過ぎません。

評価はおおよそのものです。


▼ ヘッド 5 (5)

この「CV-SC700」のヘッドは、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれる日立製の最高性能ヘッドです。

これは、日本製の大抵の他メーカー製の最上級ヘッドと同様に、フローリングの菌までその内蔵回転ブラシで拭き取る性能があるとされています。

また、ヘッド幅が30cmと例外的な広さを誇り、一度に広い面積を掃除できるよう作ってありますが、カーボン素材を用いることと、余分なスペースをなくすことでの軽量設計となっています。

以前のモデルでは、ヘッドを手前に引く際には、どんな掃除機にも吸込口後方に大抵付いている起毛部分(※これは、吸い逃したゴミ、及び回転ブラシが後方に弾いたゴミを逃さないようにする為の物)が邪魔をし、ゴミを吸い込めないことがあるそうですが、このヘッドではそれを解決する為に、起毛部分がヘッドを引く際にのみ回転する日立製だけとなるローラー式となっています。

2015年度からはそれに加え、ヘッド内に "ワイドプレート" と "サンクションキーパー" という部品でもう一つ(横長の)小さなヘッドがあるような状態とすることで、床面に対する吸引力を高めています。

これにより、この2015年度型の "スマートヘッド" は、"ジェット吸引スマートヘッド" と呼ばれることとなりました。


また、このヘッドは付け根の可動部が柔軟に動く為、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等の狭い場所に押し込めたり(「クルッとヘッド」)、ヘッドと延伸管をほぼ水平にまで出来ることで(「ペタリンコ構造」)、高さ8cm以上の家具の下等のすき間を、掃除しやすく出来ています(公式サイトによるヘッド機能の解説)


▼ 吸込仕事率 3 (3)

この「CV-SC700」の吸込仕事率は、430W〜約60Wです。どちらかと言うと低いですが、一応の遠心分離をウリとするタイプとしては、標準的な範囲内です。


▼ 清掃力 5 (5)

吸込仕事率は若干低いですが、"ジェット吸引スマートヘッド" は工夫されていて、よく吸うということで・・・。


▼ サイクロン部(吸引力持続) 2.5 (2.5)

"パワーブーストサイクロン" は、構造的に遠心分離力が限られる1段サイクロンでしかないので、吸引力持続性能も高いということはないはずです。その為、メインフィルターには細かなチリが多めに届くはずです。

このシリーズには、それを補うために他メーカーの同様の構造の製品と同じように、フィルター詰まり防止用の振動式チリ落とし機構が設けられており、このシリーズの場合それは手動式です。その為、使用者が時々レバーを操作して、フィルターを振動させてやる必要があります。

しかし、そのフィルター振動機構ですが、シャープ製の「EC-PX210」やパナソニック・プチサイクロンが抓んで回すダイヤル式で、全体を比較的満遍なく振動させられるのに対し、この日立製パワーブーストサイクロンに採用されたのは、シャープの「EC-QX310」や東芝・トルネオミニに採用されている、円状のフィルターの片側に偏った位置にある振動用レバーを左右に動かすだけの、廉価的な仕組みです。そして、それを動かした時の手応えも薄いので、何とも頼りありません。

このシリーズでは "約1か月ゴミ捨て不要" だとされていますが、これらにおいてはそのゴミが溜まるダストカップ部こそが唯一の遠心分離部です。ゴミを溜めたままだと、その部分で空気が回る速度が落ちてしまいますので、サイクロン掃除機として好ましくありません。

また、吸込仕事率の最低値が60Wとなっていますが、その場合の消費電力は190Wとなっています。パナソニック製プチサイクロンや、シャープ製スクリュープレスサイクロンが、吸込仕事率50〜60Wで消費電力は300Wあることから、吸気の渦を作るのに多くのパワーを割いているとは考えられず、遠心分離力はあまり高くないと推測されます。


しかし、良い部分もありまして、サイクロンの中心部の筒型フィルターの網目が、シャープ製「EC-PX210」やパナソニック・プチサイクロンと並んで、目の細かいものとなっています。これにより、メインフィルターにまで届くチリが少なくなりますので、吸引力の持続には有利です。


▼ ゴミ圧縮 3 (3)

このシリーズでは、ダストカップは下へ向かってのすそ広がり形状となっており、また、内部中央の筒部分は下へ向かって尖った形状となっています。それらにより、ゴミを回転させながらダストカップ底部に押し付けることが出来るので、溜まったゴミは圧縮され、約1ヶ月間ゴミ捨てが不要だとされています。

しかし、似たような仕組み・吸込仕事率のパナソニック製パワープレスサイクロンでは、ゴミは最大約5分の1に圧縮できる程度です。

また、専用スクリューによるゴミの圧縮をウリとするシャープ製のスクリュープレスサイクロンでは、やはり1ヶ月に一度のゴミ捨てで良いとされますが、これは約15分の1にまでゴミを圧縮する結果だとされています。

なので、この日立製の性能は不可解です。特別な構造がないのに、本当にこの性能であれば、相当な発明だと言えるかもしれません。


▼ ゴミの捨てやすさ 2 (2)

これはゴミ捨て時にはダストカップ底部が下に開く仕組みですが、底が開いた際には、ダストカップ中央に設置されている筒部分がバネ仕掛けで下に動くことで、溜まったゴミを下に押し出し、楽に捨てることが可能だとされています。

これは約1ヶ月ゴミ捨て不要だと言われていますが、しかし、それはダストカップに溜まるゴミのみの話で、メインフィルターに到達し、フィルター振動で下に落ちるチリは、東芝のトルネオミニと同じでダストカップには落ちません。なので、基本掃除毎にダストカップを取り上げてフィルターを取り外し、ダストカップごとひっくり返して叩いて落とす、もしくはフィルターを外してゴミ袋の中等で振動させて、チリを捨てなければなりません。

なので、"約1か月ゴミ捨て不要" というのは、詐欺的ですし、そもそもフィルター部のゴミを別で捨てなければならないことが、このシリーズの宣伝からは省かれています。


▼ ダストボックスの容量 3 (3)

このシリーズのダストボックスの容量は0.4Lなので、平均的です。

これは一応小型機だとされますが、実際は中型機ですので、それ位あってもおかしくはありません。


▼ フィルター 5 (5)

この「CV-SC700」のフィルターは、高性能で有名なULPAフィルター相当ですので、性能は家庭用掃除機として最高レベルです。0.3μm以上のホコリの約99.999%を捕塵可能だとされています。

(ULPAフィルター[ULPA規格のフィルター]と呼ばれる為には、フィルターの単独性能として、0.15μm以上のホコリの99.9995%以上の集塵率が必要です。しかし、日立製の場合には、ドイツ・SLG社によって、本来の基準より大きなサイズのゴミを用いての、フィルター単独ではなく実機を用いた計測が行われている為、控えめな数値が出ているようです)


▼ 本体重量 3 (3)

この機種の本体重量は3.6kgなので、確かにサイクロン式としては小さめですが、紙パック式も含めると、普通程度だと言うことが出来ます。

ただし、本体前部・ホース付け根部に装着可能な "サッとハンドル" を装着すると、100g増しとなります。


▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 2 (2)

それらの重量は1.6kgですので、全体としては重めですが、モーター式回転ブラシの機種としては普通程度です。

それでも、ヘッドの回転ブラシの軸部分と、延伸管とに軽量カーボン素材を用いると共に(「カーボンライト」)、以前のタイプより細くて軽く、表面が滑りやすくて取り回しの良い "スマートホース" を用いることで軽量化がなされているのが、この機種のウリの一つとなっています。

ただし、日立製は手元ブラシ、もしくは延伸管先端ブラシとして使う "クルッとブラシ" が後付け式となっており、これが実は150gもあります。なので、もしかすると合計で1.8kg近くあるかもしれません。これだと割と重めとなります。勿論、外しておけば大丈夫ですが。


▼ 運転音(最大値) 5 (5)

この機種の運転音は、55〜約50dBですので、現行型としてはトップクラスの静かさとなります(⇒「音の静かな掃除機」)


▼ エコモード 3 (3)

この「CV-SC700」のエコモード(自動パワー制御)は、"床面検知" と、恐らくはその仕組みを応用した、ヘッドの操作速度等を検知する "操作力検知"、そしてヘッドを止めていると自動でパワーダウン⇒停止へと至る "アイドリング&ストップ" から成ります。

"床面検知" と "操作力検知" を用いて6分間フローリングを掃除した場合、「強モード」のみで同等の条件下を掃除した場合と比べて、最大約75%の省エネになるとされています。しかし、それは要するに、「強」と「中」が殆ど使用されず、ほぼ「弱」のみで運転された場合との比較を表しているはずです。

メーカーサイトには、エコモードと「強」で掃除した場合とを比べて、"ごみ取れ性能は同等です" とありますが、差は勿論あるはずです。


▼ 付属ブラシ類 3.5 (3.5)

付属ブラシ類は、通常のすき間ノズル("すき間用吸口")と、延伸管先端部か手元グリップ部のどちらかに接続して使うブラシ、"クルッとブラシ" 、そして高所・狭所用ノズルの "ワイド曲が〜るロング吸口" となります。

日立製の高額ヘッドは、ヘッド付根の関節が横に90度曲がることで、比較的狭い場所も掃除出来ます。なので、延伸管先端部はそちらに任せて、"クルッとブラシ" に関しては、手元グリップ部に付けておくのが、普通なのではないかと思います。

また、すき間ノズルについてですが、別売の "すき間用吸口ホルダー" なしでは、本体・延伸管に取り付けて保管することが出来ません。勿論、そのようなことはどちらでも構わなければ、問題はありません。

適応型番:CV-SU7000-047/価格(税別):324円


▼ 特記項目 "サッとズームパイプ" 4 (4)

この「CV-SC700」を含む、日立製の中程度以上の機種には、"サッとズームパイプ" という、足でヘッドを抑えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能があります。これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっています。


▼ 価格 2 (2)

この機種は、前年度型の値動きから見て、最安時には35,000円程度になるものと思われます。


▼ 総合評価 3.5 (3.40)

この「CV-SC700」は排気性能が非常に高く、運転音もヘッドも優秀で良いのですが、サイクロン部に関してはトルネオの廉価版シリーズのトルネオミニとほぼ同一です。

ただし、トルネオミニのダストカップが本当のカップ型であるのに対し、こちらの場合は、ボタンを押すと底が開くタイプで、ゴミを落としやすくするための仕組みも付いています。しかし、根本的にカップ型の方がゴミをそっと捨てることが出来るので、そちらの方が排気のきれいな掃除機には相応しいでしょう。

また、約一か月ゴミ捨て不要だと言われていますが、吸引力を持続させようと思えば、毎回フィルター部に溜まるゴミを捨てなければなりません。フィルター部に溜まるチリがダストカップに落ちるタイプであれば、毎回捨てる必要はありませんので、その分不便ですし、詐欺的に感じます。

ただし、酷い物という程でもありませんので、日立ファンの方には良いかもしれませんし、実のところ、パナソニックの(少しでもまともな)サイクロン式に中型機がないので、その分で命拾いしていると見ることもできます。

違い当「CV-SC700」と、前年度型「CV-SA700」との違い


CV-SA700CV-SC700
発売日2014年7月19日2015年7月18日
ヘッド四方向吸引スマートヘッドジェット吸引スマートヘッド
吸込仕事率420〜約50W430〜約60W
消費電力950〜約190W960〜約190W
運転音54〜約49dB55〜約50dB
ヘッド+延伸管
+ホース重量
1.5kg1.6kg
サイクロン部の
水洗いの容易さ

前年度型との大きな違いは、ヘッドの変更です。

前述の通り、新ヘッドでは内部に、"ワイドプレート" と "サンクションキーパー" という部品でもう一つ(横長の)小さなヘッドがあるような状態とすることで、床面に対する吸引力を高めています(参考⇒家電Watch1,2)

しかし、ヘッド内に余計な仕切りを設けることで、回転ブラシが掻き上げたゴミを吸込みにくくなっているはずですし、特に、大きめのゴミは仕切りの下を通過しにくいはずです。

つまり、改良と言っても、良い事ばかりではないはずです。

また、前年度の "四方向吸引スマートヘッド" は、両側面に "サイドブレード" という部品を備えることで、側面からの吸引に強いのをウリとしていました。

今年度型では、せっかく開発したその部品をなくしてしまいましたが、公式サイトの「強い吸引力」という項目の写真を見るに、それでも "ジェット吸引" の効果によって側面に関しても性能は上がったようです。


ヘッド以外では、モーターも回転翼の改良とサイクロン部の形状の最適化を受け、吸込仕事率が10W上がっています。しかし、これに拠るのか、ヘッドの改良に拠るのかは分かりませんが、運転音も1dB上がってしまっています。

サイクロン部の水洗いに関しては、今回分解できる部品点数が減らされ、単純化されています。

ただ、水洗いは別にしなくても使用には差し障りありませんが、そうやって使いたい方には、良い変更なのではないでしょうか。

比較パワーブーストサイクロン 下位機種「CV-SC500」との比較


CV-SC700CV-SC500
吸込仕事率430W〜約50W420W〜約50W
運転音55〜約50dB56〜約51dB

当機種と下位機種「CV-SC500」とは、吸込仕事率で10W運転音で1dB違うだけです。

…ここまでして取り扱い機種を増やしたいのかという、謎のラインナップ設定です。

 価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。


CV-SC700 パワーブーストサイクロン
日立 【自走式ブラシ搭載】 サイクロン掃除機「パワーブーストサイクロン」 CV-SC700-N ディープシャンパン楽天
amazon [レビュー有]
楽天レビュー:レビュー(_件)を参照
ヘッド形状:ジェット吸引スマートヘッド(自走式)
目詰まり対策:手動式フィルター振動機構
吸込仕事率:430W[エコ自動モード有]
本体重量:3.6kg/ 全体重量:5.2kg
運転音:55〜約50dB
排気方法:上方排気
持ち手(本体):固定式×2
すき間ノズル収納:なし
色:ディープレッド(R)、ディープシャンパン(N)
ULPAフィルター(と同等)仕様
ワイド曲が〜るロング吸口付属


前年度型

CV-SA700 パワーブーストサイクロン
日立 サイクロン式クリーナー(自走パワーブラシ)ディープレッド【掃除機】HITACHI パワーブーストサイクロン CV-SA700-R楽天
amazon [レビュー有]
楽天レビュー:レビュー(_件)を参照
ヘッド形状:スマートヘッド(自走式)
目詰まり対策:手動式フィルター振動機構
吸込仕事率:420W〜約50W[エコ自動モード有]
本体重量:3.6kg/ 全体重量:5.1kg
運転音:54〜約49dB
排気方法:上方排気
持ち手(本体):固定式×2
すき間ノズル収納:なし
色:ディープレッド(R)、ディープシャンパン(N)
ULPAフィルター(と同等)仕様
ワイド曲が〜るロング吸口付属


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CV-SA700 パワーブーストサイクロン(前年度型)

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関連サイト:

CV-SC700(R)(N)|日立公式サイト

サイクロン式クリーナーCV-SC700、CV-SC500、CV-SC300 新商品ニュース|日立公式サイト