米・シリコンバレーに本社があるNeato Robotics(ネイト・ロボティクス)社から、2014年10月3日に日本新発売となった、高価格ロボット掃除機「Botvac(ボットバック)85/75」です。
このメーカーは、2005年に設立され、2010年に製品を発売したばかりですが、アメリカでのロボット掃除機のシェアは、ルンバに次ぐ2位(4年間で販売数40万台の実績)となっています。
とは言え、ルンバ(iRobot社)のシェアが83%で、こちらは12%(日経ビジネスオンライン)ですので、2位と聞かなければ、"どうにか生き残っている弱小メーカー" という印象は免れ得ません。
しかし、この2社で95%!?ということになるので、アメリカでまともに商売が出来ているのは、現在この2社だけということになるようです。
▼ ニートロボ
"初代ヒッキー" こと、宇多田ヒカルさんもツイていないな、と思いますが、このメーカーも、普通に読めば "ニート" で、正式にも "ニート" です。
それがロボットなので、何と "ニートロボ" ということになり、ええっ!?そんなものをロボットにしなくても!と思わずたじろぎます。
しかし、この "neato" というのは、本当は "neat" のことで、意味は "きちんとした" とか "素敵な" というようなものなのです。ただ、辞書を見てみると、"neato" の表記だと、"生きの"、"ストレートの" という意味が指定されていますので、そういったニュアンスのようです。
一応、日本では意味が真逆なので(笑)、お気の毒な話です。
本当の話として、これがどうにも気になるので、日本では無理矢理「ネイト」という発音を採用するに至ったという話です。
実はこれ、“ニート”という日本語に対してあまり良いイメージがないというところから、あえて“ネイト”としました。ニートがおうちで掃除してくれるというのは少し面白いとは思ったんですが……(家電Watch)
"Robotics" に関しては、これは純粋な英単語で、"ロボット工学" を表しています。
なので、会社名は、一応 "ストレートなロボット工学" ということになります。
また、製品のシリーズ名「Botvac」は、「Robot Vacuum Cleaner」のことです。
英語では掃除機を、単に "クリーナー" とは呼ばず、真空を意味する "Vacuum" を付けます。なので、そのシリーズは、単に日本でいうところの「ロボット掃除機」を、略語・俗語化しただけの名前ということになります。
「Botvac」は、結局「"ストレートなロボット工学" 社が作ったロボット掃除機」と、単にそれだけの意味のようです(笑)。
▼ 掃除方式
この「Botvac85/75」の掃除の方式としては、ロボット自ら室内の地図を作製しつつ、自らの位置情報を記録して行くことで、原則同じ場所を重複して掃除しない、"システムナビゲーション" 型ということになります。
その為に使用されている技術は、Google Carにも採用されている「SLAM」というもので、それは韓国LG電子ホームボットや、2015年春発売予定のダイソン360 Eyeでも採用されています。
これは室内を把握する為に、他社のような光学カメラではなく、レーザーを使っており、これが1秒間に5回転しつつ、30回(1分間に1,800回)室内をスキャンする仕組みとなっています。
また、この製品は、ロボット掃除機としては唯一、本体前面が直線状のD型デザインを採用しています。
それにより、本体前部に幅27.6cmもの異例の長さの吸引口+回転ブラシを設置することが可能となっています。これは、部屋の角まで掃除をしやすい形状であると共に、他社製より一度に広い面積の掃除が可能です。
そしてこれらにより、「Botvac」では、ルンバ等一見ランダムに動くタイプの、約4分の1の時間で掃除が終わるとされています。
ただし・・・そもそもなぜロボット掃除機の多くが円形なのかと言うと、狭い場所に入り込んでもその場で回転することで方向転換をし、脱出をしやすいからです。幾ら部屋の角を掃除しやすくても、狭い場所が苦手となってしまっては、自律型ロボットとして欠点を抱えることになります。
また、掃除中にドアが開いているのをセンサーが見つけると、掃除中の部屋の掃除完了後に、そのドアから次の部屋に移動し、掃除を続けます。
そして、掃除中にバッテリーが尽きかけると、その場所を記憶した上で充電台に戻って充電をし、その完了後に中断地点に戻って掃除を再開します。
1度の掃除中に充電は2度まで可能で、最大126畳を清掃可能だとされています。なので、この機種の1度の充電での掃除可能面積は42畳程度であるはずです。
それだけの面積を一度に掃除可能なのであれば、日本の一般的な家屋で、掃除途中での充電が必要とされることは、まずあり得ないでしょう。
ルンバ等の約4分の1の所要時間、最大126畳等という数値からも分かるように、実のところ、この「Botvac85/75」が採用する "システムナビゲーション" は、原則広い面積を掃除する為にある掃除方式です(※ダイソンの「360 Eye」のみ、強吸引力を維持することでバッテリーが持たない為)。
1個所に付き、1度の通過を前提とする為、吸引力も強めではあるらしいものの、普通のヨコ型掃除機の場合ですら、大抵ヘッドを前後させてゴミを掻き取ります。にもかかわらず、吸引力の弱いコードレス掃除機で、たった1度サッと通過するだけで、十分な掃除が出来るということはまず考えられません。
なので、ルンバのように1箇所を角度を変えつつ最低4度通過するというやり方には、それなりの妥当性が存在しています。
室内が広い外国では、ルンバのように一見ランダムに動く "ランダムナビゲーション" 型では、掃除可能範囲が狭すぎるという問題が生じ得るにしても、室内が狭い日本では、そういったことは少ないはずです。
東芝の旧モデル・スマーボでは、この「Botvac85/75」と同じ "システムナビゲーション" を採用していましたが、2014年度型のトルネオロボでは、"ランダムナビゲーション" に変更となっています。
なので、そのやり方は原則として、日本ではあまり必要ないと考えるのが妥当であるはずです。
また、これはボディがD型なので、先にも述べたように、狭い場所で回転して方向転換をするのに適していません。
つまり、この「Botvac(ボットバック)」シリーズは、広くてそれ程ゴチャゴチャしていない場所向きであるはずです。確かにアメリカやヨーロッパでは、そういったご家庭の方が多いのではないでしょうか。
しかし、勿論日本においては事情が違います。日本の家屋は狭く、また、室内では靴を脱ぐので床はあまり汚れておらず、色々と物を置いてしまう方も多いはずです。そしてそのせいで、ルンバですら行動不可能な室内環境も多いはずです。
勿論、何かこれを選ぶ理由があるのであれば、別に問題ないと思います。しかし、なのでルンバやココロボ、トルネオロボでも良いのであれば、それらを軸に考えるのが良いのではないでしょうか。
▼ その他の特徴
◆ バーチャルウォール
ルンバには、赤外線で侵入不可能な壁を作る "バーチャルウォール" があり、それはロボット掃除機専用の壁の作り方として一般的ですが、Neato(ネイト)社では、専用の磁気テープを床に敷くことで、侵入不能エリアを作る方法を取っています。
"バーチャルウォール" の赤外線は、実は一直線ではなく、放射状に放出されていますので、ちょうど良い角度で設置するのが意外と難しいです。
また、ルンバの場合、その発生装置の周囲30〜40cmが円状に侵入不能ともなりますので、掃除範囲が不要に狭まって厄介です。
しかし、磁気テープであれば、それらの欠点が生じないので、必要な方には良いのではないかと思います。
テープであれば電池も必要ありませんが、ただ、敷きっ放しに出来ず、毎回敷設と片付けをするとなると、微妙に面倒かもしれませんが。
◆ フィルター
これに標準付属するフィルターは、ネイト社用の標準フィルターではなく、高性能フィルターとなっています。それは、0.3μmのホコリに対応していますので、高性能フィルターの代名詞・HEPAフィルターか、それに準じる性能であるはずです。
もっとも、ルンバ800,700とシャープ・ココロボは、これと同程度のフィルターを採用していますが。
◆ 段差乗り越え能力
「Botvac」の段差乗り越え能力は、ルンバと同じで業界最高の2cmです。これは一応、1流の証ということになります。
◆ ソフトウェアのアップデート
ネイト社では、ロボット本体にUSB端子を備え、パソコンを介することでインターネット経由で本体のプログラムをアップグレードすることが可能です。これに関しては、ココロボもインターネットからSDカード、もしくはUSBメモリにプログラムをダウンロードし、それをココロボ本体に挿し込むことで、アップグレードが可能となっています。
ルンバの場合は、修理か有料メンテナンスの際にそうすることが可能で、トルネオロボには何故かそういう話はありません。
▼ Botvacの85と75、及び80間での違い
Botvacの「85」と「75」、及び「80」は、実は本体はボディカラー以外は同一です。そのボディカラーも、レーザー発振部を覆う丸い "帽子" 部分が違うのみです。
「80」は例外品で、通販専用モデルとなっています。
85 | 80 | 75 | |
回転ブラシ | シリコンブレード, 2重らせんコンボ (5,378円) | シリコンブレード, 2重らせんコンボ (5,378円) | シリコンブレード |
交換用フィルター | 2枚(2,678円) | 0枚 | 1枚(1,339円) |
ボディカラー | ラグナブルー | マジェスティック パープル | ブライトライム グリーン |
定価(消費税8%) | 6万9984円 | 6万8904円 | 6万4584円 |
定価差額 | 5,400円 | 4,320円 | ― ― ―(基準) |
+αの付属品合計額 | 6,717円 | 4,039円 | ― ― ―(基準) |
お得となる金額 | 1,317円 | -281円 | ― ― ―(基準) |
「85/80」に付属する "2重らせんコンボブラシ" は、主にペットの毛を想定したブラシだと公式サイトには書かれています。
※左:シリコンブレード /右:2重螺旋コンボ
しかし・・・
「シリコンブレードブラシは、叩いてゴミを浮かせ、そのまま吸い込むためのものですので、じゅうたんでは使えますが、フローリングでは使えません。フローリング主体の家を掃除する場合は、2重らせんコンボブラシを使ってください。上位モデルび『ボットバック 85』には両ブラシがついているので問題ありませんが、下位モデルの『ボットバック 75』にはシリコンブレードブラシしか付いてません。フローリング主体の家の方は確実に『ボットバック 85』を選んでいただきたいと思います」(ITmedia LifeStyle)
等という、他には書かれていない重要な話を、同社CEOのマリーニ・ジャコモ氏が自ら語っているのを見つけました。
何故これが公式サイト等に書かれていないのかがあまりに不思議ですが、そういう訳ですので、普通のご家庭では "2重らせんコンボブラシ" が必要であるはずです。
ただし、これには別売がありまして、「75」を買ってそれを追加購入した場合には、「85/80」との価格差は、多くてもフィルター1枚分程度分であるに過ぎません。
なので、黄緑色が好みであれば、「75」でも良いのではないでしょうか。
▼ コーボルトジャパン(フォアベルク社)「VR100」との比較
ネイト・ロボティクス社の製品は、旧型で日本未発売の「XV-11」が、ドイツの絨毯&掃除機メーカー・フォアベルク社にOEM供給・改良されて「コーボルトVR100」となっており、実はそれが日本でも正式販売されています。
新製品である「Botvac」は、その「XV-11」のマイナーチェンジ的製品に過ぎず、それらは大雑把に言えば同じ物です。
しかし、「Botvac」では、回転ブラシの幅が増すと共に、より壁に近い位置に設置されているのに対し、「コーボルトVR100」は、それらの中で唯一上級バッテリーのリチウムイオンバッテリーを採用しています。
リチウムイオンタイプは、小型・軽量で、しかも継ぎ足し充電に強いので、中途半端な充放電を繰り返すことになるロボット掃除機には、特に打って付けです。
コーボルトに搭載されたそれの場合には、充電可能回数も通常の1.5倍程度の高性能品ともなっています。
価格は1万円違いますが、バッテリーにそこまでの差がある訳ではありませんので、コーボルトは旧型であることも含めて、やはり少し割高です。
Botvac85/75 | VR100 | |
型式 | 最新型 | 旧型改良版 |
回転ブラシ | シリコンブレードブラシと 2重らせんコンボブラシ とで選択(85) シリコンブレードブラシ(75) | 2重らせんコンボブラシのみ |
バッテリー | ニッケル水素 6,458円 (中級バッテリー) | リチウムイオン 10,800円 (上級バッテリー) |
充電可能回数 | 約500回 | 約800回 |
充電/稼動時間 | 120〜180分/60〜90分 | 90/60分 |
対応床面積 | 絨毯42畳/フローリング不明 | 絨毯46畳/フローリング74畳 |
0.7L | 0.6L | |
回転ブラシ幅 | 27.6cm | 23cm |
回転ブラシの側面 と壁面との距離 | 1.0cm | 4.0cm |
回転ブラシの前面 と壁面との距離 | 2.7cm | 2.54cm |
本体サイズ | 幅33.5×奥行32.1×10cm | 幅34×奥行34×高さ10cm |
重量 | 4.1kg | 3.7kg |
定価 | 6万9984円(85) 6万4584円(75) | 81,000円 |
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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