「VC-S214」は、2014年9月1日に東芝から発売となった新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "トルネオV(ヴイ)" と呼ばれる、同社製サイクロンシリーズの1機種で、これはその廉価版的な位置付けとなっています。
これは遠心分離力の高い本格サイクロンであることと、小型機であることをウリとしていますが、その反面、吸引力の目安を表す吸込仕事率は200Wと、国内有名メーカー製としては異例の低さとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (3)
この「VC-S214」のヘッドは、非自走のモーター式回転ブラシを備えた "軽量コンパクトパワーヘッド" です。
これは、"軽量コンパクト" と名付けられているだけに、若干横幅が狭く出来ています。
モーター式の回転ブラシは絨毯に有効ですので、ご自宅に絨毯がある場合には、出来ればやはりこの辺りのランクの物が欲しい所です。
これは、ヘッドと延伸管を水平にまで出来ることで、家具の下等のすき間を掃除することが可能な "床ピタ設計" ともなっています。
▼ 吸込仕事率 (1)
この型番の吸込仕事率は200Wです。この数値は、遠心分離力がウリとなる本格派のサイクロン掃除機としては標準的ですが、国内有名メーカー製の掃除機全体を見ると、かなりの低さということになります。
▼ 清掃力 (2)
海外の掃除機メーカーでは、200W前後の吸込仕事率が標準ですので、この機種の200Wが一概に問題だとは言えません。
しかし、海外製は、ヘッドと床のすき間を最低限にして床に吸引力が集中する設計になっているのに対し、この東芝製のヘッドでは、そうはなっていません。これにおいても他の日本メーカーと同様に、ヘッド前の米粒等固形物を吸いやすいよう、床とのすき間を多めに開けた設計となっているので、原理的に無理があると思えます。
もっとも、ヘッドには回転ブラシが付いているので、元々「弱」運転でも良いと言われるフローリング上では特に問題ないはずですし、絨毯上でも、モーター式の回転ブラシが絨毯表面のゴミは掻き取るはずですので、その面では問題はないはずです。つまり、絨毯内部に入り込んだチリには弱いだろう、という話となっています。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
この系統のサイクロン部は、"バーティカルトルネードシステム" と称されており、ダイソンと同じく大きなゴミを遠心分離する大きなサイクロンと、2段目としての小さなゴミを遠心分離する12個の小サイクロンから成っています。
※バーティカルトルネードシステムの解説動画。再生してみて下さい。
遠心分離力は、数を増やしてでも、小径のサイクロンを使用する方が高まるとされており、ダイソンDC63では、上下2層の計24個の小サイクロンを、前作のDC48では計10個を採用しています。この「VC-S214」を含むトルネオVでは、計12個の小サイクロンを採用していますので、その数だけを見れば、遠心分離力はそこそこのはずです。
しかし、ダイソンでは消費電力が1,150Wある、通常の1,000Wより15%も高いモーターを使用しているのに対し、トルネオVシリーズでは、逆に15%低い850Wのモーターを使用しています。
ダイソンでは、高性能・高回転の上級モーター "デジタルモーター" を使用しており、非デジタルの日本製と比べて性能は高いはずで、少なく見積もってもその消費電力分、遠心分離力は高いはずです。
東芝とダイソンとのサイクロン部での詳細な性能差については、ダイソンがそのサイクロン部で発生する遠心力を、DC36では29万G、DC46では36万Gと公表しており、それ以降のDC48とDC63では非公表ながら、それに近い数値だと推測できます。しかし、東芝側では全く非公表の為、具体的な比較は不能となっています。
ダイソンの2段サイクロン方式(ルートサイクロンテクノロジー)は、特許で守られているので、他メーカーは真似できないでいるはずです。しかし、東芝がダイソンの特許を回避できた要因として、ダイソンでは、複数の小さなサイクロンで分離したゴミを、ダストカップの中心部の空洞を通して落とす構造であるのに対し、東芝ではダストカップの外延部に溜め、下には落とさない構造となっていることが挙げられるはずです。
この点は、そこに溜まるゴミを再びサイクロンの渦に巻き込みかねない問題と、その部分のゴミの、ゴミ捨ての際の若干の扱いづらさに繋がっています。
尚、トルネオシリーズのサイクロン部の正式な名称は、外からゴミの回るのが見えるダストカップのサイクロン部は、"デュアルトルネードシステム" 。トルネオVにある、ダストカップ上部に追加された12個の小サイクロン部は "バーティカルトルネードシステム" となっています。どちらもカッコ良い呼び名ですが、これらは単なる自称に過ぎません。
また、東芝のこのサイクロンのシリーズでは、ダイソンとは違ってサイクロン部の分解・洗浄が出来るということになっています。
しかし、ユーザーの手で簡単に分解可能な構造だと、やはり微妙な空気漏れや騒音の増加に繋がるはずですので、性能面から見ると、あまり良くないことであるかもしれません。
サイクロン掃除機においても、必ず一般的なフィルターが付いていますので、掃除機内部がホコリで汚れていても、そのホコリが外へ漏れ出ることは、フィルター性能の範囲において原則としてありません。
なので、このトルネオVにおいても、別にずっと洗わずにいても、何の問題もありません。
▼ ゴミ圧縮 (3)
この系統のゴミ圧縮は、ゴミの回るのが見える大サイクロン部の下部で、サイクロンの回転の余波でゴミが転がり続けている内に、約5分の1になるとされています。
小サイクロン部の下部に溜まる細かなチリも、サイクロンの渦で下に押しつけられるせいか、再び吸われずにそこに残っている分は、ある程度固まっています。
▼ ゴミの捨てやすさ (2)
この「VC-S214」を含むトルネオシリーズでは、ダストカップは、底が下に開くダイソン方式とは違って普通のカップ型ですので、そっとゴミを捨てることが可能です。しかも、確かにある程度ゴミが圧縮されて塊となっていますので、捨てる際にもチリが舞いにくいです。
ただし、小サイクロンで遠心分離された細かなチリは、小サイクロンの直下にくっ付いていますので、お手入れブラシかティッシュか何かで、時々掃ってやる必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (3)
この系統のダストボックスの容量は0.4Lとなっています。一応は、平均的な一軒家全体を掃除できるだけの容量となっているはずです。
▼ フィルター (3.5)
この「VC-S214」のメインフィルターは、0.5μm以上のホコリの99.9%を捕塵可能な "空気清浄・脱臭フィルター" で、その集塵性能は比較的高めです。
また、排気口部のフィルターとして、抗菌・ウィルス抑制効果のある "イチョウ葉エキス入りフラボノイドフィルター" と "脱臭フィルター" も装着されています。
実際にどれだけの効果があるかはともかく、脱臭力のあるフィルターが2枚付いていますので、それに関しても基本的に優秀なはずです。
▼ 本体重量 (4)
この型番の本体重量は、3.2kgです。実際小型ではあるものの、通常サイズ機扱いされる製品の中では相当軽いです。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
この型番のそれらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度です。しかし、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドとしては若干軽いです。
▼ 運転音(最大値) (2)
この型番の運転音は、64〜約58dBです。これは単に普通のうるさい掃除機といったレベルです。ただ、消費電力が少ない割には、数値は悪いです。
▼ エコモード (2)
この「VC-S214」のエコモード(自動パワーコントロール)は、
- 床面識別
- 節電アイドリング機能
- 及び、強モードの不使用
の2+1からなっています。
"床面識別" は、回転ブラシにかかる負荷により、絨毯とフローリングとを識別する機能のことです。絨毯と識別した場合には、高い吸引力を選択します。
"節電アイドリング機能" とは、ヘッドを浮かすと1秒でパワーを低減⇒6秒で一時停止⇒その状態を60秒継続で電源OFFとなる機能のことです。
最後の "強モードの不使用" に関してですが、この型番の消費電力は850W(強)〜約300W(弱)なのですが、実はエコモード時には最大消費電力は500Wに制限されます。
この型番には何と「中」モード がないのですが、そのエコモード時の最大吸引時が、事実上の「中」モードに相当するはずです。
この型番のエコモードは、消費電力を最大44%削減するとされていますが、「強」を使用しないだけで、既に最大42%の削減が達成されています。こういった方法をとるのは、他メーカーでは日立の中位機種だけですので、さすがに感心できません。
結局、絨毯上では「強」を使い、フローリングや畳上では、「エコモード」を使って欲しいということなのでしょうか。何とも中途半端です。
また、ヘッドを浮かせると吸引が止まるアイドリングストップ機能も、エコモード時にしか働かない為に、必然的に最大吸引時には一切使えない設定となってしまっています。
これらはやはり、よく考えず、作り込んでいないことを意味しているのかもしれません。
▼ 消費電力 (3.5)
先程も述べたように、トルネオVの消費電力は、850W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを載せて遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。なので、このシリーズの場合消費電力が少ないからと感心することは出来ません。
▼ 付属ブラシ類 (3)
当「VC-S214」には、手元ブラシと延伸管先端部ブラシ(併せて「2WAYブラシ」)に加えて、通常のすき間ノズルのみが付属しています。
ただし、すき間ノズルを本体に収納する、もしくは延伸管に取り付ける仕組みがないので、非常に残念です。
▼ 価格 (3)
この型番は、今年度初登場となるトルネオVの廉価バージョンですので、最安値に関しては何とも分かりません。しかし、それでも発売後1年近く経てば、2万円半ば程度になるかもしれません。
▼ 総合評価 (2.8)
この「VC-S214」は、サイクロン部は日本メーカー製としては優れていますが、その分吸込仕事率は低く、ヘッドはモーター式回転ブラシではあるものの、下級品ですので物足りません。
しかし、フローリング用としてなら十分のはずなので、その用途であれば、悪くはないかもしれません。
※前年度型未存在
…2014年度は、トルネオVコンパクト・シリーズがラインナップから消えましたので、これの前年度型は事実上「VC-S23 トルネオVコンパクト」ということになるようです。
そちらは本体が300g軽いですが、吸込仕事率が20W=1割も低く、サイクロン部も劣りますので、あまり好ましい感じではありません。
東芝・トルネオ 上・下位機種との比較
VC-SG314 (トルネオV) | VC-S214 (トルネオV) | VC-C4 (トルネオミニ) | |
ヘッド | イオンカーボンヘッド | 軽量コンパクト パワーヘッド | |
自走式回転ブラシ | 〇 | × | |
マイナスイオン プレート | 〇 | × | |
吸込仕事率 | 200〜約50W | 290〜約20W | |
消費電力 | 850〜約300W | 850〜約120W | |
本体/全体重量 | 3.2/4.7kg | 2.2/3.6kg | |
運転音 | 64dB〜約58dB | 63〜約58dB | |
フィルター | ・排気清浄・脱臭 ・フラボノイド ・脱臭 | ・高集塵プリーツ ・フラボノイド | |
ゴミ残しまセンサー | 〇 | × | |
集塵容積 | 0.4L | 0.25L | |
手元グリップ | らくわざフリーグリップ(最新) | 新らくわざグリップ |
上位機種「VC-SG314」との主な違いは、ヘッドと、赤外線で吸気内のホコリを見分ける "ゴミ残しまセンサー" ですが、基本的には同型です。
尚、当機の型番は「VC-SG214」ではありませんが、省略されている「G」は、ゴミ残しまセンサーを表しているはずです。
下位機種「VC-C4」は、更に小型の "トルネオミニ" となります。そちらは本格サイクロンではなく、多くのホコリをフィルターで取り除きます。
また、本格的な空気の渦を作らないせいで、これらトルネオVよりも吸込仕事率は高いです。
フィルターに関しては、集塵性能は全く同等ですが、トルネオVでは脱臭力にも力が入っています。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・VC-S214 トルネオV | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:軽量コンパクトパワーヘッド(非自走パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/12気筒) ・吸込仕事率:200W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.2kg/ 全体重量:4.7kg ・運転音:64dB〜約58dB ・排気方法:― ― ― /集塵容積:0.4L ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:ダークメタリック(H) | |
関連ページ:
・VC-S500 トルネオV(2015年度型後継機種)
・VC-SG314 トルネオV(上位機種)
・VC-C4 トルネオミニ(下位機種)
・VC-S23 トルネオVコンパクト(事実上の前年度型)
・VC-CL1200/VC-CL200 トルネオVコードレス(ハンディ+スティック型)
関連サイト:
・軽く丈夫なグラスファイバー素材採用のサイクロン式クリーナー「TORNEO V」の発売について|東芝プレスリリース