「EC-VX600」は、2014年9月18日にシャープから発売となる、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。これはシャープのサイクロン式上位シリーズ "スクリュープレスサイクロン" の1機種、かつ唯一残存する機種で、必然的にシャープ製サイクロンの最上位機種ということになっています。
その最大の特徴としては、ゴミ捨て時にゴミが舞わないように、また、ゴミが沢山入るようにと、ダストカップ内にゴミを約15分の1に押し固めるスクリューを装備していることが挙げられます。
サイクロン式では、ゴミ捨て時の不潔さと、ゴミの集塵容積が少ないのが大きな弱点ですので、この機能の搭載は大きいです。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (4)
この「EC-VX600」のヘッドは "洗えるパワーヘッド" です。
これは、モーター式回転ブラシの回転で、多少の前進力を持つ自走式(シャープ名:自走アシスト式)だとされています。
しかし、店頭で使ってみたところ、自走力はほぼゼロでした。ブラシが回っていれば、そのせいでヘッドの使用感は若干は軽くなりますが、その程度であれば、自走力のないモーター式回転ブラシでも同様です。
このヘッドはシャープ製最上位ヘッドであるのに、これでは残念すぎます。
回転ブラシによるフローリングの "から拭き機能" は、従来通りにあるとされています。しかし、自走力がないというのは、それだけ床との摩擦がないということです。なので、従来通りの性能があるかは、若干疑問なのですが。
このヘッドの名称は独特(変)ですが、高性能なモーター式回転ブラシの機種であるにもかかわらず、ヘッド部をモーター部分から分離して丸洗いが出来るのが、ヘッドの清掃力よりもウリとなっています。
ヘッドは、長年使っていると、確かに何だかよく分からない汚れがこびりつきますので、洗えるに越したことはありません。
▼ 吸込仕事率 (2)
この機種の吸込仕事率は、260〜約45Wです。1段式の遠心分離型サイクロンにしてはこの数値は低く、前年度型からも最大値で40W下がっていますが、消費電力の最大値はそのままです。
なので、恐らくサイクロンの渦を強めて、遠心分離力を上げているはずです。
▼ 清掃力 (4)
ヘッド性能はシャープで最高ですが、吸込仕事率に不安があるのでこの程度だろうということで・・・。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (2.5)
この「EC-VX600」は、本格的なサイクロン掃除機ではなく、サイクロンは1段式で、基本的に中〜大のゴミの殆どと、細かなゴミの半分程度を遠心分離できる程度です。
それでも、サイクロン掃除機には、まともな遠心分離機構を備えないのに、空気が回るという程度でサイクロンを名乗る製品もありますので、このシャープ製はマシな仕組みに出来ています。
細かなチリの残り半分程度は、ダストカップ上部の円形のメインフィルターで集塵されます。そのフィルターにはチリを検知するゴミセンサーが付いており、それを検知した際には、電動フィルター振動装置を作動させ、チリを下に落とします。
更に、それに連動して回転するゴムベラが、そのチリをダストカップ底部に掃き落とします。
しかし、フィルターには振動では落ち切らないチリが徐々に溜まって行きますので、そうなると手作業でのフィルター掃除が必要となります。
これは勿論、本来的なサイクロン方式とは言えず、褒められた方法ではありません。
また、シャープ製サイクロンの上位機種には、ダストカップ内でゴミを圧縮するスクリューがありますが、これが随時回る為、遠心分離されたゴミは空気と一緒に回るのではなく、ダストカップ底部で押し固められます。
なので、回っている内に間違ってメインフィルターにまで達するゴミは、他より少なくなるはずです。
しかし、シャープ製の上位機種では、代々サイクロンの中心部にある円筒フィルターに目の粗いものを使っており、チリが間違ってそこを通過してしまう確率は他より高いです。
また、それだけでなく、目が粗い為に、そこに引っ掛かって溜まるゴミも多くなります。
ゴミ圧縮スクリューにより、遠心分離されたゴミがカップ内を舞うことは少ないにしても、円筒フィルターの目の粗さはそれ以上にマズいと思います。
しかし、円筒フィルターの目が粗い代わりに、その強度は高いですので、金属か何かを吸い込んだ場合に、破損する可能性は低いのかもしれません。
▼ ゴミ圧縮 (5)
シャープ製上位機種のダストカップには、底部に向かって回るゴミ圧縮用のスクリューがあります。
そのスクリューには、猫の舌の表面を模した軽い刺状のザラザラが付いており、圧縮されたゴミが反発して元に戻ろうとするのを防ぎます。
これらによってゴミは約15分の1にまで圧縮され、紙パック内で圧縮されたゴミと似たような状態にまでなります。
▼ ゴミの捨てやすさ (5)
この「EC-VX600」のダストカップは、ワンタッチで底が開くタイプですので、そっとゴミを捨ているという観点からすれば、あまり好ましくはありません。
しかし、この機種の場合には、ゴミは専用スクリューでかなり圧縮されていますので、例えボトッと下に落ちても、それ程ホコリが舞うことはありません(アレルギー気味の方は、ボトッと落とさない方が良いです)。
また、この機種はダストカップ内に、静電気抑制効果のあるプラズマクラスターイオンを放出しています。なので、ダストカップ内に汚れが残りにくく、ゴミ捨て時のすっきり感はサイクロン式としては例外的に高いはずです。
▼ ダストボックスの容量 (2)
この機種のダストカップの容量は、0.35Lです。微妙に少ないですが、それでもサイクロン掃除機として、どうにか通常の範囲内だということが出来ます。
▼ フィルター (5)
この「EC-VX600」には、超高性能な "ULPAフィルター" しかも性能アップの為にフッ素加工が施された特殊品が採用されており、0.3〜10μmのチリの99.999%を捕塵可能だとされています。
また、ダストカップ上部のメインフィルターには、"抗菌・消臭高性能プリーツフィルター" が採用されていますが、これは昨年度型まで装着されていた高性能フィルターの "HEPAフィルター" と同レベル品のはずです。
他にも、本体後部の排気口フィルターとして "Ag+アレルディフェンスフィルター" が採用されています。
▼ 本体重量 (4)
この機種の本体重量は、3.4kgです。これは一応、小型機と言って良いレベルです。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらは1.5kgですので、全体としては普通程度ですが、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドの装備型としては軽く、特にメーカー最上位ヘッドとしてはかなり軽いです。
▼ 運転音(最大値) (5)
運転音は、54〜約49dBですので、その最大値は現行型機種としては業界最小で、最小値も2番目の小ささです(※⇒「音の静かな掃除機」)。
▼ エコモード (3)
シャープのエコモードはシンプルで、絨毯かフローリングかを見分けてのパワーの変更と、ヘッドを浮かすと運転を停止する "節電アイドリングストップ" からなっています。
時々、「掃除動作に合わせてパワーを自動でコントロール」と表記されていることもありますが、これは床質検知機能が、床面で検知する抵抗の変化から「誤検知」するのでしょう。
そして、これらにより、最大約45%の消費電力削減がなされるとされています。
▼ 特記項目 "消費電力" (3.5)
この機種の消費電力は、850W〜約270Wですので、その最大値は標準的な掃除機の15%減となっています。
しかし、通常クラスのモーターを載せて遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思います。
実は、当機より650gも軽いダイソンDC63は、1,150Wモーターですので、サイクロンに対する本気度が足りなのではないか、としか言いようがありません。
▼ 付属ブラシ類 (4)
この「EC-VX600」には、手元ブラシはありますが、延伸管先端部ブラシがありません。
すき間ノズルも、普通の物は付属せず、先端にブラシの付く "2段伸縮(ロング)すき間ノズル" が付属しています。
なので、延伸管の先端にすき間ノズルを付けるという普通の使い方も、出来ない訳ではないですが、長過ぎとなるのであまり向かないでしょう。
延伸管そのものを取り外して、その代わりに2段伸縮すき間ノズルを付けた方が使いやすいかもしれません。
また、メーカー純正布団用ノズル "洗えるふとんパワーヘッド(「EC-30FU」/別売時希望小売価格:5,500円+消費税)" も付属していますが、これはこの機種のヘッド "洗えるパワーヘッド" 専用品で、洗浄用に取り外せるモーター部を除いたヘッド部分ごと交換します。
"洗えるふとんパワーヘッド" には、回転ブラシとUVランプ(紫外線ライト)はありませんが、モーターの回転を振動に変えて、布団に潜むチリを叩いて浮かせ、吸引します。
▼ 価格 (2)
この機種は、前年度型の価格推移から見て、最安時には3万円強程度にはなるかもしれません。
今年度型には "洗えるふとんパワーヘッド" が追加されているので、その分で前年度型より少し高いはずです。
▼ 総合評価 (3.60)
この「EC-VX600」は、ゴミが圧縮されるのは見事ですが、筒型フィルターが荒く、フィルターへゴミが多く通ってしまうので、フィルター掃除の手間はそれなりにあるはずです。
また、ヘッドも高額機種にもかかわらず、自走式ではないので物足りません。現在、自走式をお使いの方には、あまり向かないかもしれません。
ウリの一つである電動振動式の布団用ヘッドも、家電Watchの実験によれば、特に高性能というわけではないようです。
なので、はっきりした長所は、排気がきれいなことと、音が静かなこととなります。
そういったサイクロン掃除機が欲しい方には、日立の「パワーブーストサイクロン」と並んで、購入候補となるのではないでしょうか。
前年度型「EC-VX500」との違い
EC-VX500 | EC-VX600 | |
発売日 | 2013年9月中旬 | 2014年9月18日 |
ヘッド | 新・奥の手ワイドヘッド | 洗えるパワーヘッド |
吸込仕事率 | 300〜約60W | 260〜約45W |
消費電力 | 850〜約300W | 850〜約270W |
本体/全体重量 | 3.5/4.9kg | 3.4/4.9kg |
メインフィルター | 抗菌・消臭HEPA クリーンフィルター | 抗菌・消臭高性能 プリーツフィルター |
フィルター | 従来型 集塵率:99.99%(0.3〜10μm) | フッ素加工品 集塵率:99.999%(0.3〜10μm) |
布用ノズル | 2WAYベンリヘッド | 洗えるふとんパワーヘッド |
ヘッドは、モーター部を除いて丸洗いが可能となりましたが、幅広(30cm)自慢のヘッドは並程度になってしまいましたし、ヘッドを90度捻って縦にして、幅約8cm以上のすき間に押し込むという、便利な使い方も出来なくなくなってしまいました。
なので、ヘッドを清潔に使えるようになりましたが、掃除をする上での性能は下がっています。
吸込仕事率に関しては、消費電力の最大値が同じままで、吸込仕事率は約13%(40W)下がっています。最小値にかんしても、消費電力は10%下がっているにも関わらず、吸込仕事率は25%も下がっています。シャープは以前、吸込仕事率を下げてサイクロンの渦を強化したことがありますので、今回もやはり同じようにサイクロンの渦を強化したと思われます。
フィルターに関しては、ダストカップ上のメインフィルターが、高性能なHEPAフィルターではなくなっています。
ただ、後部にはメンテナンス不能な超高性能なULPAフィルターが付いているにも関わらず、メインフィルター(清掃可能)の性能を落としてしまうと、ULPAフィルターの寿命が縮まってしまいます。
実は、HEPAフィルターと表記されていた下位機種でも、今年度からは全て "抗菌・消臭高性能プリーツフィルター" の名に変更されているので、名前が変わっただけでフィルター性能は同じなのではないかと思います。
尚、"プリーツフィルター" というのは、細かく折り畳んだ蛇腹状・アコーディオン状のフィルターのことで、HEPA&ULPAフィルターも通常はプリーツフィルターです。
"2WAYベンリヘッド" というのは、ソファカバー等を掃除する為のゴムブレード(ゴム板)を掃除箇所に擦り付ける使用方法と、布団やカーテン向けのエチケットブラシを擦り付ける使用方法を切り替えて使える小型ヘッドです。
これは本来カーテン&ソファー用ヘッドであり、布団用ではありませんでした。しかし、カーテンやソファーに使えて布団には使えないということはありませんし、また、誤解をする人が多いようなので、布団用でもあるという話になったややこしいオプションです。
当然ながら、これに関しては、新型の "洗えるふとんパワーヘッド" の方が良いでしょう。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:洗えるパワーヘッド(自走式) ・目詰まり対策:センサー式電動フィルター振動機構 ・吸込仕事率:260〜約45W[エコ自動モード有] ・本体重量:3.4kg/ 全体重量:4.9kg ・運転音:54〜約49dB ・排気方法:― ― ―/ 集塵容積:0.35L ・持ち手(本体):固定式 ・色:ゴールド系(N) ・ULPAフィルター仕様 ・ゴミ圧縮機能、ダストカップ内プラズマクラスターイオン放出(静電気防止用) ・洗えるふとんパワーヘッド(EC-30FU)&2段伸縮すき間ノズル付 |
前年度型
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:新・奥の手ワイドヘッド(自走式) ・目詰まり対策:センサー式電動フィルター振動機構 ・吸込仕事率:300〜約60W ・エコモード:床面検知+アイドリングストップ ・本体重量:3.5kg/ 全体重量:4.9kg ・運転音:54〜約49dB ・排気方法:― ― ―/ 集塵容積:0.35L ・持ち手(本体):固定式 ・手元ブラシ:〇/すき間ノズル収納:延伸管横 ・色:レッド系(R)、ブルー系(A) ・HEPA/ULPAフィルター各1枚装着 ・ゴミ圧縮機能、ダストカップ内プラズマクラスターイオン放出(静電気防止用) ・2WAYベンリヘッド&2段伸縮すき間ノズル付 |
関連ページ:
・EC-VX700(2015年度型後継機種)
・EC-LX600(下位シリーズ「2段階遠心分離サイクロン」)
・EC-VX500 EC-NX500(前年度型)
関連サイト: