「Scout RX1」(スカウト アールエックスワン)は2014年9月1日にドイツ・ミーレ社から発売となった、同社初のお掃除ロボットです。
これは、2014年5月にヨーロッパで発売されたばかりのものなので、早速日本に投入されたのには驚きました。
▼総合的な特徴
この「Scout RX1」の掃除方式としては、ジャイロセンサーで本体の移動位置を記録すると共に、本体上のカメラで室内形状を把握し(1分間に7回撮影)、部屋の端から逆の端まで、雑巾がけのように進路を順序立てての、基本的に一度の通過で掃除を終えます。また、センサーによる障害物の感知は、殆どの高額機種で行われますが、これは感知された障害物にギリギリで接触しないタイプです。
実はミーレは、韓国のベンチャー企業か何かと組んで、これを開発したという話です(「※SankeiBiz」)。なので、東芝・スマーボ(※サムスン電子製OEM)やLG電子・ホームボットと似たようなシステムになっているようです。
ミーレでは、ロボット掃除機の方式を、ルンバのようなランダム型は "ランダムナビゲーション" 、韓国製のような室内把握型は "システムナビゲーション" と呼称しています。
その上で、"ランダムナビゲーション" 型は同じ場所を(角度を変えて)何度も掃除するものの、未掃除箇所が残り、"システムナビゲーション" 型は、効率良く掃除するものの、壁に接触しないのでその部分にゴミが残りやすいとしています。
そして、ミーレとしては自社製を "システムナビゲーション" を元にした "スマートナビゲーション" であるとしています。
それは3種類の機能から成り立つもので、
- 前述のジャイロセンサー+室内把握用カメラ
- 本体左右の2本の長いサイドブラシ(※ルンバでは "エッジクリーニングブラシ" と呼ばれる物)による「コーナークリーニング」
- 本体正面の7つの衝突センサーによる「ファニチャープロテクション(家具防御)」、+本体裏の3つの落下防止センサーで、4cm以上の高さからの落下を防止
としています。
「1」以外は、多少の差はあるにせよ、ロボット掃除機にとって基本的な機能であり、中でも "システムナビゲーション" 型であれば、3つ全てどれにでもある機能のはずです。
ココロボの場合は、"ランダムナビゲーション" 型ではありますが、原則障害物への接触は避けるタイプです。
ここだけを見ると、"システムナビゲーション" 型が壁際のゴミを取り逃しやすいのに対し、これの場合サイドブラシの毛足が長い分で、その弱点を克服しているというのが特徴となっているとしか見えません。しかし、ミーレが示す掃除完了時のロボットの移動経路のトレース画像を見ると、他よりきめ細かく仕上がっていますので、要するに他の "システムナビゲーション" 型よりも精度が高いのでしょう(※ただし、こういう場合に「お約束」の、比較対象機種不明状態)。
実は、衝突センサーに関しても、ガラスをほぼ100%感知するようですので、よくある赤外線型ではなく、より高度な超音波センサーであるかもしれません。仮に書いてある通りであれば、超音波型であっても、特別高性能なそれであるかもしれません。
この新製品「Scout RX1」は、更に "トリプルクリーニングシステム" を備えており、
- 集める
- かき込む
- 吸い込む
の3段階で掃除をすると謳われています。しかし、これもルンバの同機能の "3段階クリーニングシステム[新][旧]" と(名前まで)同じことを言っているに過ぎず、また、大抵のロボット掃除機はこの方式を取っています。
なので、こちらには目新しさは全くありません。
ただし、目新しさがない程度であれば、そこそこ優秀だと言えたのですが、家電Watchによる実験を見る限り、何とゴミを吸引できていません。
また、「1」の "集める" 位は誰が作っても何とかなりそうなものですが、やはり同サイトによる実験を見る限り、まともにこなせていません。
ミーレは、そもそもキャニスター型(普通のヨコ型)でも、モーター式回転ブラシ内臓ヘッドを持っていませんし、手元電源スイッチすらありません。
ミーレのようなドイツの大企業が韓国企業と組んでいる時点ですでに「?」でしたが、なので、やはりロボット掃除機等、身の丈に合っていなかったのかもしれません・・・。
▼運転モード
この「Scout RX1」に存在する運転モードは、標準の "オートモード"、狭い範囲用の "スポットモード"、壁際集中掃除用の "コーナーモード"、通常の半分の時間で掃除を完了する "ターボモード" の4種類です。
実際に使用するのは、大抵 "オートモード" だけでしょう。
▼段差乗り越え
段差乗り越え能力は約2.0cmだとされています。これはルンバやコーボルトVR100、LG電子のホームボットスクエアと同等で、一応1流の証です。
▼バッテリー
この「Scout RX1」は、約700回充電可能なリチウムイオンバッテリーを搭載し、約2時間充電、最大で120分稼動します。これにより、毎日使用しても約2年間使用できます。
▼ゴミセンサー
この機種にはゴミセンサーの類はありませんので、本体は床を満遍なく1度通過するだけです。
▼適用床面積
最大約93畳という膨大な面積を掃除可能だという話ですが、1箇所を違う角度から4回は掃除するとされるルンバが約25畳ですので、1箇所を原則1度しか通らないこの「Scout RX1」とは、結局移動距離自体は殆ど同じようです。
▼サイズ
「Scout RX1」は、直径35p×高さ8.9cm。重量は2.9sですので、大きさはルンバ800シリーズの直径35.3高さ9.2pと同等ですが、ルンバ800シリーズの重量は3.8kgあります。この機種に採用されているリチウムイオンバッテリーはルンバのニッケル水素バッテリーより軽いですし、ルンバのみ吸込口に2本の回転棒(他機種の回転ブラシに相当)を付けていることもありますが、900gも違うというのには驚きです。モーター類のパワーや部品の強度は大丈夫なのでしょうか。
▼ダストボックスの容量
これの集塵可能容積は0.6Lですので、ルンバ800シリーズの0.42L程度や、ココロボ標準機RX-V90の0.1Lと比べると断然多いです。ルンバには2本ある回転棒一本分のスペースと、リチウムイオンバッテリーがニッケル水素バッテリーより小型で済む分のスペースで、多く出来たのでしょう。
▼バーチャルウォール
「Scout RX1」には赤外線タイプのバーチャルウォール(ロボット用仮想障壁発生装置)はありませんが、その代りに同じように磁気ストリップ(テープ)をロボットに入って欲しくない箇所を囲むように敷設することで、侵入を防ぐことが出来ます。これはコーボルトVR100と同じ方式ですが。
▼タイマー機能
予約運転機能に関しては、毎日同じ時間に動かせるだけのようです。どうしても曜日毎に設定したい方は、今回は残念ながら・・・となっています。
▼価格
価格は8万円とのことですが、税込だと86,400円となります。ヨーロッパでは619ユーロという話ですので、85,222円(計算時:1ユーロ≒137.67円)となり、何とほぼ同一価格です。ルンバ880は82,080円ですので、それともほぼ互角です。
ただし、性能は互角だとは言い難いかもしれませんが・・・。
▼総合評価
東芝の初代スマーボでは、この「Scout RX1」と同じように、やはり同じ場所を1度通過するだけで掃除を終えるものの、"念入りモード" と称して、帰路は違うルートで部屋を往復する機能がありました。
しかし、2代目のスマーボVでは、何と部屋を2往復するのが通常モードとなってしまいました。なので、勿論機種による性能差の問題もありますが、吸引力の弱い充電式掃除機が、1度の通過で床を十分に綺麗にするのは原則困難なはずなので、正直好ましいロボット掃除機だとは思えません。特に絨毯の場合には、なかなか綺麗にならないでしょう。
それに、93畳もの続いた床のある家は日本にはまずないはずなので、日本では同じ場所を何度も通って、しつこく掃除をするルンバやココロボ、トルネオロボで十分なのではないでしょうか。未掃除箇所が出るかもしれない問題にしても、出来るだけ毎日稼動させれば、カバーできるでしょう(ミーレ「Scout RX1」も毎日稼動させればと言えますが、1度の使用で角度を変えて何度も通るルンバには敵わないでしょう)。
サイドブラシを長くすることに関しても、確かに壁際のゴミを残すよりは良いと思いますが、長いサイドブラシが2本回ると、それによってホコリが立つ量も増えると思います。なので、それですら一長一短です。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・Scout Rx1 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー: ・ヘッド形状:パワーブラシ+サイドブラシ×2 ・吸込仕事率:未公表/対応床面積:約93畳 ・リチウムイオン充電池採用 ・本体重量:2.9kg /運転音:62〜約48dB ・色:グレー系 ・約2時間(自動)充電・約120分可動 ・段差乗り越え:2.0cm程度 ・サイズ:直径35p×高さ8.9cm ・リモコン&時刻予約機能付 ・侵入防止用磁気ストリップ(テープ)付 ・定価:80,000円(税別) | |
関連ページ:
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・HOM-BOT(ホームボット)スクエア VR6260LVM
・ミーレ掃除機(キャニスタータイプ)
関連サイト:
・Scout RX1|ミーレ・ジャパン公式サイト/What's KAJI-DAN?
・Scout RX1|ミーレ・ドイツ公式サイト/日本語特設ページ
・家電製品ミニレビュー 正確に段取り良く動き、着々と床を掃除するロボット掃除機(家電Watch)
・部屋の隅々まで効率よく掃除するミーレ初のロボット掃除機(家電Watch)
・ドイツ生まれの賢いロボット掃除機、ミーレ「Scout RX1」(ITmedia)
・ミーレ初のロボット掃除機 - かしこいナビで掃除ルートを効率的に作成(マイナビニュース)