「CV-SY50R」は、日立から2014年1月下旬に発売となった、新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "2段ブーストサイクロン" と呼ばれており、これはその小型版の、2013年度新登場の軽量型の最下位機種となります。
ただ、実はこの機種は存在としてかなり特殊で、カタログやメーカーHPには載っていない、非正規型番となっています。
小型2段ブーストサイクロンの正規版最下位機種は、最下位にもかかわらず、モーター式回転ブラシのヘッドが装着されています。それ故に、タービン(風力)式回転ブラシ装備の同製品があっても良いだろうということで、この機種が製造されているのは確かなはずです。しかし、何故これが非正規型番としてのみ販売されているのかは、何とも分かりません。
この機種の機能面での特徴としては、まず、通常サイズの2段ブーストサイクロンや、小型でも吸込仕事率の高いバージョンのそれとは違い、本体重量が2.9kgしかない、紙パック式を含めて考えても小型機相当となる本体を持つことが挙げられます。
しかし、掃除機の吸引力の目安となる吸込仕事率は、この系統の機種としては低い330Wしかありません。
また、その吸込仕事率で、タービン式の回転ブラシを回すのも、吸引力のロスとなるのであまり感心できません。
サイクロン掃除機として肝心なサイクロン部に関しても、ティッシュをフィルター代わりにして集塵する方式であり、遠心分離も一応取り入れてはいるものの、あってもなくてもあまり変わらない中途半端なものとなっています。
なので、基本的に、感心できる機種ではありません。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (2)
この「CV-SY50R」のヘッドは、"パワフルエアーヘッド" と呼ばれており、ヘッド内に吸込の風(エアー)を使用して回る回転ブラシが内蔵されています。そしてその回転により、フローリング上のゴミを掻き込んだり、絨毯内のゴミを掻き出したり出来ます。
"パワフル" というのは、勿論意味は "強力" ということですが、恐らく、印象が良く、かつ、それっぽい言葉を付けてみただけだと思います。
ただし、この方式は、モーター式の回転ブラシを内蔵しているヘッドに比べると、回転力が劣る分で清掃力が劣ります。
ヘッド内にモーターがなくて良いこともあり、このヘッドは比較的安い掃除機に装備されるものとなっています。
使い勝手の面を見ると、このヘッドは、左右90度にまで曲がる "クルッと構造" により、ヘッドを縦にすることで、横幅の比較的狭い場所にヘッドを無理矢理ねじ込むことが可能となっています。
また、"ペタっと構造" により、ヘッドと延伸管が床に対して水平近くになるまでの関節可動域があるので、家具等の下のすき間を、掃除しやすく出来ています。
これらの特徴は、上位機種のヘッドにも同じくあるものですが。
▼ 吸込仕事率 (2)
「CV-SY50R」の吸込仕事率は、330W〜約40Wです。数値的に、小型機として普通程度ではあります。
▼ 清掃力 (1)
この「CV-SY50R」は、小型2段ブーストサイクロンの中でも軽量タイプなのですが、この本来の姿である従来型の吸込仕事率が最大400Wあることを考えると、こちらはそこから約2割も低いです。これで全く問題ないなら、従来型は特に必要ないはずです。
それでも、ヘッドには回転ブラシがありますし、フローリングであれば、元々「中」や「弱」で十分だとされていますので、フローリングであれば、特に問題はないかと思います。
また、絨毯においても、回転ブラシがある分、マシではあると思います。
評価の数値は、ヘッドの種類や吸込仕事率の数値による相対的なものですので、一流メーカー品としてそれなりの掃除能力はあるということには、間違いはないと思います。
▼ 吸引力持続 (2)
この「CV-SY50R」を含む "2段ブーストサイクロン" は、基本的にメインフィルター前にティッシュを挟み、それをフィルター代わりにして使い捨てにする "なんちゃってサイクロン" です。
ただし、ややこしいのは、この "2段ブーストサイクロン" では、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" とは違い、そのティッシュを挟んだ集塵部に吸気が届く前に、吸気を横に(原則)一回転させて、その円状の風路の中心部に吸気の一部を強引に抜き出して吸い上げ、遠心力でそちらに曲がり損ねて本来の円状の風路に沿って進んだ大きなゴミを含む空気のみを、ティッシュを挟んだその集塵部に届けています。
それは遠心分離だと言えばそうなのですが、その程度の仕組みで細かなチリまで遠心分離できるとはとても考えることは出来ません。
そして、その円状の風路の中心に抜き出して吸い上げられた、大きなゴミと分けられた吸気は、ティッシュ部を通らずに、何とメインフィルターに直接到達します。
遠心分離されて、ティッシュ側に分けられた大きなゴミを含む吸気も、そのティッシュ部で濾されて、その後にメインフィルターに到達することになります。
なので、遠心分離とは言っても、そこで2手に分けられた吸気は、どちらもメインフィルターを通ることになります。
しかし、主な集塵部となるティッシュ側には、大小を問わずのゴミが溜まることで、空気の流れが早めに悪くなります。そうなると、吸気はメインフィルターに直接到達する側の風路に多く流れ始めますので、遠心分離の効率も下がり、次はメインフィルターが詰まることになります。そしてそうなると、丁度ゴミの捨て時ということになります。
実のところ、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" のように、遠心分離部を持たず、全てのゴミがティッシュ部を通っても、結局は "2段ブーストサイクロン" と同じく、全ての吸気はメインフィルターを通ることになります。なので、中途半端な遠心分離を行う必要は特にないはずです。
事実上、上位シリーズの "2段ブーストサイクロン" では、そのティッシュ部にゴミが溜まって詰まってきた際に、まだ余裕のあるメインフィルターにゴミを多く含む空気を直接流すことで、吸引力を若干長続きさせるという方式となっています。
メインフィルターは、電源コードの出し入れと連動したフィルター振動で、到達したチリを自動で落としてある程度綺麗に保たれる仕組みとなっていますが、それでもフィルター振動では落ち切らないチリが徐々に溜まって行きます。
なので、メインフィルターに出来るだけチリを到達させないことで、1回1回ではなく、長い目で見て吸引力を持続させようとすれば、メインフィルターに直接チリを届ける風路のある、中途半端な遠心分離部を設けずに、吸気は全てティッシュ部を通過させ、そこが詰まれば、それでゴミを捨てましょう、とした方が良いはずです。
つまり、このような方法をとるのであれば、そもそも下位シリーズのティッシュ部だけを持つ "ごみダッシュサイクロン" で良いのではないかと思えます。
しかし、自社製品を "サイクロン掃除機" として堂々と売る為には、明らかに遠心分離をするサイクロン部がどうしても必要なので、フラッグシップモデルとなる上位シリーズには、そのようなよく分からない方式でも、ないよりはマシと採用しているのではないかと思います。
正直、一流メーカーのはずの日立には、もっと良いサイクロンを開発する能力はさすがにあるだろうと思います。しかし、恐らくは費用対効果の観点から、新たにお金を掛けて開発し、今より高いコストでサイクロン掃除機を販売するよりも、今のままで、ある程度の売り上げを上げられる方が得である、と計算しているのではないかと思えます。
勿論、掃除機として使えない訳ではないので、ご購入になっても問題はありません。しかし、こういったよく分からない中途半端な物であるらしいということは把握した上で、それでもそれで構わないから、とお買い求めになるのが、当人にとって良いことであるのではないかと思います。
▼ ゴミ圧縮 (4)
"2段ブーストサイクロン" におけるゴミ圧縮効果は、仕組みとして単に紙パック式と同等のはずです。とは言え、紙パックのように中が一杯になる前に、ゴミを捨てることになるので、あのように圧縮される訳ではありませんが。
ただし、圧縮効果があるのは、ティッシュで集塵する大きなホコリのみで、メインフィルターから出る本当に厄介な微細なチリには、圧縮は無関係です。
▼ ゴミの捨てやすさ (1.5)
この "2段ブーストサイクロン" は、ダストボックス部は "ごみダッシュサイクロン" と同一の構造で、ゴミ捨て時に開口ボタンを押すと、ティッシュを挟んだ部分がバネで飛び出す仕組みとなっています。
また、ティッシュを挟んでおいてゴミを捨てる際には、下に落ちた際にティッシュが上に被さる形になることにより、ゴミの舞い上がりを抑えることが出来るとされています。
そしてそれらにより、これらの機種では、"ごみ捨て簡単・清潔" と堂々と謳われています。
しかし、バネで飛び出してボトッと落ちれば、やはり落ちた際にホコリが舞います。なので、そうならない為には、中身が飛び出さないように容器を開け、溜まったホコリをティッシュを持ってそっと取り出す必要があります。
また、フィルター振動によりメインフィルターから出る微細なチリは、ティッシュを通り抜けており、ティッシュとは別に捨てなければならないので、舞いやすく厄介です。
▼ ダストボックスの容量 (1)
小型版 "2段ブーストサイクロン" におけるダストボックスの容量は、0.25Lです。これはサイクロン式の小型機としては丁度標準の数値ですが、ゴミ圧縮効果もありますので、少し多めに入るはずです。
ただ、この容量だと、一軒家向けという感じではありません。ゴミは毎回捨てるつもりでいた方が良いでしょう。
▼ フィルター (1.5)
この「CV-SY50R」のフィルターは、上位機種とは違い、特別な物ではありません。ただし、一応抗菌加工が施された物が使われているようです。
▼ 本体重量 (5)
「CV-SY50R」の本体重量は2.9kgなので、上位の強力タイプとは違って、一応本当の小型機相当です。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (4)
それらの重量は1.3kgですので、比較的軽く、タービン式回転ブラシの機種としては普通程度です。
ただ、特に何も書かれてはいませんが、この機種のヘッド "パワフルエアヘッド" は軽くはないですので、低吸込仕事率の分、ホースに通常より細い物が使われることで、この重量となったのではないかと思われます。
(※上位機種と同じ、"スマートホース" であるかは不明)。
▼ 運転音(最大値) (3)
「CV-SY50R」の運転音は60〜約55dBですので、星の数こそ3つですが、それでも掃除機としては良い方ではあります。
▼ エコモード (0)
この「CV-SY50R」は、安めの掃除機ですので、エコモードの類は付いていません。
▼ 付属ブラシ類 (1)
この機種の付属品は、通常のすき間ノズル(「すき間用吸口」)のみです。
▼ 価格 (4)
この機種は、2013年度初登場のバージョンですので、最安値がどの程度になるのかは何とも言えませんが、15,000円を割るのかもしれません。
▼ 総合評価 (2.29)
当「CV-SY50R」は、小型・軽量がウリとなる機種ですが、同程度の機種は各メーカーから発売されています。
その中でも日立製は、サイクロンの構造に関してが何とも残念で、特に上位シリーズのこの "2段ブーストサイクロン" では、遠心分離部分はなくても良いのではないかと思えます。
敢えて買う理由を探すとすれば、運転音が少しだけマシだということになるのかもしれません。
また、上位機種とは同一のサイクロン部を持つにもかかわらず、価格はかなり抑えられていますので、その面でのお買い得感はかなり高いです。
◆ 日立・小型版2段ブーストサイクロン上位機種、及びごみダッシュサイクロン下位機種との比較
CV-SY100 | CV-SY50R (※非正規型番) | CV-SY8 | |
ヘッド | ごみハンターヘッド (モーター式) | パワフル エアーヘッド (タービン式) | パワフル エアーヘッド (タービン式) |
吸込仕事率 | 330〜約40W | 330〜約40W | 620〜約100W |
消費電力 | 850〜約180W | 850〜約180W | 1,170〜約240W |
遠心分離 | 〇(一応) | 〇(一応) | × |
エコモード | 「中・弱」自動 | × | × |
本体/全体重量 | 2.9/4.4kg | 2.9/4.2kg | 3.9/5.4kg |
運転音 | 59〜約55dB | 60〜約55dB | 65〜約60dB |
集塵容積 | 0.25L | 0.25L | 0.4L |
サッとズームパイプ | 〇 | × | × |
静電気防止 ダストケース | 〇 | 〇 | × |
すき間ノズル | 先端ブラシ付 | 通常型 | 通常型 |
上位機種「CV-SY100」は、当「CV-SY50R」に、主にヘッドにモーター式回転ブラシを装備したバージョンとなります。絨毯を掃除するのであれば、やはり回転力の強いモーター式が好ましいです。
また、「中」と「弱」だけの切替となりますが、エコモードも付いています。
"サッとズームパイプ" とは、足裏でヘッドを抑えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能のことです。これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっている便利なものです。
下位シリーズのごみダッシュサイクロン「CV-SY8」は、当「CV-SY50R」とはヘッドが同じで、価格もずっと安いです。
本体重量は1.0kg重いですし、消費電力も最大で約1.37倍もあり、運転音も5dBも悪いですが、吸込仕事率は2倍に近いです。ダストカップの容量も標準の0.4Lですので、掃除機としての本来的な性能は、高いと言って良いかもしれません。
ただし、そちらは本当の安物ですので、所有する満足感のようなものは(多分)こちらの方が上で、その分大事に使おうと思えると言えば、そうなのかもしれません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:パワフルエアーヘッド ・目詰まり対策:コード連動式フィルター振動機構&ティッシュ装着 ・吸込仕事率:330〜約40W ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.2kg ・運転音:60〜約55dB ・排気方法:(多分)分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×2 ・すき間ノズル収納:延伸管横 ・色:ブラック(K) |
関連ページ:
・CV-SA90 2段ブーストサイクロン(2014年度型後継機種)
・CV-SY100 2段ブーストサイクロン(上位機種)
・CV-SW200 CV-SW100(前年度型シリーズ)
・ごみダッシュサイクロン(下位シリーズ)
関連サイト: