「CV-SY200」は、日立から2013年8月24日に発売となった、新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては "2段ブーストサイクロン" と呼ばれますが、これはその小型版の、今回新登場の軽量型の上位機種ということになります。
その特徴としては、この機種の場合上位機種の強力型とは違って、実際に小型機扱いできる重さですし、その上日立製の最上級ヘッドを装着しているので、清掃力も高めです。
しかし、吸込仕事率は、この系統の機種としては低い330Wしかありません。
また、サイクロン掃除機として肝心なサイクロン部分は、ティッシュをフィルター代わりにして集塵する方式であり、遠心分離も一応取り入れてはいるものの、あってもなくてもあまり変わらない中途半端なものとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
この「CV-SY200」のヘッドは、"スマートヘッド" と呼ばれる日立製の最高性能ヘッドです。これは、日本製の大抵の他メーカー製の最上級ヘッドと同様に、フローリングの菌までその内蔵回転ブラシで拭き取る性能があるとされています。
これは、ヘッド幅が30cmと、シャープ製と共に例外的な広さを誇り、一度に広い面積を掃除できるよう作ってありますが、カーボン素材を用いることと、余分なスペースをなくすことでの軽量設計となっています。
従来型では、ヘッドを手前に引く際には、どんな掃除機にも吸込口後方に大抵付いている起毛部分(※これは、吸い逃したゴミ、及び回転ブラシが後方に弾いたゴミを逃さないようにする為の物であるはずです)が邪魔をし、ゴミを吸い込めないことがあるそうですが、今年度からは、それを解決する為に、起毛部分をヘッドを引く際にのみ回転するローラー式としたことが、このヘッドのウリとなっています。
(※新搭載の吸込口後方のローラーは、ヘッドの中央部には付いていませんが、中央部でもゴミは吸い込まれています。なので、わざわざローラーを付ける必要まではなかったようにも見えます)
また、このヘッドは付け根の可動部が柔軟に動く為、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等の狭い場所に押し込んだり(「クルッとヘッド」)、ヘッドと延伸管をほぼ水平にまで出来ることで(「ペタリンコ構造」)、高さ8cm以上の家具の下等のすき間を、掃除しやすく出来ています(※⇒公式サイトによるヘッド機能の解説)。
▼ 吸込仕事率 (2)
この機種の吸込仕事率は、330W〜約40Wです。数値的に、小型機として普通程度ではあります。
▼ 清掃力 (4)
これのヘッド性能は、勿論高いです。ただ、これは軽量タイプなのですが、この本来の姿である強力タイプの吸込仕事率が最大400Wあることを考えると、こちらはそこから約2割も低いです。これで全く問題ないなら、強力タイプはラインナップに必要ないと思われます。
▼ 吸引力持続 (2)
この「CV-SY200」を含む "2段ブーストサイクロン" は、基本的にメインフィルター前にティッシュを挟み、それをフィルター代わりにして使い捨てにする "なんちゃってサイクロン" です。
ただし、ややこしいのは、この "2段ブーストサイクロン" では、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" とは違い、そのティッシュを挟んだ集塵部に吸気が届く前に、吸気を横に(原則)一回転させて、その円状の風路の中心部に吸気の一部を強引に抜き出して吸い上げ、遠心力でそちらに曲がり損ねて本来の円状の風路に沿って進んだ大きなゴミを含む空気のみを、ティッシュを挟んだその集塵部に届けています。
それは遠心分離だと言えばそうなのですが、その程度の仕組みで細かなチリまで遠心分離できるとはとても考えることは出来ません。
そして、その円状の風路の中心に抜き出して吸い上げられた、大きなゴミと分けられた吸気は、ティッシュ部を通らずに、何とメインフィルターに直接到達します。
遠心分離されて、ティッシュ側に分けられた大きなゴミを含む吸気も、そのティッシュ部で濾されて、その後にメインフィルターに到達することになります。
なので、遠心分離とは言っても、そこで2手に分けられた吸気は、どちらもメインフィルターを通ることになります。
しかし、主な集塵部となるティッシュ側には、大小を問わずのゴミが溜まることで、空気の流れが早めに悪くなります。そうなると、吸気はメインフィルターに直接到達する側の風路に多く流れ始めますので、遠心分離の効率も下がり、次はメインフィルターが詰まることになります。そしてそうなると、丁度ゴミの捨て時ということになります。
実のところ、下位シリーズの "ごみダッシュサイクロン" のように、遠心分離部を持たず、全てのゴミがティッシュ部を通っても、結局は "2段ブーストサイクロン" と同じく、全ての吸気はメインフィルターを通ることになります。なので、中途半端な遠心分離を行う必要は特にないはずです。
事実上、上位シリーズの "2段ブーストサイクロン" では、そのティッシュ部にゴミが溜まって詰まってきた際に、まだ余裕のあるメインフィルターにゴミを多く含む空気を直接流すことで、吸引力を若干長続きさせるという方式となっています。
メインフィルターは、電源コードの出し入れと連動したフィルター振動で、到達したチリを自動で落としてある程度綺麗に保たれる仕組みとなっていますが、それでもフィルター振動では落ち切らないチリが徐々に溜まって行きます。
なので、メインフィルターに出来るだけチリを到達させないことで、1回1回ではなく、長い目で見て吸引力を持続させようとすれば、メインフィルターに直接チリを届ける風路のある、中途半端な遠心分離部を設けずに、吸気は全てティッシュ部を通過させ、そこが詰まれば、それでゴミを捨てましょう、とした方が良いはずです。
つまり、このような方法をとるのであれば、そもそも下位シリーズのティッシュ部だけを持つ "ごみダッシュサイクロン" で良いのではないかと思えます。
しかし、自社製品を "サイクロン掃除機" として堂々と売る為には、明らかに遠心分離をするサイクロン部がどうしても必要なので、フラッグシップモデルとなる上位シリーズには、そのようなよく分からない方式でも、ないよりはマシと採用しているのではないかと思います。
正直、一流メーカーのはずの日立には、もっと良いサイクロンを開発する能力はさすがにあるだろうと思います。しかし、恐らくは費用対効果の観点から、新たにお金を掛けて開発し、今より高いコストでサイクロン掃除機を販売するよりも、今のままで、ある程度の売り上げを上げられる方が得である、と計算しているのではないかと思えます。
勿論、掃除機として使えない訳ではないので、ご購入になっても問題はありません。しかし、こういったよく分からない中途半端な物であるらしいということは把握した上で、それでもそれで構わないから、とお買い求めになるのが、当人にとって良いことであるのではないかと思います。
▼ ゴミ圧縮 (3.5)
"2段ブーストサイクロン" におけるゴミ圧縮効果は、仕組みとして単に紙パック式と同等のはずです。とは言え、紙パックのように中が一杯になる前に、ゴミを捨てることになるので、あのように圧縮される訳ではありませんが。
ただし、圧縮効果があるのは、ティッシュで集塵する大きなホコリのみで、メインフィルターから出る本当に厄介な微細なチリには、圧縮は無関係です。
▼ ゴミの捨てやすさ (1.5)
この "2段ブーストサイクロン" は、ダストボックス部は "ごみダッシュサイクロン" と同一の構造で、ゴミ捨て時に開口ボタンを押すと、ティッシュを挟んだ部分がバネで飛び出す仕組みとなっています。
また、ティッシュを挟んでおいてゴミを捨てる際には、下に落ちた際にティッシュが上に被さる形になることにより、ゴミの舞い上がりを抑えることが出来るとされています。
そしてそれらにより、これらの機種では、"ごみ捨て簡単・清潔" と堂々と謳われています。
しかし、バネで飛び出してボトッと落ちれば、やはり落ちた際にホコリが舞います。なので、そうならない為には、中身が飛び出さないように容器を開け、溜まったホコリをティッシュを持ってそっと取り出す必要があります。
また、フィルター振動によりメインフィルターから出る微細なチリは、ティッシュを通り抜けており、ティッシュとは別に捨てなければならないので、舞いやすく厄介です。
▼ ダストボックスの容量 (1)
小型版 "2段ブーストサイクロン" におけるダストボックスの容量は、0.25Lです。これはサイクロン式の小型機としては丁度標準の数値ですが、ゴミ圧縮効果もありますので、少し多めに入るはずです。
ただ、この容量だと、一軒家向けという感じではありません。ゴミは毎回捨てるつもりでいた方が良いでしょう。
▼ フィルター (1.5)
この「CV-SY200」のフィルターは、上位機種とは違い、特別な物ではありません。ただし、一応抗菌加工が施された物が使われているようです。
▼ 本体重量 (5)
「CV-SY200」の本体重量は2.9kgなので、上位機種とは違って、一応本当の小型機相当です。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度ですが、モーター式回転ブラシの機種としては軽いです。
ヘッドの回転ブラシの軸部分と、延伸管とに軽量カーボン素材を用いると共に(「カーボンライト」)、従来品より細くて軽く、表面が滑りやすくて取り回しの良い "スマートホース" を用いることで軽量化がなされたというのが、この機種のウリの一つとなっています。
▼ 運転音(最大値) (3)
この機種の運転音は59〜約55dBですので、星の数こそ3つですが、それでも掃除機としては静かな部類です。
▼ エコモード (3)
この「CV-SY200」のエコモード(自動パワー制御)は、"床面検知" と、恐らくはその仕組みを応用した、ヘッドの操作速度等を検知する "操作力検知"、そしてヘッドを止めていると自動でパワーダウン⇒停止へと至る "アイドリング&ストップ" から成ります。
"床面検知" と "操作力検知" を用いて6分間フローリングを掃除した場合、「強モード」のみで同等の条件下を掃除した場合と比べて、最大約75%の省エネになるとされています。しかし、それは要するに、「強」と「中」が殆ど使用されず、ほぼ「弱」のみで運転された場合との比較を表しています。
付属ブラシ類は、通常のすき間ノズル("すき間用吸口")と、延伸管先端部か手元グリップ部のどちらかに接続して使うブラシ、"クルッとブラシ" のみとなります。
日立製の高額ヘッドは、ヘッド付根の関節が横に90度曲がることで、比較的狭い場所の掃除も可能です。なので、延伸管先端部はそちらに任せて、"クルッとブラシ" に関しては、手元グリップ部に取り付けておくのが、普通なのではないかと思います。
また、すき間ノズルについてですが、何と別売の "すき間用吸口ホルダー" なしでは、本体・延伸管に取り付けて保管することが出来ません。勿論、そのようなことはどちらでも構わなければ、問題ありませんが・・・。
▼ 特記項目 "サッとズームパイプ" (4)
この「CV-SY200」を含む、日立製の中程度以上の機種には、"サッとズームパイプ" という、足でヘッドを抑えて手元トリガーを指で引きながら、延伸管を伸び縮みさせて長さを調節する機能があります。これは、日立製掃除機に慣れた使用者が、同社製から離れられない要因となっています。
▼ 価格 (3)
この機種は、2013年度初登場のバージョンですので、最安値がどの程度になるのかは何とも言えません。2万円程度にはなると思いますが、現状では何と上位機種の「CV-SY300」の方が安いです。このパターンだと、相当なモデル末期でないと価格は十分に下がらないかもしれません。
▼ 総合評価 (2.9)
当「CV-SY200」は、小型・軽量がウリとなる機種ですが、同程度の機種は各メーカーから発売されています。
その中でも日立製は、サイクロンの構造に関してが何とも残念で、特に上位シリーズのこの "2段ブーストサイクロン" では、遠心分離部分はなくても良いのではないかと思えます。
しかし、メーカー最上位のヘッドを付けているのは評価できますので、価格次第では買っても悪くないかもと思えます。
◆ 日立・小型版2段ブーストサイクロン、上・下位機種との比較
CV-SY300 (小型強力機) | CV-SY200 (小型軽量機) | CV-SY100 (小型軽量機) | |
ヘッド | スマートヘッド (自走式) | スマートヘッド (自走式) | ごみハンターヘッド (非自走) |
吸込仕事率 | 400〜約50W | 330〜約40W | 330〜約40W |
消費電力 | 950〜約190W | 850〜約180W | 850〜約180W |
エコモード | 「強・中・弱」自動 | 「強・中・弱」自動 | 「中・弱」自動 |
アイドリングストップ (※エコモード時に動きを 止めるとパワー抑制⇒停止) | 〇 | 〇 | × |
本体/全体重量 | 3.5/5.0s | 2.9/4.4kg | 2.9/4.4kg |
運転音 | 57〜約53dB | 59〜約55dB | 59〜約55dB |
フィルター | HEPA級 (※高性能) | 標準品 | 標準品 |
軽ワザグリップ (※円状グリップ) | 〇 | 〇 | × |
クルッとブラシ | 〇 | 〇 | × |
ワイド曲が〜る ロング吸口 | 〇 | × | × |
すき間ノズル | 通常型 | 通常型 | 先端ブラシ付 |
上位機種「CV-SY300」は、当「CV-SY200」とはボディーは同じですが、ハイパワー&高排気性能ながらも、本体重量が600g重い機種です(更に特殊ノズル付)。
当然価格もその分高いです・・・と言いたいところですが、上で書いたように、そちらの方が安い場合が多いようです。日立がどの機種を重点的に売るつもりなのか+実際に市場に出ている数の問題ではないかと思いますが。
下位機種の「CV-SY100」は、こちらと基本同型機種ですが、ヘッド+延伸管&エコモードに差がある機種です。
日立製ヘッド "ごみハンターヘッド" には、実は上位バージョンの通常版とワイド版、そして下位バージョンの3種類があり、「CV-SY100」に付くものは下位バージョンとなります。これはフローリング上程度であれば、上位バージョンともそれ程差はないと思いますが、絨毯上では清掃力に少し差が出ると思います。
エコモードであるパワー自動切替の機能では、下位機種の一部では「強」モードが含まれていません。「強」モードは絨毯を掃除する際には基本的に必要なので、その際には手動で切り替える必要があります。
"軽ワザグリップ" というのは、延伸管最上部についている "持ち手" の種類を表しています。
これは他メーカーの比較的高価な掃除機と同様に、グリップ部分が輪になっており、その一部が欠けて三日月状になった物よりも、一般的に掴みやすく使いやすいとされています。
すき間ノズルに関しては、下位機種「CV-SY100」には "クルッとブラシ" が付属しないので、その代わりに先端に折り畳み式のブラシが付いた物が付属するようです。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon ・楽天レビュー: ・ヘッド形状:スマートヘッド(自走式) ・目詰まり対策:コード連動式フィルター振動機構&ティッシュ装着 ・吸込仕事率:330W[エコ自動モード有] ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.4kg ・運転音:59〜約55dB ・排気方法:分散上方排気 ・持ち手(本体):固定式×2 ・すき間ノズル収納:なし(要別売ホルダー) ・色:レッド(R) |
関連ページ:
・CV-SA200 2段ブーストサイクロン(2014年度型後継機種)
・CV-SY300 2段ブーストサイクロン(上位機種)
・CV-SY100 2段ブーストサイクロン(下位機種)
・CV-SW200 CV-SW100(前年度型シリーズ)
・ごみダッシュサイクロン(下位シリーズ)
関連サイト:
・CV-SY200(R) 2段ブーストサイクロン|日立公式サイト