「VC-S23」は、2013年10月1日に東芝から発売となった新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては「トルネオV コンパクト」と呼ばれており、これはそのシリーズ3機種中の下位機種ということになっています。
その特徴としては、遠心分離力を強化した本格サイクロンであることと、本体重量2.9kgの準超小型機であることが挙げられますが、それらの代償として、吸引力の目安を表す吸込仕事率は180Wと、国内有名メーカー製としては異例の低さとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (3)
このトルネオVコンパクト「VC-S23」のヘッドは、非自走のモーター式回転ブラシ内蔵の "軽量コンパクトパワーヘッド" です。
"軽量コンパクト" とは、小振りであることを意味しており、確かに若干幅が狭い気がします。重量的にも、延伸管&ホース部と合わせて約1.5kgとなっていますので、モーター式回転ブラシの機種としては、軽い方です。
しかし、重量は上位ヘッドの "イオンカーボンヘッド" もかなり軽く、数値は同一となっているので、東芝製としては特別軽い訳ではありません。
"パワーヘッド" とは、モーター式回転ブラシ内蔵であることを意味しています。
フローリングでは、モーター式ではなく、タービン(吸気の風力)式の回転ブラシでも十分だとされていますが、絨毯であれば、やはりパワーのあるモーター式が好ましいです。
また、これは上位ヘッドでも同様ですが、ヘッドと延伸管とを水平にまで出来ることで(最後にグリップ部の捻りは必要)、家具の下等のすき間を掃除しやすく出来ています。
▼ 吸込仕事率 (1)
この「VC-S23」の吸込仕事率は180Wです。この数値は、最新のダイソン・DC63の170/160Wに比べれば少し高いですが、国内有名メーカー製の掃除機としては、この上位機種のトルネオV,Wの200Wからも1割低い、ほぼ断トツの低さということになります。
▼ 清掃力 (2)
日本でも製品を販売している前述のダイソン社や、ドイツのミーレ社、スウェーデンのエレクトロラックス社では、200Wを切るレベルの吸込仕事率が標準ですので、この「VC-S23」の180Wが一概に不可だとは言えません。
しかし、それらのメーカーでは、ヘッドと床のすき間を最低限にして床に吸引力が集中する設計になっているのに対し、この東芝製の上級ヘッドでは、そうはなっていません。これにおいても他の国内メーカーと同様に、ヘッド前の米粒等固形物を吸いやすいよう、床とのすき間を多めに開けた設計となっているので、物理的・原理的に無理があると思えます。
もっとも、ヘッドには回転ブラシが付いているので、元々「弱」運転でも問題はないと言われるフローリング上では特に問題ないはずですし、絨毯上でも、モーター式の回転ブラシが絨毯表面のゴミはある程度掻き取るはずですので、その面でも問題は少ないはずです。つまり、主には絨毯内部に入り込んだチリには弱いだろうという話となっています。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
このトルネオV,Wのシリーズのサイクロン部は、"バーティカルトルネードシステム" と称されており、ダイソンと同じく大きなゴミを遠心分離する大きなサイクロンと、2段目としての小さなゴミを遠心分離する複数の小さなサイクロンから成っています。
遠心分離力は、数を増やしてでも、小径のサイクロンを使用する方が高まるという話で、ダイソンDC63では、上下2層の計24個の小サイクロンを、前作のDC48では計10個を採用しています。この「VC-S23」を含む「トルネオVコンパクト」のシリーズでは、10個の小サイクロンを採用していますので、その数だけで見れば、遠心分離力はそこそこのはずです。
しかし、ダイソンでは消費電力が1,150Wある、通常の1,000Wより15%も高いモーターを使用しているのに対し、トルネオV,Wのシリーズでは、逆に15%低い850Wのモーターを使用しています。
ダイソンでは、高性能・高回転の上級モーター "デジタルモーター" を使用しており、非デジタルの日本製と比べて性能は高いはずで、少なく見積もってもその消費電力分、遠心分離力は高いはずです。
東芝とダイソンとのサイクロン部での詳細な性能差については、ダイソンがそのサイクロン部で発生する遠心力を、DC36では290,000G、DC46では360,000Gと公表しており、それ以降のDC48とDC63では非公表ながら、それに近い数値だと推測できます。しかし、東芝側では全く非公表の為、具体的な比較は不能となっています。
ダイソンのサイクロン方式は、特許で守られているはずで、その為他メーカーは真似できないでいるはずです。しかし、東芝がダイソンの特許を回避できた要因として、ダイソンでは、複数の小さなサイクロンで分離したゴミを、ダストカップの中心部の空洞を通して落とす構造であるのに対し、東芝ではダストカップの外延部に溜める構造となっていることが挙げられるはずです。
この点は、そこに溜まるゴミを再び巻き込みかねない問題と、その部分のゴミの、ゴミ捨ての際の若干の扱いづらさに繋がっています。
尚、トルネオシリーズのサイクロン部の正式な名称は、外からゴミの回るのが見える大サイクロン部は、"デュアルトルネードシステム" 。トルネオV(+コンパクト)の複数の小サイクロン部は "バーティカルトルネードシステム" で、トルネオWの同部分は、"ミクロトルネードシステム" となっています。どれもカッコ良い名前ではあるものの、自称に過ぎません。
▼ ゴミ圧縮 (3)
トルネオシリーズのゴミ圧縮は、大サイクロン部の下部で、サイクロンの回転の余波でゴミがゴロゴロと転がっている内に、約5分の1になるということになっています。
小サイクロン部の下部に溜まる細かなチリも、サイクロンの渦で下に押しつけられるせいか、再び吸われずにそこに残っている分は、ある程度固まっています。
▼ ゴミの捨てやすさ (2)
この「VC-S23」を含むトルネオシリーズでは、ダストカップは、底がパカッと開くダイソン方式とは違って普通のカップ型ですので、そっとゴミを捨てることが可能です。しかも、確かにある程度ゴミが圧縮されて塊となっていますので、捨てる際にも舞いにくいです。
ただし、小サイクロンで遠心分離された細かなチリは、小サイクロンの直下にくっ付いていますので、お手入れブラシかティッシュか何かで、時々取ってやる必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (1)
トルネオVコンパクトのダストボックスの容量は0.25Lで共通ですが、これは小型機の分少なく、また、小型機としては標準的です。
ゴミは、掃除毎に捨てるつもりでいた方が、無難であると思います。
▼ フィルター (3.5)
この「VC-S23」を含むトルネオVコンパクトのメインフィルターは、0.5μm以上のホコリの99.9%を捕塵可能な "空気清浄・脱臭フィルター" です。この集塵性能は比較的高いです。
また、最終フィルターとして、抗菌・ウィルス抑制効果のある "イチョウ葉エキス入りフラボノイドフィルター" も装備されています。
▼ 本体重量 (5)
トルネオVコンパクトの本体重量は2.9kgで共通です。かなり軽い方ですが、それでもトルネオミニの2.3kgには劣り、本格的サイクロン掃除機としても、ダイソンDC63の2.75sには劣ります。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度ですが、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドとしてはかなり軽いです。延伸管には、カーボン素材を採用することで、軽く出来ているのがウリの一つとされています。
▼ 運転音(最大値) (1)
トルネオVコンパクトの運転音は、65〜約58dBで共通です。これは単に普通のうるさい掃除機といったレベルです。ただ、消費電力が少ない割には、数値が悪過ぎです。
▼ エコモード (0.5)
この「VC-S23」を含むトルネオVコンパクトのエコモードは、消費電力の最大値を770W⇒500Wに抑える、つまりは、"中モード" の使用(本来「強/弱[300W]」の2モード制)と、ヘッドを浮かすと1秒でパワーを低減⇒6秒で一時停止⇒その状態を60秒継続で電源OFFとなる "節電アイドリング機能" から成っています。
東芝は、何故 "節電アイドリング機能" を「強」と「弱」でも使えるようにしないのか、また、そもそも "中モード" が必要なら何故備えていないのか、何とも不思議です。
▼ 特記項目 "消費電力" (4)
トルネオVコンパクトの消費電力は、770W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の約4分の3です。これは小型機の標準の850Wからも約10%少なく、その分エコだと言えばエコとなります。
もっとも、通常クラスのモーターを載せて、遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思いますが・・・。
▼ 特記項目 "取り回し" ― ― ―
トルネオVコンパクトにおいては、2つの後輪がカバーで覆われている上に、後輪部分においても本体の幅が狭く、家具等に引っ掛かりにくいとされています。
また、後輪にカバーがあるが故に、本体を持ち上げて掃除をする際に、後輪が衣類に触れることがないという利点もあります。
ただし、本体が不自然に細い分、引いて使う場合に安定性が低そうですが。
▼ 付属ブラシ類 (3)
「VC-S23」には、手元ブラシと延伸管部先端ブラシ(併せて「2WAYブラシ」)に加えて、通常のすき間ノズルが付属しています。
▼ 価格 (3)
トルネオVコンパクトシリーズは新製品ですので、この「VC-S23」が最安値としてどの位の価格になるかは何とも分かりません。製品の格的に、2万円程度が好ましいと思いますが。
▼ 総合評価 (2.6)
この「VC-S23 トルネオVコンパクト」は、サイクロン部が日本メーカー製としては最優秀の一つですが、やはりヘッドの構造と低吸込仕事率の組み合わせの問題で、良い物とは言いにくいです。
また、自動パワーコントロール機能が付いていないまでは良いとしても、それにもかかわらず "エコモード" の表示が行われています。
ヘッドを浮かせると吸引が止まるアイドリングストップ機能も、何故か "中モード(エコモード)" 時にしか作動しないという妙な設定となっているので、全く感心できません。
ちなみに、東芝の紙パック式の下位シリーズの下位機種「VC-PC7A」だと、エコモード搭載と称しながら、事実上の中モードを搭載しているだけで、アイドリングストップ機能すらなくなっています。これらはカタログ等をパッと見ただけではまず分からないので、とても酷いです。
それでも、この「VC-S23」は、手軽な価格で買える唯一の本格サイクロンということになるかもしれないので、その点では意義深い機種ということになるのかもしれません・・・。
◆ 東芝トルネオ[Vコンパクト&ミニ]、上・下位機種との比較
VC-S33 | VC-S23 | VC-C3 | |
ヘッド | イオン カーボンヘッド | 軽量コンパクト パワーヘッド | 軽量コンパクト パワーヘッド |
吸込仕事率 | 180〜約50W | 180〜約50W | 300〜約80W |
本格サイクロン | 〇 | 〇 | × |
脱臭フィルター | 〇 | 〇 | × |
運転音 | 65〜約58dB | 65〜約58dB | 64〜約58dB |
本体/全体重量 | 2.9/4.4s | 2.9/4.4s | 2.3/3.8s |
上位機種の「VC-S33」との違いは、そちらではヘッドが東芝製最上位の "イオンカーボンヘッド" であることだけです。
そちらのヘッドでは、
- 自走力
- イオン発生機能
- 狭所用に、ヘッドを90度横に曲げて縦に出来る
- 銀イオンを練り込んだ抗菌AGブラシ(回転ブラシ内)
- ヘッド上部のカバーを外して回転ブラシを手入れできる仕組
が加わります。
イオン発生機能は、フローリング上で効果を発揮するとされていますが、それでもご自宅がフローリングメインであれば、こちらで十分かもしれません。
下位機種「VC-C3」になると、下位シリーズの「トルネオ・ミニ」となります。
そちらは本格サイクロンではなく、1段目の大きなサイクロンがあるだけで、2段目の複数の小サイクロンがありません。その代りに、サイクロンの筒に蓋をするような形でメインフィルターが直接付いています。
当然そこには、細かなチリが多く溜まりますが、フィルターには振動装置が付いており、ゴミ捨ての際に手でガチャガチャとそれを動かすことでチリを下に落とし、サイクロンで分離したゴミと共に捨てることになります。
そちらでは、そのようにサイクロンの渦に多くのエネルギーを割いていないので、吸込仕事率は高めですが、フィルターの手入れが足りないと、吸引力はどんどん落ちて行くことになります。
あと、本体重量が更に600g軽い、有名メーカー製のヨコ型としての業界最軽量なので、持ち運ぶことが多い場合には使いやすいかもしれません。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:軽量コンパクトパワーヘッド(非自走) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/10気筒) ・吸込仕事率:180W[エコモード有] ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.4kg ・運転音:65〜約58dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:シルバー(S)、シャインピンク(P) ・集塵容積:0.25L |
関連ページ:
・VC-S214 トルネオV(事実上の2014年度型後継機種)
・VC-S33 トルネオVコンパクト(上位機種)
・VC-C3 トルネオミニ(下位機種)
関連サイト:
・VC-S23(P)(S) トルネオVコンパクト|東芝公式サイト
・集塵フィルターなし・軽量の「TORNEO V」に新デザインの小型タイプも追加|東芝プレスリリース
・サイクロンクリーナー [東芝 VC-S43,VC-S33,VC-S23]|Good Design Award受賞対象一覧