「VC-S43」は、2013年10月1日に東芝から発売となった新型のサイクロン掃除機です。シリーズ名としては「トルネオV コンパクト」と呼ばれるもので、元々小型の東芝製本格サイクロンシリーズ「トルネオV」を更に小型化した、準超小型機ということになっています。
しかし、遠心分離力を強化した本格サイクロンであることと、小型を特徴として打ち出したそれらの性格から、吸引力の目安を表す吸込仕事率は180Wと、国内有名メーカー製としては異例の低さとなっています。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
このトルネオVコンパクト「VC-S43」のヘッドは、東芝製最高性能ヘッド "イオンカーボンヘッド" です。
まず、"イオン" とは、ヘッド内部で回転ブラシとマイナスイオンプレートとの摩擦で生じている、静電気を抑える効果があるものです。これと銀イオンを練り込んだ回転ブラシとで、フローリングから細かなチリを掻き取りやすく出来ています。
"カーボン" とは、軽量の炭素素材を意味しており、これを用いることでヘッドの軽量化がなされています。
また、このヘッドは、各社の上位品であれば当然ではありますが、回転ブラシの回転力が強い "自走式" でもありますので、軽い操作が可能です。
その他でも、ヘッドを横に90度曲げて縦にすることで、家具の間等、ヘッドを外さずに狭い場所に押し込めたり、ヘッドと延伸管を水平にまで出来ることで、家具の下等の約6.5cm以上の高さのすき間を掃除することが出来ます。
回転ブラシに毛等絡んだ場合には、ヘッドを裏返すことなく、ヘッド上のカバーを取り外すことで、お手入れをすることも出来ます。この仕組みは東芝独自のもので、現在はこの "イオンカーボンヘッド"、及びその廉価版の "自走式カーボンヘッド" にしか採用されていません。
▼ 吸込仕事率 (1)
この「VC-S43」の吸込仕事率は180Wです。この数値は、最新のダイソン・DC63の170/160Wに比べれば少し高いですが、国内有名メーカー製の掃除機としては、この上位機種のトルネオV,Wの200Wからも1割低い、ほぼ断トツの低さということになります。
▼ 清掃力 (3.5)
日本でも製品を販売している前述のダイソン社や、ドイツのミーレ社、スウェーデンのエレクトロラックス社では、200Wを切るレベルの吸込仕事率が標準ですので、この「VC-S43」の180Wが一概に不可だとは言えません。
しかし、それらのメーカーでは、ヘッドと床のすき間を最低限にして床に吸引力が集中する設計になっているのに対し、この東芝製の上級ヘッドでは、そうはなっていません。これにおいても他の国内メーカーと同様に、ヘッド前の米粒等固形物を吸いやすいよう、床とのすき間を多めに開けた設計となっているので、物理的・原理的に無理があると思えます。
もっとも、ヘッドには回転ブラシが付いているので、元々「弱」運転でも問題はないと言われるフローリング上では特に問題ないはずですし、絨毯上でも、モーター式の回転ブラシが絨毯表面のゴミは掻き取るはずですので、その面では問題はないはずです。つまり、絨毯内部に入り込んだチリには弱いだろうという話となっています。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (4)
このトルネオV,Wのシリーズのサイクロン部は、"バーティカルトルネードシステム" と称されており、ダイソンと同じく大きなゴミを遠心分離する大きなサイクロンと、2段目としての小さなゴミを遠心分離する複数の小さなサイクロンから成っています。
※これは、ジャパネットたかた用トルネオVコンパクト「VC-JS4000」です。
遠心分離力は、数を増やしてでも、小径のサイクロンを使用する方が高まるという話で、ダイソンDC63では、上下2層の計24個の小サイクロンを、前作のDC48では計10個を採用しています。この「VC-S43」を含む「トルネオVコンパクト」のシリーズでは、10個の小サイクロンを採用していますので、その数だけで見れば、遠心分離力はそこそこのはずです。
しかし、ダイソンでは消費電力が1,150Wある、通常の1,000Wより15%も高いモーターを使用しているのに対し、トルネオV,Wのシリーズでは、逆に15%低い850Wのモーターを使用しています。
ダイソンでは、高性能・高回転の上級モーター "デジタルモーター" を使用しており、非デジタルの日本製と比べて性能は高いはずで、少なく見積もってもその消費電力分、遠心分離力は高いはずです。
東芝とダイソンとのサイクロン部での詳細な性能差については、ダイソンがそのサイクロン部で発生する遠心力を、DC36では290,000G、DC46では360,000Gと公表しており、それ以降のDC48とDC63では非公表ながら、それに近い数値だと推測できます。しかし、東芝側では全く非公表の為、具体的な比較は不能となっています。
ダイソンのサイクロン方式は、特許で守られているはずで、その為他メーカーは真似できないでいるはずです。しかし、東芝がダイソンの特許を回避できた要因として、ダイソンでは、複数の小さなサイクロンで分離したゴミを、ダストカップの中心部の空洞を通して落とす構造であるのに対し、東芝ではダストカップの外延部に溜める構造となっていることが挙げられるはずです。
この点は、そこに溜まるゴミを再び巻き込みかねない問題と、その部分のゴミの、ゴミ捨ての際の若干の扱いづらさに繋がっています。
尚、トルネオシリーズのサイクロン部の正式な名称は、外からゴミの回るのが見える大サイクロン部は、"デュアルトルネードシステム" 。トルネオV(+コンパクト)の複数の小サイクロン部は "バーティカルトルネードシステム" で、トルネオWの同部分は、"ミクロトルネードシステム" となっています。どれもカッコ良い名前ではあるものの、自称に過ぎません。
▼ ゴミ圧縮 (3)
トルネオシリーズのゴミ圧縮は、大サイクロン部の下部で、サイクロンの回転の余波でゴミがゴロゴロと転がっている内に、約5分の1になるということになっています。
小サイクロン部の下部に溜まる細かなチリも、サイクロンの渦で下に押しつけられるせいか、再び吸われずにそこに残っている分は、ある程度固まっています。
▼ ゴミの捨てやすさ (2)
この「VC-S43」を含むトルネオシリーズでは、ダストカップは、底がパカッと開くダイソン方式とは違って普通のカップ型ですので、そっとゴミを捨てることが可能です。しかも、確かにある程度ゴミが圧縮されて塊となっていますので、捨てる際にも舞いにくいです。
ただし、小サイクロンで遠心分離された細かなチリは、小サイクロンの直下にくっ付いていますので、お手入れブラシかティッシュか何かで、時々取ってやる必要があります。
▼ ダストボックスの容量 (1)
トルネオVコンパクトのダストボックスの容量は0.25Lで共通ですが、これは小型機の分少なく、また、小型機としては標準的です。
ゴミは、掃除毎に捨てるつもりでいた方が、無難であると思います。
▼ フィルター (3.5)
この「VC-S43」を含むトルネオVコンパクトのメインフィルターは、0.5μm以上のホコリの99.9%を捕塵可能な "空気清浄・脱臭フィルター" です。この集塵性能は比較的高いです。
また、最終フィルターとして、抗菌・ウィルス抑制効果のある "イチョウ葉エキス入りフラボノイドフィルター" も装備されています。
▼ 本体重量 (5)
トルネオVコンパクトの本体重量は2.9kgで共通です。かなり軽い方ですが、それでもトルネオミニの2.3kgには劣り、本格的サイクロン掃除機としても、ダイソンDC63の2.75sには劣ります。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (3)
それらの重量は1.5kgですので、全体としては普通程度ですが、モーター式回転ブラシ内蔵ヘッドとしては軽いです。ヘッドの項目で既述ですが、カーボン素材の採用で、軽く出来ているのがウリの一つとされています。
▼ 運転音(最大値) (1)
トルネオVコンパクトの運転音は、65〜約58dBで共通です。これは単に普通のうるさい掃除機といったレベルです。ただ、消費電力が少ない割には、数値が悪過ぎです。
▼ エコモード (0.5)
この「VC-S43」を含むトルネオVコンパクトのエコモードは、消費電力の最大値を770W⇒500Wに抑える、つまりは、"中モード" の使用(本来「強/弱[300W]」の2モード制)と、ヘッドを浮かすと1秒でパワーを低減⇒6秒で一時停止⇒その状態を60秒継続で電源OFFとなる "節電アイドリング機能" から成っています。
東芝は、何故 "節電アイドリング機能" を「強」と「弱」でも使えるようにしないのか、また、そもそも "中モード" が必要なら何故備えていないのか、何とも不思議です。
▼ 特記項目 "消費電力" (4)
トルネオVコンパクトの消費電力は、770W〜約300Wですので、その最大値は標準的な掃除機の約4分の3です。これは小型機の標準の850Wからも約10%少なく、その分エコだと言えばエコとなります。
もっとも、通常クラスのモーターを載せて、遠心分離力を高めるのが、サイクロン掃除機として本来のあり方だと思いますが・・・。
▼ 付属ブラシ類 (5)
「VC-S43」には、手元ブラシと延伸管部先端ブラシ(併せて「2WAYブラシ」)、通常のすき間ノズルに加え、ふとん用ノズル、ロングブラシ、伸縮ロングノズル、洋服等布用ブラシ、付属品用ホース、付属品収納バッグが付属しています。この数の多さは、業界全体を見渡しても異例です。
▼ 価格 (2)
トルネオVコンパクトシリーズは新製品ですので、この「VC-S43」が最安値としてどの位の価格になるかは何とも分かりません。3万は切ると思いますが・・・。
▼ 総合評価 (2.9)
この「VC-S43 トルネオVコンパクト」は、ヘッドの回転ブラシは優秀ですし、サイクロン部も日本メーカー製としては最優秀の一つですが、やはりヘッドの構造と低吸込仕事率の組み合わせの問題で、良い物とは言いにくいです。
また、価格は決して安くないはずなのに、自動パワーコントロール機能が付いておらず、それにもかかわらず "エコモード" の表示が行われています。
ヘッドを浮かせると吸引が止まるアイドリングストップ機能も、何故か "中モード(エコモード)" 時にしか作動しないという妙な設定となっているので、どちらかというと不買をお勧めしたい位です(笑)。
ちなみに、東芝の紙パック式の下位シリーズの下位機種「VC-PD7A」だと、エコモード搭載と称しながら、事実上の中モードを搭載しているだけで、アイドリングストップ機能すらなくなっています。これらはカタログ等をパッと見ただけではまず分からないので、とても酷いです。
もしも、トルネオVコンパクトをお買い求めになりたいのであれば、せめて上位シリーズの「トルネオV」にするのが良いと思います。そちらも似たようなものではありますが、パワーがこちらより1割強高いですし、赤外線で吸気内のゴミを見分けるセンサーが付いていまして、エコモードでは中モードと弱モード(※強モードはなし)を、そのゴミセンサーと、やはりそちらのみに付く床面探知センサーによる制御で使い分けます。
東芝トルネオV(コンパクト)、上・下位機種との比較
VC-SG413 (トルネオV) | VC-S43 (同コンパクト) | VC-S33 (同コンパクト) | |
吸込仕事率 | 200〜約50W | 180〜約50W | |
消費電力 | 850〜約300W | 770〜約300W | |
本体/全体重量 | 3.3/4.8kg | 2.9/4.4kg | |
運転音 | 64〜約58dB | 65〜約58dB | |
集塵容積 | 0.4L | 0.25L | |
2段目サイクロン | 12個 | 10個 | |
床面検知センサー (自動パワー制御用) | 〇 | × | |
ゴミ残しまセンサー | 〇 | × | |
サイクロン部& ダストカップ水洗い | 可 | ダストカップのみ | |
脱臭フィルター | 〇 | × | |
ソフトタイヤ | 〇 | × | |
付属品 | すき間ノズル | すき間ノズル、布団用ヘッド、ロングブラシ、伸縮ロングノズル、洋服等布用ノズル、付属品用ホース、付属品用バッグ | すき間ノズル |
当「VC-S43」と、トルネオVコンパクトの下位機種「VC-S33」との違いとしては、単に付属品(とボディカラー)のみとなります。
- 布団用ヘッド「VJ-B4」- ネット最安値:4,000円程度
- 洋服等布用ノズル「VJ-Y1」- ネット最安値:1,700円程度
- 伸縮ロングノズル:別売なし
- ロングブラシ:別売なし
(※ただし、伸縮ロングノズルと合わせて2千円台前半と推測。これは接続して使うことで、高所を掃除することが出来る物です) - 付属品用ホース:別売なし
- 付属品収納バッグ:別売なし
これらが余分に付いているのが、こちらのウリとなっていますが、ネット最安値換算でも1万円を若干超える程度の価値があるはずです。
ただし、布団用ヘッドと、洋服等布用ノズルに関して別買いが可能ですし、ホースは特に必要ないはずですので、下位の「VC-S33」でも別に問題ないと言えるでしょう。
上位機種のトルネオV「VC-SG413」になると、小型ながらも一応普通サイズ機として使うことが前提とされているようです。その為、一般家庭でのメイン機としてのご使用がその用途であれば、そちらの方が良いと言えるでしょう。
性能的には、吸気内のゴミの有無をランプで知らせると共に、エコモードではその情報を基に吸引力をコントロールする "ゴミ残しまセンサー"、及び "床面検知センサー" があることが主な特徴となります。
逆に、こちらの「VC-S43」の方が優れている点としては、2つの後輪がカバーで覆われている上に、後輪部分においても本体の幅が狭く、家具等に引っ掛かりにくいとされています。また、後輪にカバーがあるが故に、本体を持ち上げて掃除をする際に、後輪が衣類に触れることがないということもあります。ただし、本体が不自然に細い分、引いて使う場合の安定性が低そうですが。
ジャパネットたかた専用機「VC-JS4000」との違い
VC-S43 | VC-JS4000 | VC-S33 | |
発売日 | 2013年10月1日 | 2014年10月下旬 | 2013年10月1日 |
ワイドピカッ とブラシ (※延伸管先 端部LEDライト) | × | 〇 | × |
特別付属品 | 付属品用ホース ふとん用ブラシ ロングブラシ(高所用) 洋服用ブラシ 付属品収納バッグ | 付属品用ホース ふとん用ブラシ | ― ― ― |
ボディカラー | グランレッド ターコイズブルー グランホワイト | シャイニーレッド ロイヤルブルー プレミアムゴールド | メタリックピンク |
「VC-JS4000」は、ジャパネットオリジナルということになっています。
しかし、メーカー純正型番との違いは、たったこれだけで、本体は単に同一です。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:イオンカーボンヘッド(自走式パワーブラシ) ・目詰まり対策:(2段サイクロン/10気筒) ・吸込仕事率:180W[エコモード有] ・本体重量:2.9kg/ 全体重量:4.4kg ・運転音:65〜約58dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・すき間ノズル収納:収納なし ・色:グランホワイト(W)、グランレッド(R)、ターコイズブルー(L) ・布団用ヘッド、ロングブラシ、伸縮ロングノズル、洋服等布用ノズル、付属品用ホース、付属品収納バッグ付 |
関連ページ:
・VC-JS4000 トルネオVコンパクト(2014年度型ジャパネット専売機)
・VC-SG513 VC-SG413 トルネオV(上位シリーズ)
・VC-S33 トルネオVコンパクト(下位機種)
関連サイト:
・VC-S43(L)(R)(W) トルネオVコンパクト|東芝公式サイト
・集塵フィルターなし・軽量の「TORNEO V」に新デザインの小型タイプも追加|東芝プレスリリース
・サイクロンクリーナー [東芝 VC-S43,VC-S33,VC-S23]|Good Design Award受賞対象一覧