「TC-ZXD30P」は三菱から2014年6月21日に発売となった、新型(マイナーチェンジ)のサイクロン掃除機です。これは同社製としての最上位のサイクロン掃除機で、シリーズ名として「風神」とも呼ばれます。
その特徴としては、一応サイクロンでの遠心分離力が強化されており、ダストボックスからフィルターを排したことがウリとなっています。
しかし、本体には高性能フィルターが2枚装備されていますし、ダイソンや、それを真似た東芝のように、2段式サイクロンで、2段目で高い遠心分離力を得る為に、複数の小さなサイクロンに分けた構造になっている訳ではないので、原理的に仕組みとしてかなり劣っています。
この「TC-ZXD30P」は本体重量も3.7kgと、サイクロン掃除機としては若干小型なのですが、軽量化の為にかモーターも消費電力850Wで、通常品より15%程劣る物を使用していますので、遠心分離力を高めるために本気になっているようには見えません。
※発売前ですが、これは前年度型の改良型で、変更点はメーカーにより公表されていますので、それに基づいての評価となります。
※評価はおおよそのものです。
▼ ヘッド (5)
この「TC-ZXD30P」のヘッドは、三菱製掃除機の最上級ヘッド "Wクリーン自走式パワーブラシ" です。
まず、"パワーブラシ" というのは、ヘッド内にモーター式の回転ブラシが内蔵されていることを表しています。特に絨毯を掃除する際には、その回転ブラシが絨毯を掻き分け、ゴミを掻き出すので、高い清掃力を誇ります。
"自走式" とは、その回転ブラシの回転がヘッドを前進させる程のパワーを持つので、ヘッドが楽に操作出来るものであることを表しています。
"Wクリーン" とは、意味が分かりにくいのですが、ヘッド内部で吸引口が左右二手に分かれて設置されることで、ヘッド裏の中央だけでなく、両端にも吸引力を及ぼしやすく出来ていることを表しています。これは2014年度からの三菱独自の仕組みということになります。
もっとも、そうであれば、ヘッド裏・中央に及ぼされる吸引力は減っているはずですが、まあそこまでは言わないお約束ということで・・・(笑)。
また、「TC-ZXD30P」のヘッドには、最大のウリとして "毛がらみ除去機能" が搭載されており、ヘッド横から回転ブラシを引き抜くだけで、回転ブラシに絡んだ髪の毛や糸屑を除去することが可能となっています。
これが出来るのは三菱製の最上位ヘッドだけですので、ペットをお飼いのお宅では、この為だけにこのヘッドを搭載の製品になさったとしても、不思議ではありません。
(※エレクトロラックス社製のコードレススティック・ハンディ2WAYタイプ・「エルゴラピード・リチウム」「エルゴラピード・プラス」「エルゴパワープラス」だと、ヘッドの専用ペダルを足踏みすることで、回転ブラシに巻き付いた髪の毛等を、内蔵カッターで切断・吸引する仕組みがあります)
また、"Wクリーン" では、ヘッドを90°捻って真横にすることが出来るので、その状態で家具の間等狭い空間を掃除することが可能です。
この機能は、元々日立製上位ヘッドにあった機能ですが、2013年度型のシャープ製最上位ヘッドと、この三菱製最上位ヘッドで、ヘッド横にした状態でもっと幅が狭くなるよう工夫されて真似されてしまっています。
また、三菱製自走式ヘッドの回転ブラシには、かなり硬いブラシが採用されています。なので、床のゴミを掻き取る力は強いはずですが、フローリングや絨毯、畳等の床に負担をかけたくない方には、向いていません(※モーター式回転ブラシの中でも中・上位の機種であれば、どれでもそういう傾向を持つと思いますが、硬めの回転ブラシは、弱めのヤスリのように、床をほんの僅かづつ削る可能性があります)。
正直、少なくとも私の家では、あまり使いたくない物です(汗)。
▼ 吸込仕事率 (1)
この「TC-ZXD30P」の吸込仕事率の最大値は230Wですので、かなり低いです。とは言えサイクロンによる遠心分離力を強化したタイプはこの程度が普通で、東芝・トルネオVだと200W、ダイソンDC63だと170/160Wですので、三菱・風神は、それらの中で比較的遠心分離力が低い分、吸込仕事率が高めとなっている、もしくは、優位点を作る為にわざと高くしてあると思われます。
▼ 清掃力 (4)
ヘッド性能は高いですが、吸込仕事率は低いので、こういった形となります。
▼ サイクロン部(吸引力持続) (3.5)
この「TC-ZXD30P」を含む "風神サイクロン" のサイクロン部は、サイクロンの渦にパワーを割くことで遠心分離力を強化したタイプなので、シャープ製や日立製、パナソニック製には有利に立ちますが、ダイソンや東芝トルネオV,Wの2段サイクロンで、2段目が複数の小サイクロンに分かれたタイプには原理的に敵いません。
というより、この1段1個しかサイクロンがないタイプでは、ゴミの完全遠心分離を目指す本格派ではあり得ません。
それでも、この機種の清掃・洗浄が必要なフィルターは、小さくてしかも円形ではなく四角形なので、手間はそれ程かかるとは思えず、気にせず使えば、良いサイクロンだと思って使える範囲のものであるかもしれません。
あと、ダイソンとは違い、トルネオW,V(※2013年度型以降)と共に、サイクロン部の水洗いが可能となっていることも、一応の特徴となっています。もっとも、こちらはトルネオとは違って、サイクロン部は単純なので、水洗い出来ない理由こそありえないのですが。
▼ ゴミ圧縮 (1)
風神サイクロン型には、特別なゴミ圧縮効果はありません。回っている内にゴミ同士が集まって、自然に圧縮される程度です。
ただし、ゴミ捨ては、ダイソンのように底が豪快にパカッと開くタイプではなく、カップ型ですので、ゴミを舞わせないようにそっと捨てることも可能です。
あと、風神サイクロンにおいては、ゴミは遠心力でサイクロン室から外部屋へ弾き出されて溜まりますので、溜まったゴミの内部を吸気が通る率が低く、ゴミの臭いを拾いにくい、つまり排気が臭いにくいとも一応言われています。
まともに遠心分離をするサイクロン掃除機であれば、どれでもそういう傾向があるものと思いますが。
▼ ダストボックスの容量 (5)
風神サイクロンのダストボックスの容量は、0.9Lもありますので例外的に多いです。特別なゴミ圧縮効果がないという悪条件もありますが、これだけ入ればさすがに問題はないでしょう。
▼ フィルター (5)
この「TC-ZXD30P」では、汚れたら洗浄が必要なモーター前フィルターに高性能なHEPAフィルター、そしてモーター後フィルターに超高性能なULPAフィルターを用いています。
風神の排気性能はドイツの試験機関SLGによって測定がなされており、0.3μメートル以上のチリの99.9998%が捕塵可能だという試験結果が出ています。
これは、日立製のサイクロン式・紙パック式の両最高性能機種と並ぶ、家庭用掃除機としての最高レベルの排気性能ということになります。
▼ 本体重量 (2)
「TC-ZXD30P」の重量は、3.7kgですので、フルサイズ(通常型)のサイクロン掃除機としては小型ですが、家庭用掃除機としては単に普通程度です。
▼ ヘッド+延伸管+ホース部重量 (2)
それらの重量は1.6kgですので、モーター式回転ブラシの機種としては普通程度です。全体としても、重い訳ではありませんが、専用の小型モーターの分で少し重いです。
▼ 運転音(最大値) (2)
「TC-ZXD30P」の運転音は、64dB〜約61dBですので、普通にうるさめの掃除機です。風神は遠心分離力維持のために、弱モードでも強く吸っているようで(※サイクロン掃除機としては健全な話です)、弱モード時にも音は割と大きいです。
▼ エコモード (1.5)
この「TC-ZXD30P」のエコモードは、手元グリップ部に "加速度センサー" を埋め込み、使用者がヘッドを早く動かすとそれを察知して吸引力を強くし、逆に動きがないと掃除の中断と判断して吸引力を弱め、その状態が30秒続くと電源をオフにします。後者は "スマートSTOP" と呼ばれています。
加速度センサーによる、ヘッド動きで吸引力を決定するのは三菱独自の方法ですが、ヘッドが浮くと吸引が止まるのは他社でも普通にあります。また、日立とシャープでは回転ブラシにかかる負荷から、ヘッドの動きを察知して、吸引力を高める判断をしています。
他社だと、高額機種では絨毯とフローリングの区別や、赤外線センサーによる吸気内のゴミの有無を判断で吸引力を上下させますので、いささか頼りないです。
▼ 付属ブラシ類 (5)
「TC-ZXD30P」には、手元ブラシと、延伸管先端部ブラシに加え、先端ブラシ付で、そのブラシの角度が変えられるロングすき間ノズル "2WAYロングノズル" と、ふとん用ヘッドも付属しています。
▼ 価格 (1)
この機種は、モデル末期の最安時には、4万円を切る価格で買うことが出来るかもしれません。
▼ 特記項目 "カロナビ" (4)
三菱で2014年度に実用化されたオリジナル機能 "カロナビ" が、現在この「TC-ZXD30P」にのみ搭載されています。
"カロナビ" とは、恐らくはエコモード用の振動センサーがどれだけ振動を感知したかで、使用者がどれだけカロリーを消費したかを算出し、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンに表示する機能です。
これがあれば、ダイエット代わりに毎日掃除をしようとする女性も現れるかもしれません。
※Android™OSバージョン4.0.0以上で、おサイフケータイ@FeliCaまたはNFCに対応する機種(一部機種を除く)のみに対応。
▼ 特記項目 "大型コードリールボタン" (4)
通常、掃除終了後にコードを巻き取る為には、本体の小さなボタンを屈んで押さなければなりません。
しかし、風神サイクロンと、紙パック式の(三菱)雷神では、足踏みで作動させる "大型コードリールボタン" を装備していますので、足で楽にコードを巻き取ることが出来ます。
▼ 総合評価 (3.07)
まず、この三菱風神「TC-ZXD30P」は、一応高遠心分離力をウリにするサイクロン掃除機ですが、あくまで "ギリギリ本格サイクロン" でしかありません。
ヘッドの清掃力も、他社の最上位タイプと比べて若干心許ないので、手堅い選択には見えません。
エコモードも、他の日本製高額機種と比べて、床面検知やゴミセンサー機能がありませんので、物足りません。
しかし、良いところは、フィルター性能が文句なしに高いことです。
ダイソン以外で遠心分離をウリにした上で、高排気性能を誇る機種は「TC-ZXD30P/TC-ZXD20P」だけですので、価値があるとすればそこのところだろうと思います。
ただし、その特別な排気性能を除けば、性能の割に価格は高めとなりますので、更に注意が必要です。ウリであるサイクロン部は、ダイソンや東芝トルネオV,Wと比べて構造は単純なのですが・・・。
また、ペットをお飼いで、大量のペットの抜け毛を掃除機に吸わせたい方には、紙パック代がかからないサイクロン式で、ヘッドに "毛絡み除去機能" を備えた製品が好ましいと思われますので、そういった条件をお求めの場合には、三菱製のこれらの機種が主な選択肢となります。ただ、そういったニッチな層に大量に売れるとは考えにくいですので、やはり日本製の排気が綺麗な高遠心分離力サイクロンだと捉えるのが、正当だと思います。
当「TC-ZXD30P」と前年度型「TC-ZXC30P」との比較
TC-ZXC30P | TC-ZXD30P | |
発売日 | 2013年3月1日 | 2014年6月21日 |
ヘッド | 従来型 (※毛がらみ除去有) | Wクリーン |
手元グリップ | 旧かるスマグリップ | フィジ軽(カル)グリップ |
自動パワー切替 | × | 〇(加速度センサー) |
カロナビ | × | 〇 |
本体/全体重量 | 3.8/5.3kg | 3.7/5.3kg |
2WAY キャッチローラー | 〇 | × |
"フィジ軽(カル)グリップ" というのは、人間工学に基づいて設計された新形状グリップです。従来品より持ちやすいということになっています。
また、グリップ部の下の延伸管部分をサブグリップとして位置付けて持ちやすいように設計し、高所を掃除する際等には、そちらを持った方が掃除がしやすいとされています。
旧モデルの "かるスマグリップ" とは、単に "軽くてスマートなグリップ" という意味です。
"2WAYキャッチローラー" とは、裏面にエチケットブラシの付いた、ソファやクッション、車のシート等用のノズルです。これは内部にゴミを溜められる構造である為、掃除機に接続しない状態でも使用できるので "2WAY(2つの方法)" という名前となっています。
風神サイクロン・下位機種との比較
TC-ZXD30P | TC-ZXD20P | |
ヘッド | Wクリーン自走式 パワーブラシ ・毛絡み除去 ・回転ブラシ抗菌加工 ・抗アレル物質植毛 | (単なる)自走式 パワーブラシ |
手元グリップ | フィジ軽(カル)グリップ | 旧かるスマグリップ |
自動パワー切替 | 〇(加速度センサー) | × |
カロナビ | 〇 | × |
運転音 | 64〜約61dB | 65〜約62dB |
本体/全体重量 | 3.7/5.3kg | 3.7/5.1kg |
ダストカップ鏡面加工 | 〇 | × |
付属品 | 2WAYロングノズル ふとんブラシ | すき間ノズル |
下位の「TC-ZXD20P」では、ヘッドに様々な付加機能がありませんが、その分200g程度軽くできています。清掃力に関しては、単に同等のはずです。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・ | |
![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:Wクリーン自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:(高遠心分離力サイクロン) ・吸込仕事率:230〜約130W[節電モード有] ・本体重量:3.7kg/ 全体重量:5.3kg ・運転音:64〜約61dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・ロングノズル収納:延伸管横 ・色:シャインホワイト(W)、ルージュレッド(R) ・HEPA×1+ULPAフィルター×1仕様 ・ヘッド上空のチリも吸引 ・2WAYロングノズル、ぶとんブラシ付 |
前年度型
・ | |
![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:7年間フィルター掃除不要 ・吸込仕事率:230〜130WW[節電モード有] ・本体重量:3.8kg/ 全体重量:5.3kg ・運転音:64〜61dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・ロングノズル収納:延伸管横 ・色:シャインバイオレット(V)、ルビーレッド(R) ・HEPA×1+ULPAフィルター×1仕様 ・ヘッド上空のチリも吸引 ・2WAYロングノズル、2WAYキャッチローラー、ぶとんブラシ付 |
関連ページ:
・TC-ZXE30P 風神(2015年度型後継機種)
・TC-ZXD20P 風神(下位機種)
・TC-ZXC30P TC-ZXC20P 風神(前年度型)
・ダイソンDC63(この機種にもHEPAフィルターが付いています)
関連サイト:
・三菱サイクロン式掃除機「風神」TC-ZXDシリーズ新商品発売のお知らせ|公式サイト
・サイクロン掃除機「風神 TC-ZXD30P」で暑い夏でも“スマート”に掃除しよう(BCNランキング)
・TC-ZXD30P - 英国アレルギー協会推薦証明("Details"を参照)