日立から2014年2月22日に発売となった、コードレスサイクロン掃除機「PV-BA100」です(※レッド色のみ3月発売)。
その特徴としては、モーターとバッテリー部を含む中核部をスティック部から取り外してハンディクリーナーとして使用できる、スティックハンディ兼用の2WAYタイプであることが挙げられます。
また、ヘッドにはモーター式回転ブラシを内蔵した "スムースヘッド" を装備していますが、これは自走式となっており、微弱な前進力を発揮することで、少しだけ本体を動かすのが楽になっています。
ヘッドには前方を照らす6灯のLEDライトが内蔵されており、テーブルの下等暗い場所も掃除しやすくなっています。
集塵方式は、一応サイクロン式となっており、確かに大きなゴミは分離・収納出来るようですが、肝心の細かなホコリは、洗浄可能なスポンジフィルターと、メインの蛇腹フィルターに普通に達しているはずです。
付属品として、縦方向に角度調節可能な "曲がる吸口(ブラシ付)" が付属しており、これは2WAYタイプ、ハンディ専門タイプを問わず他機種にはない物ですので、便利と言えば便利だと思います。
▼ エルゴラピードとの違い
この日立製「PV-BA100」を買おうとする方は、エレクトロラックス社のエルゴラピードリチウムと迷われるものと思いますが、こちらは14.4Vのニッケル水素バッテリー、そして向こうは18Vのリチウムイオンバッテリーですので、実のところエルゴラピードのリチウムタイプではなく、やはり14.4Vのニッケル水素バッテリーを採用する、2013年度型の通常タイプのエルゴラピードが比較の対象となります。
PV-BA100 | エルゴラピード | 〃リチウム | |
重量 (スティック/ハンディ) | 2.8/1.4kg | 2.7/1.2kg | 2.6/1.1kg |
バッテリー | 14.4Vニッケル | 14.4Vニッケル | 18Vリチウム |
充電時間 | 4時間 | 16時間 | 4時間 |
稼動時間(強/弱) | 12/30分 | 13/25分 | 13/35分 |
特殊機能 | 曲がる吸口 | ブラシクリーン | ブラシクリーン |
スペック上での違いとしてはこうなります。通常型エルゴラピードは、充電時間が16時間で、これは購入を躊躇させるには十分な数値でしょう(笑)。
また、ハンディクリーナーとして使用時にも、「PV-BA100」は若干重めですので、あまり感心できません。ただ、持ち手の形状が、エルゴラピードではデザイン優先で単にスティック状のものとなっており、「PV-BA100」ではリング状ですので、こちらの方が持ちやすいです。
基本であるスティッククリーナーとして使用する場合には、ヘッド直下の車輪が、2013年度型のエルゴラピード(リチウムを含む)からは、絨毯上でも動かしやすいようにデザインを損ねない範囲で可能な限り大きなものに変わったのですが、「PV-BA100」では、その変更前と同じ小さな車輪が付いているだけです(※こちらには回転ブラシに、幾らかの自走力がありますが)。
「PV-BA100」ではヘッド接続部の関節もどうもイマイチで、エルゴラピードに比べると手首を捻っての方向転換がしづらく出来ています。
サイクロン部に関しては、清掃が必要なフィルターにまで大きなゴミが達しない分で、表面的には「PV-BA100」の方が良いです。
しかし、エルゴラピードではメインフィルターの振動による清掃機構があり、水洗いも可能であるのに対し、こちらは振動機構どころか清掃用のブラシすら付いておらず、ブラシによる清掃自体不可となっています。更には、水洗いまでが不可の為、出来ることはフィルターの枠を叩いてホコリを落とすことだけです。
勿論、サイクロンによる遠心分離力は申し訳程度で、メインフィルターの前に付く、洗浄可能なスポンジフィルターはスポンジでしかない為、メインフィルターが汚れて来たら、一体どうしたら良いのか途方に暮れます。
一応交換用フィルターが800円(一般店舗販売なし)で売られていますので、吸引力が落ちたと感じたら、買い換えるべきでしょう。
あと、エルゴラピードには、足踏みペダルで回転ブラシに絡みついた毛を切断する他にはない特殊な機能(「ブラシ(ロール)クリーン」)がありますが、こちらにはそれに相当する機能はありません。特殊ノズルの "曲がる吸口(ブラシ付)" なら付きますが。
▼ 日立が後発でこの「PV-BA100」を発売した意味
日本の有名メーカーがこういった充電式2WAYタイプのスティックハンディクリーナーを発売したということで購入を検討する方もいらっしゃると思いますが、実のところこの日立製は、後発の割に良い所がありません。
こういったスティックタイプは、掃除をする場所まで持ち運ばなければならない場合に、持ち上げるための持ち手がなく、困ることがあります。しかし、この「PV-BA100」の場合には、ハンディクリーナー時の持ち手を、スティック時の運搬用の持ち手としても使えるので、その点では優れています。ただし、こういう方式は他メーカーにもありますので、これは日立独自という訳ではなく、また、何故エレクトロラックス社が同様の方式を採用しないかと言うと、恐らくはデザイン面で劣るからです。お洒落な製品を買いたいと思っている方には、見た目としてやはり残念と思われるのではないでしょうか。
そもそも日立は、エレクトロラックスのエルゴラピードが売れているからといって、似たような製品を出すにしても、判断が遅すぎます。エルゴラピードは2004年の発売で、2013年には日本国内100万台を売上げ、世界累計では800万台を超えています。
エレクトロラックス社も、ダイソン社のようなベンチャー企業ではなく、世界でも3番目か4番目の大家電メーカーで、2012年には電気掃除機製造100周年を迎えています。そんなメーカーが日本でも100万台も売っていれば、日本向けとしても簡単には追いつけないノウハウが蓄積されかねません。
しかも、米・iRobot社のルンバのような特殊で安全上のリスクのある製品であればまだしも、このような2WAYタイプのスティックハンディクリーナーは、単に従来製品の延長上にある製品に過ぎません。
エルゴラピードにしても、ダイソンのデジタルスリムにしても、本来業務用ながら人気のあるマキタにしても、主力製品は高性能なリチウムイオンバッテリーの高電圧品を採用していますが、日立はエルゴラピードの廉価版と同じ14.4Vのニッケル水素バッテリーを採用しているに過ぎません。
また、エルゴラピードの最大の欠点は、バッテリー交換が出来ず、モーターの入ったハンディ部ごと新たに購入する必要があるのですが、この日立製「PV-BA100」も同じ方式を採用しており、これは日本メーカー製としては極めて珍しいはずです(※ニッケル水素タイプのエルゴラピードでは、ダストカップ部も付属して5,524円ですが、「PV-BA100」ではダストカップ部なしで7,000円)。
なので、本当にエルゴラピードに対抗するような物を出したというよりも、エルゴラピードの作った市場で少し稼がせてもらおうかな、といった程度に考えているとしか考えられません。
耐久性・製品寿命については、日本製の方が良いのではないかというイメージは確かにありますので、そういった面で日立製の新型を選ぶという選び方はあると思います。しかし、この価格・デザインの製品を買う方は、そこまでは考えないだろうと思いますので、エルゴラピードで良いのではないでしょうか。
ちなみに、最新のダイソンデジタルスリム「DC62」と比べると、ダイソンの方が吸引力とサイクロン部のゴミ分離性能で圧倒的に優れているはずです。ただ、ダイソンのタイプは、ハンディクリーナーを基本としており、スティックタイプとして使う際には重心が高く、手に大きな負担がかかりますので、長時間の床掃除には向いていません。なので、ハンディクリーナーとして使うのが基本であれば、ダイソンを、そして床掃除メインであれば、この「PV-BA100」やエルゴラピードを基本に考えれば良いと思います。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・日立 PV-BA100 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:スムースヘッド(自走式パワーブラシ) ・目詰まり対策:一応の遠心分離機構 ・吸込仕事率:未公表 ・14.4Vニッケル水素バッテリー採用 ・本体重量:2.8kg(ハンディ:1.4kg) ・運転音:64〜?dB ・色:シャンパン(N)、マグノリア(XV)、レッド(R) ・約4時間充電・「強」約12分/「弱」約30分 ・充電台、ブラシ付曲がる吸口(&すき間ノズル)付 | |
関連ページ:
・PV-BC200(2015年度型後継機種)
・PV-BC500 パワーブーストサイクロン(2014年度型上位機種)
・日立 PV-BM2 クルッと小町(日立製の旧来のコードレススティック型)
関連ページ:
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・スティック型掃除機の真打ち、日立「PV-BA100」(GQ JAPAN)