「EC-DX100」は、2013年2月20日にシャープから発売となった、新型のヨコ型(キャニスタータイプ)のコードレスサイクロン掃除機です。
ヨコ型のコードレスタイプは、2003年に発売となったパナソニック製、日立製、そして2005年頃発売となった、マイナーなデザインブランドである "メタフィス" という会社製以来の発売(その3種類全てがサイクロン式)となり、その3社製(※⇒「コードレスキャニスタータイプ一覧」)は既に全て生産終了となっています。
ただし、現在も日立製「CV-XG20」のみ、在庫品が細々と販売されています。なので、実のところ、このタイプはそれ程人気はありません。
この製品の特徴としては、有名メーカー製としては10年ぶりの発売となることもあり、充電地として小型で継ぎ足し充電や保存にも強い、高性能なリチウムイオンバッテリーが採用されています。それも、1,000回充放電可能な、通常より高性能な物が搭載されています。
ただし、前述の日立製とパナソニック製も、タイプ的には劣るニッケル水素型の充電池ではあるものの、1,000回以上の充放電が可能で、最大可動時間も約40〜50分間あるので、このシャープ製の新型の可動時間・46分間(+予備5分間)ともほぼ同等です。
そして、高性能な分で、充電池の価格も他より3,000円程度高い、15,000円程度となるとされています(⇒「家電Watch」)。
また、モーターには、原理こそ古くから知られていたものの、高度な電流制御が必要な為、商品化は近年まで待つことになった、小型で軽量、高寿命、高速・高トルク回転が可能なSR(スイッチト・リラクタンス)モーターが、コードレス掃除機として初めて採用されたとされています。
ただ、SRモーターは、ダイソンDC12に "ダイソンデジタルモータ X20" として(※⇒「Tech-On!」)採用されており、これはその後継機種のDC22の上位機種にも同じ物が搭載されていたはずです(※かなりうるさいので、ヨコ型ではその後廃止)。
そして、それはコードレスハンディタイプのDC16にも、同等の仕組みの物が採用されていたはずで・・・。ちなみに、現在のDC34やDC35,DC45では、SRモーターには通常使用しない永久磁石のネオジム磁石を採用し、従来型に比べて2倍のエネルギー効率を持ち、3倍の速度で回転する "ダイソンデジタルモーターV2" となっており(※⇒「ダイソン公式サイト」)、結局のところ、シャープはダイソンを後追いしていることになります。
※店頭に充電された実機があったので見てきましたが、ヘッドを外しての吸引口の直径は同等でしたので比較しやすく、やはりダイソンDC45,35の方が吸引力は高かったです。…バッテリーのボルト数が公表されていない時点で、「?」と思っていましたが・・・。しかし、それを補う為か、ヘッドの吸引口部分の幅は、ダイソンより2cm程狭かったです。
尚、このSRモーターには短所もあり、トルク脈動、振動、騒音の問題が(※⇒「It's EV.com」)、そして、低回転時のトルクが小さいことも指摘されており(※⇒「Tech-On!」)、少なくとも電気自動車では、まだ発展途上の技術だとされています。
騒音の問題に関しては、この「EC-DX100」にも現れており、パワーはコード式の機種よりずっと低いはずなのに(※充電式掃除機は、通常吸込仕事率は非公表です。公表しているダイソンは、その面だけでも偉いです)、運転音は64〜約57dBと、シャープ製のコード式の機種とも、全く同等の数値となっています。
この「EC-DX100」の他の特徴しては、基本的に2012年11月に発売となった、コード式のヨコ型掃除機「EC-QX310」と同型です。
ヘッドには、"すみジョーズ自走パワーアシスト" という名の、回転ブラシの回転での、幾らかの自走力のある(とされる)物を装備しています。
ただ、これは「EC-QX310」の物とは少し違っており(※名前からも「こまわり」の文字がなくなっていますが)、ヘッド内の回転ブラシが、毛ブラシとゴムブレードが組み合わさった物から、毛ブラシが2種類組み合わされたスタンダードな物に変更されています。その分で、自走力は一応謳われているものの、多少低くなっているかもしれません。
また、向こうには、ヘッド裏に全方位キャスターが付いており、横方向にも移動させやすくなっていましたが、こちらではそれが省略されています。その代りに、ヘッドの後方・延伸管直下部の車輪が大きくなっており、ヘッドを前後に動かしやすくなっているようです。
もしかしたら、自走力が弱くなって、ヘッドを動かしにくくなった分を、それで補っているのかもしれません。
(※ヘッドの大きさとしても、ヘッド全体で2cm弱、吸引口部の幅で5cm弱程度小さくなっていました。)
サイクロン部は、大きなゴミは空気の回転で分離できるものの、細かなゴミは高性能なHEPAフィルターで濾し取り、ゴミ捨て時にはフィルター振動用つまみをガチャガチャと動かして、フィルターに付いたチリを下に落とす方式です。なので、勿論サイクロン式とは言っても、手作業でのフィルター掃除はある程度必要となります。
これに関しては、一応ゴミの遠心分離をする分で、このシャープ製はまだ少しマシです。しかし、生産を終了してる日立製やパナソニック製の前述の機種だと、単なるフィルター式に近いので、もっとフィルター掃除の心配がありました。しかも、そのパナソニック製だと、フィルター振動の仕組みすら付いていませんでしたが(汗)。
また、運転時にはエコモードを選択することで、床質に合わせて自動でパワーがコントロールされると共に、ヘッドを浮かすと回転ブラシと吸込が止まる "アイドリングストップ" 機能により、省エネ、特に充電式のこの機種の場合には、充電池の使用時間を長持ちさせるのに一役買っています。
パナソニックの販売終了の充電式機種には、ゴミセンサーとの連動でパワーをコントロールする機能がありましたが、現在も在庫品を売っている日立製にはその機能はありません。なので、少なくても使いなれない内は、かなりメリットがある機能だと言えるでしょう。
また、本体が円形ですが、本体の両サイドの車輪は、その直径に近い大きな物が付いていますので、引っ張った際に比較的軽く動くはずで、また、デザイン的にも楽しい物となっています。
重量バランスとしても、その円形の中央部にダストカップを配し、その前後にモーターとバッテリーを載せることで、持ち上げやすく出来たとされています。
ただし、やはりこれは何と言っても充電式掃除機ですので、吸引力それ自体に関しては、コード式と比べれば、原理的に低いとしか言いようがありません。清掃力にやはり大きく影響するヘッドの性能としては、多分中程度だと思われますが。
また、この製品には音声ガイド機能があり、
- "フィルターをお手入れしてください"
- "充電してください"
- "ごみを捨ててください"
- "お掃除開始"
等と喋るようなのは、余計だと思いますが(笑)。(⇒「家電Watch」)
ただ、これをロボット掃除機のココロボに載せた、人の声を認識し、機嫌も変わる簡単な人工知能的な "ココロエンジン" だと言うのは、少々問題だと思います。…同じココロボでも下位機種だと、機嫌は変わるものの、一方的に喋るだけですが。ちなみに、喋るだけならiRobotのルンバも、日本語を含む16ヵ国語で、エラーメッセージをかなり大きな声で話します。
また、相変わらず、プラズマクラスターイオン発生機能もありますが、少なくとも掃除機でサッと出す程度で効果があるかははっきりせず、2012年11月には消費者庁にカタログ等で宣伝されるような効果が見られないとして注意されたばかりなのに、わざわざ充電式掃除機に載せなくても、と思えます。
あとは、付属品として、吸込口が柔軟に動く為、高所や、天井までも掃除可能な、シャープとしての新型オプションノズル "ロング伸縮ブラシ" と、本体を肩に掛けて使う為のベルトが付属します。ベルトは、それを使う事により、高所や車内等も掃除しやすくなるようです。…ただ、それは日立製にもありましたが・・・(汗)。
今更ヨコ型コードレスタイプとして発売された、この「EC-DX100」ですが、ダイソンのDC45,DC35や、エレクトロラックスのエルゴラピードのような、外国製でお洒落で意外と高価格なコードレス掃除機が売れるのを尻目に、シャープには現行型のコードレス掃除機自体がないことが、発売の背景だと思われます。
それらの製品は、どちらもスティックタイプとしてもハンディタイプとしても使える、小型で使い勝手の良い製品であるのに対し、これの場合には一応小型とは言え、本体重量3.5kg、総重量4.9kgの、コードレスにしてはかなり大きな物となっています。なので、比較的狭いマンション・アパート等で、フローリングがメインの場合に、これ1台で済まそうという場合には良いかもしれませんが、手軽に使う2台目需要としては、少し大き過ぎるのではないかと思います。
ただ、買って使ってしまえば、コードがなくて便利な分、コード式の掃除機の出番は減り、もうこれでいいや、と思えてしまうかもしれません・・・。
コードレス機バッテリー比較 | |||||
EC-DX100 (シャープ) | CV-XG20 (日立) | DC45 (ダイソン) | DC35 (ダイソン) | エルゴラピードPlus (エレクトロラックス) | |
タイプ | リチウムイオン | ニッケル水素 | リチウムイオン (特殊なニッケルマンガンコバルト型) | リチウムイオン | リチウムイオン |
充電可能回数 | 約1,000回 | (最大約2,600回) | 約500回 | 約500回 | 約500回 |
バッテリー定価 | 15,000円 程度 | 13,650円 | 9450円 | 6,300円 | 8,400円 |
交換方法 | メーカー送付 | 自己交換 | 自己交換 | 自己交換 | 自己交換(※ハンディユニットごと) |
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
・EC-DX100 | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:すみジョーズ自走パワーアシスト(パワーブラシ) ・目詰まり対策:手動式フィルター振動機構 ・吸込仕事率:未公表 ・エコモード:パワー自動調節+アイドリングストップ(ヘッドが浮くと一時停止) ・本体重量:3.5kg/ 全体重量:4.9kg ・運転音:64〜約57dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・手元ブラシ:〇/ロングブラシ収納:延伸管上 ・色:レッド系(R)、ゴールド系(N) ・約4時間充電/リチウムイオン充電池採用 強モード時約13分[回転ブラシ切15分] 弱モード時約46分[回転ブラシ切50分] エコモード時約20〜46分可動 ・充電台、ロング伸縮ブラシ、肩かけベルト付 | |
関連ページ:
・EC-SX200 FREED(フリード)(充電式スティック+ハンディ2WAY)
・EC-QX310(AC電源式兄弟機種)
・マキタ CL500DZ(シャープ製OEM兄弟機)
・MC-HS700G MC-HS500G/MC-BR30G(パナソニック製)
関連サイト:
・コードレスサイクロン掃除機<EC-DX100>を発売(シャープ・プレスリリース)
・掃除嫌いに効く“アイデア”とは? コードレス掃除機『EC-DX100』購入レビュー(デジモノステーション)