その特徴としては、サイクロン掃除機として、あまりに単純であるが故に少々複雑です。
これらでは、ダイソンや東芝のトルネオV,Wと同じように、ダストカップ内の外側と内側にゴミの旋回部があるものの、外⇒内という順序ではゴミが通らず、いきなりゴミを内側のサイクロンに送り込み、その旋回部の上方に一箇所に開いている穴から、比較的大きなゴミが外側の旋回室に弾き出されてそのまま回るという、独特の構造を持っています。
また、内側のサイクロンでは、ダイソンDC46では32個、東芝では12個に分けられて遠心分離効率を必死に上げているのに対し、この三菱製では大きな物が1つしかありません。
ダイソンのDC46では、それにもかかわらず、フィルターの洗浄の目安は3年に1度とされていますが、この「TC-ZXC30P/TC-ZXC20P」では、何と7年以上もフィルター掃除をしなくても大丈夫だとされています。
2008年度辺りまで、この三菱を含む日本メーカーは、遠心分離力が低い(もしくは殆どない)フィルター振動機構を付けたサイクロン掃除機に、 "10年間フィルター掃除不要" 等とこぞって書き、実際にはとてもそんなに持たないと話題となって来ると止めてしまいましたが、これはそれを思い起こさせます。
また、これら三菱製風神の2010年に初めて発売された前モデルでは、サイクロン部をわざわざ左右2つに分け、ゴミを大・中・小の3段階で遠心分離するので、吸引力が持続します!としていました。
しかし、今回のモデルではサイクロン部を事実上1つとし、ゴミの収集は比較的大きなゴミが弾き出されて回る外側と、細かなゴミ用の内側との2箇所にまとめてあります。その上で、消費電力も1000W⇒850Wに減らされてモーターが少し小型になったようですが、それでも、何と従来比1.8倍の風速で、遠心分離をすることが可能になったとされています。
TC-ZXC30Pでは、旋回室が1つでも、十分な遠心力を維持できるように、主流と副流の2つの気流を発生させ、風速90m/sを実現。これは業界最速にあたり、旋回速度も従来モデルの180回/秒から374回/秒に向上している。(By 家電Watch)三菱としては、このようにも言っていますが、仮にその主流・副流方式が優秀であるとしても、吸気を主流と副流に分ける時点でパワーロスがあるはずなので、劇的に性能が上がるとはとても思えません。
以前より遠心分離力が増しているのは本当であるにしても、今回はサイクロンを事実上(内側の)一つに絞ることで、成し遂げられたはずです。
業界最速云々は、本当に言っているならですが、何なのかよく分かりません。もしかして、その仕組みで、ダイソンやトルネオV,Wより速いと言いたいのでしょうか?(汗)
また、
旋回室と集じん室を分離することで、集じん室の気流発生を抑制。集じん室内の風速は秒速2mほどで、ゴミが舞い上がりにくく、集じん室のニオイも抑えることができる (同家電Watchページ)とされていますが、基本的に前年度までの旧型風神サイクロンや、ダイソン製や東芝製との実際上の違いがあるようには見えません(⇒家電Watchに写真有)。
今回、性能が上がったのは良い話ですが、これではわざわざサイクロンを左右に分けた、前モデルは一体何だったのかと思えます(汗)。
他の特徴としては、ゴミの旋回部が左右の2つ(+1)から内外の2つにまとめられて、モーターも小型化されていますので、サイズがコンパクトとなり、更に、本体にカーボン含有樹脂を、そしてモーターにはアルミフレームを採用したことで、本体重量は4.9kg⇒3.8kgと一回り小さくなっています。
また、せっかく取れたゴミが回って見えるサイクロン掃除機なのに、元々は透明なダストカップの表面に、今作からミラー加工が施されています。これはこれでお洒落に見えますので、家電量販店の売り場では、他と少し違う、という印象を与えられるのかもしれません。しかし、ダイソンや上述の東芝製のように、筒型のフィルター部分がなく、単に内側のサイクロンから弾きだされた大きなゴミが、一つの穴から外へ出て回るのが見えるだけでは、単純で体裁が悪いからだとも思えます。
吸引力の目安である吸込仕事率は、230Wですので、一般的にはかなり低い範疇となります。しかし、やはり強い遠心分離力を特徴とする、ダイソンの最新機種DC46の180Wや、東芝トルネオW,Vの200Wよりは高い数値となっています。
ヘッドは、高額機種なのでどのメーカーでも当然のようにそうなっていますが、モーター式回転ブラシを内蔵の、自走式(回転ブラシによる幾らかの自走能力がある)となっています。これは、前年度型を見るに、低い吸込仕事率を補うために、床への密着度が高い設計となっているはずです。
これらには、少なくとも日本製掃除機では、やはり三菱製の紙パック式 "雷神" にのみ付いていた、足踏み式のコード巻き取りスイッチが付いており、また、本体には本体が倒れにくいようにと、車輪が計3輪ではなく、前輪が2つの計4輪が付いています。
足踏みスイッチは単に便利だと思えますが、車輪は前輪が2つだと段差乗り越えの際に、前輪だけで2度衝撃があるはずですので、3輪で倒れにくく作るのが正攻法だと思います。
前年度までの風神との違いとして、上述に含まれる点以外でも、三菱製の上位機種では、まだ手元グリップがリング状になった持ちやすい物になっていなかったのですが、今年度はそう変更されています。
ホース&延伸管、及び多分ヘッドも、"かるスマ" (軽くてスマート)と呼ばれる軽量版に変更されており、前年度までは1.8kgあったそれらの部分の重量は、何と上位機種で300g減、下位機種で500g減(??)と、モーター式回転ブラシの機種としては、発売時点では業界最軽量級で、特に下位機種では実際業界最軽量となっています。尚、本体重量3.8kgは、軽いと言えば軽いですが、東芝のトルネオVの3.3kgよりはずっと重いです。三菱は、 "他メーカーのフラッグシップモデルに比べて圧倒的に軽くて小さい" と言っているようですが、東芝のフラッグシップモデルはトルネオVではなく、Wだとして無視しています。実質、どちらも性能はあまり変わらないのですが・・・。
吸込仕事率は、20W下がって230Wとなっていますが、モーターの消費電力が下がっているのが、やはり主要因に思えます。
運転音も、モーターのパワーが下がったこともありますが、以前の変に複雑な仕組みを改めたせいか、最大で4dBも下がっています。これで、五月蠅い方であった運転音が、掃除機としては普通程度となりました。
今回新発売の新型風神には、「TC-ZXC30P」と「TC-ZXC20P」の2機種がありますが、違いとしては、上位機種の「TC-ZXC30P」には、
- ヘッドに、回転ブラシを横に引き抜くだけで絡んだ毛が取れる、毛絡み除去機能がある
- 回転ブラシに抗菌加工が、そして "アレルパンチ植毛" という、一種の抗アレル物質加工もされている(後者は多分、回転ブラシではない起毛ブラシ部分)
- そしてそれらの違いで、ヘッド部が一応200g重い
- モーター後部のフィルターに、超高性能なULPAフィルターが採用されている
- 運転音が1dBだけ静か
- 付属品として、"ふとんブラシ" 、"2WAYロングノズル" 、"2WAYキャッチローラー" の3種が付属する(その代りに普通のすき間ノズルは付属しない)
これらの排気性能に付いては、ややこしくなるのでここまで触れていませんでしたが、フィルターには、両機種で、恐らくはたまに掃除の必要のあるモーター前フィルターとして、高性能なHEPAフィルターが採用されています。更に、上位機種の「TC-ZXC30P」では、モーター後フィルターとして、HEPAをさらに上回るULPAフィルターが。そして、下位機種の「TC-ZXC20P」でも、モーター後部のフィルターとして、もう1枚HEPAフィルターが装着されています。なので、どちらも排気性能は、掃除機として最高性能クラスです。0.3μm(※マイクロメートル。1μmは1000分の1mm)以上のホコリの最終捕集率としては、「TC-ZXC30P」では99.999%、「TC-ZXC20P」では、99.99%が謳われています。
付属品としては、上位機種に付く "2WAYロングノズル" とは、2段伸縮ノズルの先端にブラシが付いた、すき間ノズル的な物です。その先端のブラシは、向きを変えることが出来、棚の上等を掃除しやすいという事になっています。
"2WAYキャッチローラー" は、吸込口にペットの毛や糸くず等を取りやすくする為のエチケットブラシが付いた小型ヘッドで、これは内部にゴミを溜められる構造になっている為、掃除機に接続しない状態でも使用が可能です。
"ふとんブラシ" というのは、単に布団用のヘッドのことですが、これのみ別売品としての販売があります。
尚、下位機種の「TC-ZXC20P」には、"サッシノズル" という名の、すき間ノズルのみ付属しています。
これら「TC-ZXC30P/C-ZXC20P」の注意点、というか三菱製自体の注意点となりますが、三菱には自動パワーコントロールのエコモードがありません。 "節電モード" というのは付いていますが、それはセンサーで掃除の中断を察知して、パワーダウンさせるだけの物です。ただ、そのセンサーは手元グリップ部に装備されていますので、ヘッドを外して掃除をしている時でも働くことになり、便利だとされています。
また、少なくとも上位機種の「TC-ZXC30P」については、実際に店頭で実機を確認出来ましたが、三菱製上級機種のヘッドの回転ブラシには、かなり硬いブラシが採用されています。なので、床のゴミを掻き取る力は強いはずであるものの、フローリングや絨毯、畳等の床に負担をかけたくない方には、向いていません(※モーター式回転ブラシの中でも中・上位の機種であれば、どれでもそういう傾向を持つと思いますが、硬めの回転ブラシは、弱めのヤスリのように、床をほんの僅かづつ削る可能性があります)。正直、少なくとも私の家では、あまり使いたくない物です(汗)。
価格が高過ぎるダイソンを除けば、遠心分力が高いサイクロン掃除機は、東芝のトルネオV&トルネオWと、これら三菱製風神しかありません。なので、サイクロン式が欲しい方には、これらの機種も選択肢に入るかもしれません。しかし、三菱が言う程には高性能とは思えませんので・・・特にこれを選ぶ理由というのもないような気もします。スタイリッシュには見えますので、気に入ったなら気に入ったで、良いと思いますが・・・。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・口コミ・評価:感想(_件)を参照 ・ヘッド形状:自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:7年間フィルター掃除不要 ・吸込仕事率:230〜130W ・エコモード:掃除中断察知のみ ・本体重量:3.8kg/ 全体重量:5.3kg ・運転音:64〜61dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・手元ブラシ:〇/ロングノズル収納:延伸管横 ・色:シャインバイオレット(V)、ルビーレッド(R) ・HEPA&ULPAフィルター(モーター前&後)仕様 ・2WAYロングノズル、2WAYキャッチローラー、ぶとんブラシ付 |
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![]() | ・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:7年間フィルター掃除不要 ・吸込仕事率:230〜130W ・エコモード:掃除中断察知のみ ・本体重量:3.8kg/ 全体重量:5.1kg ・運転音:65〜62dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):固定式 ・手元ブラシ:〇/すき間ブラシ収納:延伸管横 ・色:メタリックマゼンタ(P)、メタリックブルー(A) ・HEPAフィルター×2(モーター前&後)仕様 ・(すき間ノズル[名前は"サッシノズル"])付 |
前年度型
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・楽天 ・amazon [レビュー有] ・口コミ・評価:感想(_件)を参照 ・ヘッド形状:自走式パワーブラシ ・目詰まり対策:― ― ―(左右2段サイクロン) ・吸込仕事率:250W ・エコモード:掃除中断察知のみ ・本体重量:4.9kg /全体重量:6.7kg ・運転音:68dB〜約63dB ・排気方法:側面斜め上方排気 ・持ち手(本体):固定式 ・手元ブラシ:〇/ロングノズル収納:延伸管横 ・色:ルビーレッド(R) ・ヘッド上空のホコリも吸引 ・2WAYロングノズル(長めのブラシ付ノズル)付 | |
関連ページ:
・TC-ZXD30P/TC-ZXD20P(2014年度型後継機種)

・TC-ZXB17P 風神(前年度型)
・ダイソンDC46(ダイソンにもHEPAフィルターが付いています)
・東芝・VC-SG513 VC-SG413 トルネオV
・東芝・VC-SG712 トルネオW
・三菱掃除機
・HEPAフィルター/ULPAフィルター(採用機種一覧)
・各社最高性能機一覧
関連サイト:
・三菱サイクロン式掃除機「風神」TC-ZXCシリーズ新商品発売のお知らせ(公式サイト)
・三菱サイクロン式掃除機「風神」(三菱公式サイト)
・家電製品ミニレビュー 三菱「風神 TC-ZXC30P」(家電Watch)
・三菱のサイクロン掃除機「風神 TC-ZXC30P」 超特急レビュー!(BCNランキング)