wikipediaのダイソン(企業)の項目に
「吸引力が変わらない」というキャッチコピーは誤解を与えるとして、イギリスでは2007年5月30日に排除命令を受けたが[9]、日本ではその後も使われ続けている。
とあります。
これはイギリスの広告基準公団「ASA」(Advertising Standards Authority)による決定だとされており、出典元リンクとしてASAのページが貼られています。しかし、このページが既に削除されている(多分理由は期限切れ)ので、確認することが出来ません。
ただ、それはイギリスではニュースとして報道されており、ページも残っています。
Dyson rapped over vacuum cleaner advert(Which? News)[翻訳]
Dyson ad criticised for 'no clogging' claim(Telegraph)[翻訳]
これらを見る限り、2007年5月30日の決定で主に問題とされたのは、ダイソン社が自社のサイクロン掃除機が、あたかもフィルターを持っていないかのように宣伝していた事のようです。
ダイソン社のオフィシャルサイトは、日本からアクセスすると必ず、「dyson.co.jp」の日本語版サイトに飛ばされてしまいますが、Googleのキャッシュで「dyson.com」のページ無理やり見ると、最下部に、
「Dyson, proves no loss of suction」(ダイソンは吸引の損失がないと証明する。※=吸引力が変わらない)
とあります。
また、イギリスのドメインである「co.uk」を見ても、やはり、
「they don't use bags to capture dust, so there's no loss of suction.」
とあります。
なので、「吸引力が変わらない(no loss of suction)」の表現は、現在も世界的に使われているはずです。
実は面白いことに、2011年4月6日に、ダイソン社はモーフィーリチャーズ社という同業他社を "NO LOSS OF SUCTION!" の表示をめぐってやはりASA(「ASA Adjudication on Morphy Richards Ltd[翻訳]」)に訴えています。そして、実験に使われたゴミの問題から、モーフィーリチャーズ社はその表示の排除命令を受けています。現在は、"Never Loses Suction" と表示していますが(汗)。
その実験は、「IEC60312」という掃除機に関する一般的な規格内で行われていまして、ダイソン社も現在、
「Dyson proves no loss of suction and pick up performance using results from IEC60312 Cl 2.2, 2.3, 2.8, 2.9, ASTM F2607, F608 and F558, and DTM755 - an independently conducted Dyson test」
と「IEC60312」を「no loss of suction」の根拠に上げています。
なので、実用上、確実に徐々に吸引力が衰えるとしても、一定の実験内で吸引力が衰えなければ、どうも「no loss of suction」と表示するのは問題がないようです。
なので、ダイソン社が「loss of suction」という表示を行うことは、少なくとも現在、問題がないのだと思います。
これは、2015年3月にダイソンのアメリカ支社によってアップされた動画ですが、タイトルは「Whatever they say, all other vacuums lose suction.」= "彼らが何と言おうと、全ての他の掃除機は吸引力が衰えます" 等となっています。余程腹に据えかねることでもあったのでしょうか?(笑)
最初に挙げたWikipediaの記述の前半には、
キャッチコピーの「吸引力が変わらない」というのは誇張された表現であり、吸引力(いわゆる吸込仕事率[8])は徐々にではあるが落ち、定期的(一番長いDC22で7年に1回)にモーター前に設けられたプレモーターフィルターを水洗いしなくてはならない(HEPAフィルタは洗浄、交換不要)。
とありまして、それは前述のニュースでも大きく取り上げられていますが、こちらは勿論間違いない話です。
しかし、ダイソン社は、何とその「吸引力が変わらない」のキャッチコピーと同時に、プレモーターフィルターの、2007年時点での数値としては、半年に一度の洗浄をユーザーに要請しています。
それも、前述のニュース内に出ていますが・・・。
付け加えると、そのプレモーターフィルターも、綺麗に洗ったとしても、新品の状態に戻る訳ではないはずですので、そこで少しづつ吸引力は落ちることになります。
また、プレモーターフィルターを通り抜けた微細なホコリは、交換・洗浄不要のHEPAフィルターに溜まって行きますので、最終フィルターである高性能なHEPAフィルターも、徐々にではあるものの、詰って行くはずです。
…私も「DC26」を持っていますが、プレモーターフィルターを水洗いしても、もう一番最初の吸引力(実感できる現象としては、絨毯への吸い付き)には戻りません(汗)。
更には、吸引モーターも、使用、もしくは経年劣化によって少しづつではあるものの、衰えて行くはずですが・・・英語では「吸引力のロス(損失)」との表現ですので、それはもっと原理的な問題(自然減退)で、ロスの内には入らないのだと思います。
日本語での表現「吸引力の変わらない」だと、「吸引力の変わらない、ただ一つのモーター」とも言えなければ、吸引力は変わることになるので、問題があると思いますが。
つまり、例え表示・宣伝に法的な問題がなくても、ダイソン社のサイクロン掃除機においても、吸引力は確実に衰えるので、少なくともプレモーターフィルターを定期的に洗浄しなくてはなりません。
また、ダイソン社も、「吸引力の変わらない」との宣伝との間に矛盾が生じていますが(笑)、それを確かにユーザーに促しています。
ところで・・・「吸引力の変わらない掃除機」と言われると、思わず感心しますが、紙パック式の吸引力の衰えが大きく問題となるのは、ヘッドにモーター式の回転ブラシがない機種の場合のはずです。
回転ブラシの役割は、吸引力とは別にゴミを床から掻き取り、掻き上げることにあります。ちなみに、タービン(風力)式の回転ブラシの場合だと、吸引力が落ちると回転ブラシの回転力も落ちるので、清掃力はやはり大きく衰えます。
日本では、少しでも高い掃除機だとモーター式の回転ブラシを装備していますが、外国ではそうではないようで・・・日本だとダイソンのサイクロンは、外国程必要・有効ではないと言えるのかもしれません。
つまり、ジェームズ・ダイソン卿(この人は家庭用サイクロン掃除機の発明により、「Sir」の称号を得ています)も、もっと若く、現在の日本に住む人であったなら、サイクロン掃除機をわざわざ開発しようとは思わなかったかもしれません。
もっとも、ヘッドの回転ブラシがモーター式でも、その回転ブラシが劣化してくると、吸引力、というか清掃力が落ちてしまいますので、それはそれで注意(※メンテナンスや、長期の使用の場合には、傷み方によっては交換)が必要となりますが・・・。
関連ページ: