吸込仕事率とは
吸込仕事率とは、掃除機の吸引力を表す一つの目安で、W(ワット)という単位で表されます。
(※「吸引仕事率」と言われることもありますが、意味は同じです)
困ったことに、実は消費電力を表す単位もW(ワット)となっており、表面上全く区別が付きません。その為、"1200Wのハイパワー!" 等と無駄に高い消費電力を吸込仕事率と誤認させ、低質商品を売りつけようとする人達も稀に存在しています。そういった商品は、格安サイクロン掃除機が殆どですので、その価格帯をお考えの方はご注意下さい。
そういった紛らわしさを嫌ってか、サイクロン掃除機で有名なダイソン社は、AW(エアワット)という単位を使用していますが、その意味は吸込仕事率のWと同一です。(※ダイソンはダイソンで、日本製と比べると低い吸込仕事率を少しでも誤魔化す為に、目先を変えている可能性もありますが・・・)
風量×真空度
それはともかく、吸込仕事率を算出する計算式は、以下のようになります(by「吸込仕事率はどのように測定しているのか[東芝公式サイト]」)
吸込仕事率=0.01666×風量(立方m/min)×真空度(Pa)
なので、吸込仕事率を比較する際には、事実上真空度と風量とをかけ合わせた数値を比較していることになります。
例え真空度が高くても、それによって吸い込める空気の量が少なければ性能は低いですし(=すぐ真空度が下がる)、また、吸い込める風量が多くても真空度が低ければ、吸引風に勢いがなく、ゴミを吸い込みにくいでしょう(=延伸管&ホースが太すぎるのかもしれません)。
…という話だと思います。
※三菱電機の公式FAQによれば、
- 真空度=ゴミを浮き上がらせる力
- 風量=浮き上がらせたゴミを運ぶ力
と、まとめられています。
また、業務用で有名なマキタ社では、
- 真空度=高い方が重いものを吸えます
- 風量=高い方が良く吸います
と解説しています。
ただ、その吸込仕事率は、ヘッドを付けない状態で測る物だそうで、例え吸込仕事率が高くても、ヘッドの性能が悪ければ、沢山のゴミを吸い取ることが出来ません。
なので、吸込仕事率が高ければ、よくゴミを吸い取りそうだ、という目安には確かになるのですが、結局のところどうであるかは何とも言えないのです。販売しているメーカーを信じる、という話にもなるはずですが。(汗)
ダストピックアップ率
そのような中、ダイソン等外国製品が持ちだしてきたのが、"ダストピックアップ率" です。
これは実際に床にゴミを撒いて掃除機に吸わせ、どれだけのゴミが残るかを計測する、実に実用的な方法なのですが・・・これには基本的に「けい砂」という砂を用います。
絨毯上においては、繊維ゴミと糸くずゴミの項目も、けい砂の項目に加えて「別々に」ありますが、フローリング上においては繊維と糸くずは計測しません。
何故このようなよく分からない話になっているかというと、これらの測り方はJIS規格にあるものでありながら、国際規格を原則そのまま翻訳したものであるからです。
その為か、日本メーカーでダイソンその他、外国メーカーの言う所の "ダストピックアップ率" を計測しているメーカーは、現在1社もありません。
また、例えば東芝のサイクロン掃除機では、質量比にして繊維ゴミ1/3+砂ゴミ2/3といった独自配合の試験ゴミを使って掃除機の使用試験をし、吸引力の持続をアピールしていたりします。
つまり、実のところ、日本の一般家庭における、適切な試験用ゴミの在り方、及び実験方法が、現在確立されていないのです。
国内外のゴミの質の違い
そもそも、何故日本で吸込仕事率による吸引力評価が不完全でありながら、そのままであり続けたかと言えば、それは恐らく日本で掃除機に吸わせるゴミのイメージは「ホコリ」(繊維系&糸くず系)であるからだと思われます。これだと、とにかく空気を沢山吸ってくれれば、何とかなりそうです。
逆に、欧米での掃除機に吸わせるゴミのイメージは、靴に付いて屋内に入る、やはり砂が一番なのでしょう。なので、実際に計測してみましょう、という話になるのだと思えます。
実際、幾らダストピックアップ率が高くても、絨毯上ではせいぜい80%です。靴に付い来て絨毯内に入った砂の20%は、掃除機ではなかなか取ることが出来ません。
なので、恐らく、例え皆が使用する掃除機の "ダストピックアップ率" が低くても、日本の一般家庭の絨毯、延いては屋内の床全体の方が、室内でも土足の欧米の家庭の床全体より、ずっと綺麗な可能性が高いと思われます。
日本で掃除機を売る海外メーカーのダイソン社やエレクトロラックス社、ミーレ社は、自国で屋内を綺麗に保つために、ダストピックアップ率の高い掃除機を売るより先に、屋内では靴を脱ぐ習慣を付けましょう、というキャンペーンを張る方が良いのではないでしょうか(※輸入掃除機の公表されているダストピックアップ率はこちら)。
また、実のところ、床と掃除機ヘッドの密着具合を高く評価する欧米製掃除機は、それが故に、より強く吸う為のパワー・数値である吸込仕事率が発達していません(吸込仕事率を高くしても、ヘッドを動かしにくくなるだけという話になっていたはずです)。その為、ダイソンの最新DC63は吸込仕事率170W、エレクトロラックスの最新型エルゴスリーだと250Wと、日本製の1/2にも満たない程度しかありません。
その為、ヘッドの前方にある米粒や猫砂等の固形物を吸い込む力が、弱いとされていますし、最近ではパナソニックの "エアダストキャッチャー" 以来、ヘッド上に舞い上がったホコリも、日本製だと吸うようになってきています(ヘッド上に関しては、これまた曖昧なんですが ^^;)。
分かりやすい "ウリ" としての吸込仕事率
ただ、吸込仕事率による評価が不完全である上に、実際ゴミを吸わせて性能を計るやり方が外国では普通であると大々的に分かってしまった以上、日本としても、ダストピックアップ率的な方法を確立すべきであろうと思えます。延々と吸込仕事率、つまりモーターの性能を上げ続けるよりも、世の中にとって役立つはずです。
特にこの2,3年においては、国内メーカー各社は、紙パック式掃除機において、掃除機における従来の縛りであった消費電力の上限・1,000Wを撤廃してまで吸込仕事率を上げ続けています。
それによって実際の集塵力が高まるのであれば勿論構いません。しかし、サイクロン式では小型機の流行と共に、消費電力を850Wと逆に従来より少なく済ませるのが標準ですので、消費電力を上げてまでのパワーアップは、単に電気代の無駄ではないかと思えます(※⇒適度な吸込仕事率)。
関連ページ:
関連サイト:
・掃除機の「吸込仕事率」って何だろう(ITmedia +D LifeStyle)
・「吸込仕事率」が高いほどゴミがよく取れるの?(三菱 よくあるご質問 FAQ)
・クリーナーの構造と吸い込むしくみを知りたい(東芝公式サイト)