2012年2月14日にエレクトロラックス社から発売となった、新型紙パック式掃除機「ergothree(エルゴスリー)」です。
エレクトロラックスには、かつて "オキシジェン" という排気の綺麗さが自慢の掃除機がありました。しかし、それは欧米基準のビッグサイズであった為、今回のこの機種は、日本市場専用に開発・投入した、やはりHEPAフィルター(標準的なHEPA12型)を採用しての排気自慢の小型機ということになります。
ただ、そうは言っても本体重量は4.5kgなので、日本メーカー製紙パック式だとすれば、余裕で大型機です。
また、従来エレクトロラックス社では、電源&パワ切替スイッチは欧米流で本体にあったのですが、今回は日本用ということで、日本での標準位置の延伸管の持ち手部分に付いています。
また、この機種ではモーターを宙吊り状にすることと、パワー(吸込仕事率)が250Wとかなり低いこともあってか、運転音が抑えられており、57〜50dB(パワーブラシをOFFにするともっと静か)と紙パック式の現行機種としては最高に静かな部類です(※⇒「音の静かな掃除機」)。
このエルゴスリーには、3種のバリエーションが存在しますが(下表を参照)、本体はカラー以外同一で、主には付いているヘッドの種類と、自動パワーコントロールの有無の差となります。
公式サイトを見ると、クリーニング性能ではモーターパワーだけでなく、掃除機内部の空気の流れ "Airflow(エアフロー)" が大事とありますが、吸込仕事率はモーターパワーではなく、ヘッドを付けない状態での吸込口で計るものです。
この機種の吸込仕事率は250Wですので、その工夫したとされる "Airflow(エアフロー)" 性能は既に組み込まれた上で、その数値が出ています。
吸込仕事率という数値は空気を吸うパワーを表しますが、日本メーカー製の紙パック式だと大抵は安物でも500W以上、そして多くの機種では現在600W前後以上ですので、2倍以上の差があります。
床のゴミを吸う性能であるダストピックアップ率は、絨毯上で77%(※カタログ値は80%との説明)と最高レベルで、絨毯の奥のゴミを吸う性能は非常に高いはずです。
しかし、この数値は細かな砂で計るもので、この数値が高くても、絨毯表面の糸くず等が取れるとは限りません。勿論、パワーブラシの機種であれば、その面でも一応大丈夫のはずですが・・・写真を見る限り、この回転ブラシでは少し怪しいかも。
また、使用するヘッドは、両横からは吸うようですが、ヘッドの前からは多分吸えないので、ちょっとした固形物(ねこ砂等)を弾いてしまうという話になるだろうと思われます。もっとも、固形物にはヘッドを上から被せる、そして壁際は必ずヘッドの横で吸う、と心掛けていれば、問題はあまり大きくないかもしれません。
日本製はエルゴスリーの2倍以上ある吸込仕事率を、ヘッドの前で固形物を吸ったり、壁際も前で吸えるように使っています。また、壁際では、単に吸うだけではなく、回転ブラシが壁際ギリギリまで届くよう、考えて設計されています。
これらのヘッド+延伸管+ホース部は約2.0sあるので、やはり日本製より重いです。回転ブラシによる自走力もありませんので、やはり重い本体と合わせて、日本製より取り回しのしやすさは劣ります。
また、そのヘッド裏の吸引口の後部にある、日本製であれば普通起毛製の吸引漏れしたゴミを引っ掛ける横長の部材が、何とゴム質素材で出来ています。
フローリングでこれを使う場合、ヘッドを前後させる度にその部分が一々床に引っかかり、ヘッドが一瞬少し浮いて落ちることで、ガチャガチャと余計な騒音を発します。この機種は音の静かさがウリの一つなので、この欠点は残念でなりません。
しかも、amazonのユーザーレビューによれば、使用環境にも拠るでしょうが、それが頻繁に取れかけて修理が必要になるようです。
あとは、ダストバッグ(紙パック)にシャッターが付いているいう自慢もあるようですが、日立やパナソニックの高額紙パックであれば、普通に付いています。
尚、前作のウルトラワンまでは、HEPAフィルターの半年毎の洗浄、及び5〜7年での交換が必要でしたが、今作からは洗浄・交換共に不要となっています。
…ではこの「ergothree(エルゴスリー)」がどうかと言えば、普通に日立の "かるパック" の最上位機種で良いと思います。フィルターには家庭用としては超高性能なULPAフィルターを採用しており、その性能はこのエルゴスリー以上です。
また、そちらは全体としてこちらより軽く出来ており、運転音も若干静かです。
その割に、吸引パワー=吸込仕事率は2倍の500Wあり、ヘッドも自走式で可動範囲も広く、狭い場所の掃除にも便利です。
なので、基本的にはいいこと尽くめです。
ただし、こちらは絨毯の奥を強く吸えるのがウリですので、アレルギーのある方が排気の綺麗さを求めるだけではなく、絨毯内に溜まったアレルギー性物質を根こそぎ吸引できる性能を求めるのであれば、こちらの方が良いでしょう。
サイクロン式だと排気は綺麗でも、頻繁に必要となるゴミ捨ての際の環境が劣悪で、本当にアレルギーがある方がそれを自分で行うことは困難です。なので、その場合には紙パック式の方が好ましいです。
また、(日本向けの製品で)紙パック式で排気性能に定評があるのは、これと日立・かるパック最上位機種だけですので、結局アレルギーがある方が自分で使う掃除機としては、これが一番ということになります。
※価格に関して、以前これはあまり値引きが行われないと書きました。
エレクトロラックス社製は、このエルゴスリー以前の「ウルトラワン」や「オキシジェン」では、実際値引きは1割程度しか行われず、その価格で何故か横並びで販売されていました。
しかし、同社製の製品の、家電量販店等一般ルートでの販売が始まったのが契機となっているのか、エルゴスリーではごく普通に値引き販売が行われています。
機種別解説
◆ EET530 オート
エルゴスリー上位機種の「EET530 オート」と、かるパック最上位機種の最安値(※発売後半年程度以上は経過しないと安くなりません)とでは、ネットでの実売価格として1万円も違いませんので、外国製の高性能機種としては、かなりお値打ちだと思います。
しかも、実はかるパック最上位機種用の紙パックは、価格が極端に高く、エルゴスリー専用品の約250円の2倍の約500円です。そして、3ヶ月に一度紙パックを交換するとなると、1年にそれが4枚必要となりますので、1年間で約1,000円の違いとなります。
両者を、掃除機の製品寿命の基準となる7年間使用した場合、それで約7,000円の違いとなります。
なので、実のところ紙パック代も含めると、価格的にはあまり違いはありません・・・。
◆ EET520 パワー
中位機種「EET520 パワー」は、「EET530 オート」から、専用の布団用ノズルとパワー自動モードを除いただけの機種となります。
それで実売価格にして3,000〜5,000円の差となりますので、それらがなくても気にならない方には、お手頃で良いのではないでしょうか。
専用布団用ノズル "ミニパワーノズル" に関しては、別売がありますので後から買い足すことも出来ますが、価格は税込9,180円もしてしまいます。
なので、それを購入するかもしれないのであれば、最初から付属している上位機種にしておいた方が良いでしょう。
パワー自動モードに関しては、後から追加することは不可能です。
※ミニパワーノズルとの特別セット有。
◆ EET510 マルチフロア
下位機種「EET510 マルチフロア」に関しては、価格は比較的安いですが、ヘッドが回転ブラシのない物なので、絨毯は勿論として、フローリングを掃除する上でも物足りません。
ダストピックアップ率の数値は、上位機種ともあまり差がないようですが、それはやはり実験上の数値でして、静電気や湿り気でフローリングに張り付いたチリを掻き取ったり、絨毯から糸屑を取ったりする性能にはかなり差があるはずです。
また、絨毯の奥にあるゴミを吸い出すにしても、回転ブラシで掻き分けた方が有利なはずです。
なので、私としてはあまり感心できませんが、支払い可能な価格がこれで限界であれば、これでも良いだろうと思います。
機種 | オート (EET530) | パワー (EET520) | マルチフロア (EET510) |
パワーブラシ (モーター式回転ブラシ) | 〇 | 〇 | × |
ダストピックアップ率(※日本製は全機種未計測) パワー3(強): パワー1(弱): | 硬質床 99%/絨毯 80% 硬質床 96%/絨毯 75% | 硬質床 99%/絨毯 80% 硬質床 96%/絨毯 75% | 硬質床 99%/絨毯 74% 硬質床 96%/絨毯 70% |
パワー自動モード | 〇 | × | × |
吸込仕事率 | 250W | ||
本体重量 | 4.5kg | ||
ボディカラー | クリアブルー ソーラーオレンジ | アストラルホワイト | ダイヤモンドサンド |
特殊付属品 | ミニパワーノズル (※主に布団用) | × | × |
価格 | 7万8800円 | 7万3800円 | 6万8800円 |
※ちなみに、「エルゴ」とは、ギリシア語の "ergon" (働く)から来ており、これは現代日本では "エルゴノミクス" (人間工学)という単語の中で使われています。そして、どうもそのエルゴが3種類(three)あるということで、「エルゴスリー」という話のようです。「スリー」は、"パワフル" "サイレント" "クリーン" の3要素を指すという話で、それらが最高性能かつ理想的な形で融合しているということで、そういう名前となったそうです。"最高" と "理想的" という意味は、勝手に足されている気がしますが(汗)。
このエレクトロラックス社では、他にも「エルゴラピード」(ergo rapid=素早く働く)というお洒落なスティッククリーナーも販売中です。…更に、その "ergo rapid" から肝心のエルゴが失われた??、ハンディクリーナーの単なる「rapid(ラピード)」も、何と販売中です。闇から現れた "rapid plus" は、ハンディタイプとしては最高レベルの吸引力を誇るはずです。
※価格は変動します。時価は必ずリンク先にてご確認下さい。
・EET530 エルゴスリー オート | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:パワーノズル(パワーブラシ) ・目詰まり対策:― ― ― ・吸込仕事率:250W ・本体重量:4.5kg/ 全体重量:約6.5kg ・運転音:57〜約50dB(パワーノズルOFFで43dB) ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):折り畳み式 ・色:ソーラーオレンジ(SO)、クリアブルー(CB) ・HEPAフィルター仕様 ・(パワー自動コントロール) ・ミニパワーブラシ付(布団等用) | |
・EET520 エルゴスリー パワー | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:パワーノズル(パワーブラシ) ・目詰まり対策:― ― ― ・吸込仕事率:250W ・本体重量:4.5kg/ 全体重量:約6.5kg ・運転音:57〜約50dB(パワーノズルOFFで43dB) ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):折り畳み式 ・色:アストラルホワイト(AW) ・HEPAフィルター仕様 | |
・EET510 エルゴスリー マルチフロア | |
・楽天 ・amazon [レビュー有] ・楽天レビュー:レビュー(_件)を参照 ・ヘッド形状:マルチフロアノズル(ノーマルヘッド) ・目詰まり対策:― ― ― ・吸込仕事率:250W ・本体重量:4.5kg/ 全体重量:約6.5kg ・運転音:57〜約43dB ・排気方法:― ― ― ・持ち手(本体):折り畳み式 ・色:ダイヤモンドサンド(DS) ・HEPAフィルター仕様 | |
関連ページ:
・日立 CV-PC500 かるパック(かるパック最上位機種)
・Z8811 UltraOne(ウルトラワン)(異常に重かった先代モデル)
・Z5954 オキシジェン・アップグレード(ヒットした先々代モデル)
関連サイト:
・Electrolux | ergothree(エルゴスリー)
・レビュー エレクトロラックス「ergothree auto」(家電Watch)
・その静かさ予想外 赤ちゃんが起きない掃除機「エルゴスリー」を試した(BCNランキング)
・エルゴスリーの生産ラインは、他のラインより2倍ほど長い(家電Watch)
・事業部長インタビュー エレクトロラックスが本気で作った“日本向け”掃除機とは(家電Watch)
・buzzlife、7万円以上の“プレミアム掃除機”の性能比較イベント(家電Watch)(「ergothree auto EET530SO」が高評価)
・見るのはTVを消してから。掃除機エルゴスリー「いちばん静かな吸引力」はどれくらい静かなのか?(movieTIMES ムービータイムス)