「TC-ZK20S」、及び「TC-ZK15S」は2010年8月1日に三菱電機から発売されるサイクロン掃除機です。サブネームとして「風神」とも呼ばれるようです(以前から三菱製の掃除機の一部は風神と呼ばれていたので、風神=風神サイクロンという訳ではありません)。
二つのサイクロンで、三段階にゴミを取り除くなどと言っていますが(1段目は多分カーブで曲がり切れない大きなゴミが、そのままダストボックスに飛ばされているだけ)、実のところあまり意味はないと思います。ダイソンは二段式ですが、二段目は10か所程度で小さく鋭いサイクロンを同時発生させて、細かなゴミを取り除いています。しかし、これは単純に二つのサイクロンを(場所的には左右ですが、実質は前後)並べただけなので、エネルギーロスを考えれば、一箇所で強いサイクロンを発生させるのと大差ないはずです。
ただ、今回の新製品で目新しいのは、吸込仕事率が250Wに抑えられていることです(公式発表は現在なしで、販売店ページから発覚)。
強いサイクロンを作ると、そこでエネルギーが消費されてしまうので、吸込仕事率は下がるのですが、ダイソン並みに吸込仕事率を犠牲にして、強いサイクロンを作っているようです。
国産掃除機の吸い込み仕事率は大抵500W以上ありますが、ダイソンのDC26 motorhead completeを使った経験から言って、170Wという低レベルの吸引力でも、ヘッドの前からゴミを吸う、つまり部屋の隅の掃除のしやすさを犠牲にすれば、実は十分強く吸えるのです。
これら「TC-ZK20S」&「TC-ZK15S」では、ダストボックスのフィルターを排したと宣伝していますが、ダストボックスに付いていないだけで、本体に従来と同様のフィルターが付いていれば、詐欺のようなものです。なので、やはり吸込仕事率を犠牲にして、サイクロンの性能を上げて、ダストボックスのフィルターを排したのでしょう。
毎日6分間の使用で、4年間吸引力は99%持続するとも宣伝されているようですが(⇒サイクロン式の新機種 asahi.com)、2,3年前には10年間フィルター掃除不要!と謳いつつ、そんなには持たないサイクロンが数多く売られていました。なので、それについては何とも言えませんが、とりあえず信用は置けません。
また、これら「TC-ZK20S」&「TC-ZK15S」にはエアエンジンブラシ等という、聞こえの良いヘッドが装備されていますが、これは単に風で回るタービンブラシです。
ただ、国産によくあるように吸込の風で直接回転ブラシを回すのではなく、小さなファンを回して、ベルトでその動力を回転ブラシに伝えるダイソンと同じ(若干コスト高な)方式をとっています。
その方式が、どの程度効率的なのかは分かりませんが、吸込仕事率が低いのであれば、回転ブラシはタービン式ではなく、モーター式にすべきです。安物ならともかく、今回の機種は高級機なので当然なのですが、まさかダイソンのタービン式を真似ることで満足したのか、パワーブラシ式はラインナップされていません。ここのところははっきり不真面目だと言えるでしょう(この価格帯で売るのであれば、吸込仕事率が低いという性質上、タービン式はなくても構わない位です。フローリング用としては、力が弱くて軽いモーターを積めば良いと思います)。
運転音に関しても、68〜約63dBとされているので、国産掃除機として最低レベルです(ダイソンは運転音未公表)。原理的に、強いサイクロン気流を作れば、その分音は大きくなるせいだと思われますが。
(※追記:実際の運転音はそれ程大きくありません。意外と普通の掃除機といった感じでした)
なので、新しい物・珍しい物好きな方には良いかもしれませんが、普通の方は、ダイソン製かシャープ製を買っておけばそれで良いだろうと思います。
もし、ダイソンのサイクロンに匹敵するサイクロンシステムを作り出せれば、それは単なる新製品に留まらず、新発明の粋となり、もっと大騒ぎとなります。なので、少なくともこの新製品が、画期的なものであることはないでしょう。何と言っても、細かいホコリまで遠心分離するのに必要な遠心力は、15万(150,000)Gなのですから。
(※以前の三菱製最高級サイクロン・ラクルリエアよりは良いと思います。デザイン面以外の話ですが)
ただ、一つシャープ製の高級機よりも優れているかもしれないのは、自動フィルタークリーニング機構がないことです。こちらでは通常の運転音は五月蠅い(うるさい)はずですが、電源を切った時の、カタカタというフィルターを振動させる異音を聞かずに済みます。
[※追記です] 発売になったので店頭に行って見て来ました。確かにダストカップにはフィルターがありませんでしたが、本体側にしっかりいつものプリーツフィルター(アコーディオン状に繰り返し折り畳んで表面積を増したメインフィルター)が付いていました。(笑)
しかも、遠心分離をウリとするサイクロンに付いているようである、脱臭シートという名のスポンジ式フィルターのようなものが、プリーツフィルターの前にちゃんと付いていました。それがあると、大きめのゴミがサイクロン部を通り抜けても、プリーツフィルターに張りついたりはしなくなるのです。
三菱の公式サイトに取扱説明書がアップされていたので、見てみましたが、そのプリーツフィルターは何と意味不明に "カートリッジ" と呼ばれ、プリーツフィルターと脱臭シートを併せて "カートリッジセット" と呼ばれていました(カートリッジがセットされていないと電源は入らないようですが、外している時に物が入らないようにか、その下に更にモーター保護フィルター有)。
…発売前の段階で、カートリッジなる不明の機能があるのには気が付いていましたが、これがまさかいつものプリーツフィルターだとは思いませんでした。なるほど、 "カートリッジ" ならありますが、フィルターはありませんか。確かに、三菱はダストカップにはフィルターがないと言っているだけなので、本体側にあってはいけない訳ではないのですが、名前を誤魔化してフィルターがないかのように見せかけるなど殆ど詐欺だと思います。
(※マスコミも含めて、どうも皆がフィルターレスだと思い込んでいるようです。酷いことをしたものです。更に、三菱掃除機のカタログを見ると、カタログを作った人も若干分かっていない気がします・・・ ⇒「TX モーニングサテライト・ネタのたね」※トップページに強制的に飛ばされてしまう場合には、キーボードの左上の「Esc」ボタンを押して下さい!)
説明書には、そのカートリッジを、汚れが気になる時に洗ってくれ、と書いてありますが(ダイソン製で洗う、もしくはホコリを払う必要があるのはスポンジフィルター部のみです)、普通そんなところは開いて見ませんので、汚れの気になる時等多くの人にはあり得ないと思えます。フィルターが収納されているので、吸引力が落ちてきた時にはそこを掃除してくれとちゃんと書かないと、説明書の意味がありません。汚れが気になった時には洗ってくれなどと書いておくだけでは、吸引力が落ちた時に掃除機を買い替えてしまう人が現れるかもしれません。
また、「TC-ZK20S」&「TC-ZK15S」の両機種に装備されているタービン式の「エアエンジンブラシ」ですが、これがカタログや公式サイトでは、モーター式最上位ヘッドのラク走マルチパワーブラシと同等の清掃力を持つとグラフで表されています。
しかし、パクリ元のダイソンでも、タービン式はモーター式に劣るとはっきり言われていますし、また、世の常識でもそうなっています。実物を見た限りでも、ラク走マルチパワーブラシが6条ブラシ(6列のブラシが回転ブラシの軸に植え込まれ、高速で交代に床に当たる)であるのに対し、エアエンジンブラシでは4条ブラシに過ぎませんでした。ブラシの硬さも同等に思われたので、あれでラク走マルチパワーブラシと同等ということはないだろうと思います。
回転ブラシの性能は、恐らく非自走式のモーター式パワーブラシ(パワーブラシの中で一番低い性能)より若干下となるはずです。非自走のパワーブラシを装着した機種としては例えば、日立のCV-SR9が挙げられます。
もっとも、毛が絡んだ場合に取りやすい構造になっているので、その点では特にペットがいるご家庭には良いと思いますが。
また、これは設計上の欠陥と言っても良いものと思いますが、これら「TC-ZK20S」と「TC-ZK15S」は、何と本体を持ち上げて(=片手に持って)掃除をすることが事実上不可能です。なぜなら、持ち手が恐らくはデザインを優先したために本体前部にしかなく、本体を持ち上げるとダストカップが逆さになるために、ゴミが "カートリッジセット" なるフィルターのところに流れ込んでしまうからです(⇒「長期レビュー 三菱電機「風神 TC-ZK20S-R」その2 by 家電Watch」)。
しかし、ということはつまり、掃除の最中の、ゴミがダストカップに溜まっている状態で本体を持ち上げると、ゴミがフィルター部に落ちてしまうということではないのでしょうか?
構造上、全部が落ちる訳ではないはずですが、サッと勢い良く持ち上げると、幾らかは落ちるものと思います。
四輪にしたので、本体を斜めに引っ張っても傾かない等という話もウリ文句としてありますが、昔の掃除機ならともかく、最近の掃除機だと引っ張っても傾いたり倒れたりということは、まずないはずです。知識のない人を引っ掛けているのか、それとも他社の掃除機の知識がないのか・・・。四輪(前輪としてキャスターを2つ装備)だと段差乗り越えや、本体のコードを自分で踏んだ際に二度当たりがあるので、利点だけではないのです。
ダストボックスが丸洗いできるというのもウリのようですが、何故それがダイソンには出来なくて、三菱には出来るのかと言えば、形状が単純だからです。ダイソンの物は数千の試作を経て完成した複雑な物で、洗うと乾きにくく、残った水分をモーターが吸って故障の原因になるからだと思われます。(⇒ルートサイクロンの図解はこちら)
これら風神サイクロンの、ゴミが最初にクルクル回る一つ目のサイクロンで、大きめのゴミを別室へ飛ばす工夫は新しく良いものだと思います。また、ダストカップを、底が開く方式ではなく、カップ型にしたのは英断だと思います。実際、底が開いて豪快にゴミが落ちるよりも、カップ型の方がゴミをそっと捨てやすいですし、また、(底の下に開く)蓋の内側の部分にゴミが残ることもなくて良いと思います。
ただ、メーカーとして信じられないようなことをやっているので、こういうものを買って良いのかには疑問が残ります。
もちろん、ここを読んでも欲しい方は遠慮なさらずお買い求め下さい。買ってはいけないというまでの物ではありませんし、また、気に入った製品が見つかったのであれば、何よりだと思います。
※価格は変動します。時価はリンク先にてご確認下さい。
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![]() | ・楽天![]() ・amazon [レビュー有] ・口コミ・評価:感想(_件)を参照 ![]() ・ヘッド形状:エアエンジンタービンブラシ(ダイソン方式) ・目詰まり対策:4年間吸引力99%持続(1日6分使用時) ・吸込仕事率:250W ・本体重量:4.9kg ・運転音:68〜約63dB ・持ち手(本体):不明 ・色:ピアノブラック、ルビーレッド 〜 以下TC-ZK20S用追加装備 〜 ・ふとんブラシ、ハキトリブラシ、キャッチブラシのブラシセット付属 ・プラズマ除菌(ナノイーやプラズマクラスターのようなものをフィルター部に放出)&回転ブラシ部抗菌・対アレル加工付 |
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![]() | ・楽天![]() ・amazon [レビュー有] ・口コミ・評価:感想(_件)を参照 ![]() ・ヘッド形状:エアエンジンタービンブラシ(ダイソン方式) ・目詰まり対策:4年間吸引力99%持続(1日6分使用時) ・吸込仕事率:250W ・本体重量:4.9kg ・運転音:68〜約63dB ・持ち手(本体):不明 ・色:メタリックブルー、メタリックマゼンダ |
上の「TC-ZK20S」には、フィルター部のプラズマ除菌がありますので、フィルターにニオイが付きにくいと思います。つまり、ペットのいるご家庭向きのはずです。
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・楽天![]() ・amazon ・口コミ・評価:感想(_件)を参照 ![]() ・ヘッド形状:ノーマルヘッド ・目詰まり対策:ダブルサイクロン式(目詰まりしにくいらしい・・・) ・吸込仕事率:230W ・本体重量:5kg ・色:レッド、ブルー(数量限定) ・HEPAフィルター×2仕様 ・ボーリング玉4つ(計28kg)を軽々持ち上げる驚異のパワー!(??) | |
関連ページ:
・シャープ EC-CP11(風神のライバル機種です)
関連サイト:
・才職兼美 × 三菱電機サイクロン式掃除機「風神」 凄い金のかけ方・・・
・三菱サイクロン式掃除機「風神」TC-ZKシリーズ発売のお知らせ
・本家ダイソンに対抗! 国内メーカー初“本当の”サイクロン掃除機の切り札は?(日経トレンディネット)