掃除機を選ぶに当り、やはり《吸引力》を目安にしたいという方もいらっしゃるかもしれないと思い、ランキング形式でまとめてみました。
最近では、"ダストピックアップ率" という欧米で採用されている基準もありますが、国内メーカーではその基準では未計測ですので、"吸込仕事率" という単位での比較ということになります(※⇒「吸込仕事率とは」)。
【紙パック式】
670W | 660W | 650W | 640W | 630W | |
東芝 | (2014) (2013) (2012) (2013) (2012) | (2010) | |||
パナソニック | (2012) (2011) | (2010) | |||
日立 | 680W: (2015) (2014) 670W: (2013) | (2013) (2012) | (2014) (2013) (2013) (2012) (2011) | (2014) (2013) (2013) (2012) (2011) (2010) | (2010) |
三菱 | |||||
シャープ | |||||
サンヨー |
【サイクロン式】
650W | 640W | 630W | 620W | 610W | |
パナソニック | (2011) | (2013) | (2011) (2010) | ||
日立 | (2013) | (2012) | (2013) (2012) (2011) (2010) | (2015) (2014) (2013) (2012) (2011) (2010) | (2011) (2010) (2009) |
東芝 | (2011) (2009) | ||||
三菱 | |||||
シャープ | |||||
サンヨー | (2010) |
※三洋の機種と、三菱の旧型の一部の機種は、紙パック・サイクロン両用式です。
紙パック式
紙パック式掃除機では、現在吸込仕事率680Wの日立製が、吸引力のトップということになります。600Wもあれば、吸込仕事率はかなり高いと言えるはずです。
ただし、掃除機ではヘッドの性能もかなり問題となりますので、一概に吸込仕事率が良いからゴミを良く吸うとは言えないのです。
しかし、勿論、吸込仕事率が高ければ、一度に沢山の空気を吸えることは確かです。吸込仕事率が低いのに吸引力が強いと言われる掃除機は、ホースが細かったり、吸いつきを良くするために吸入口を絞ってあると思います。
また、すき間ノズルを使う際には、吸込仕事率の差が出ることがあるようです。その為、すき間ノズル使用時の満足度が掃除機の満足度につながりやすい方は、吸込仕事率の高い機種を買っておいた方が良いかもしれません。
ちなみに、国内メーカー製紙パック式掃除機の吸込仕事率は、500W以上が普通です。そしてそれ以下の数値となると、事実上例外品ということになります。
※実は2012年度からは、パナソニックが吸込仕事率アップの競争から降り、上位シリーズでは静粛性との両立を計り始めました(パワーアップを図り続けると、どうやっても運転音の面で不満を持つ購入者が減らないのです)。
逆に、日立と東芝、そしてパナソニックの中位機種では、パワーアップをし続ける為に、何と今まで通常サイズの掃除機では最大1,000W(※ダイソンのみ1,100〜1,150W)で横並びであった消費電力を、10%〜18%上げてしまいました(汗)。これはそれを止めさえすれば、"従来比15%の省エネ達成!" と軽くウリ文句に出来る数値ですので、酷い改悪です。
パナソニックの最新の上位シリーズは、吸込仕事率を最大570W(※消費電力は1,000W)に抑えられている為、もう上の表からは外れています。
- パナソニック 570W MC-PA34G(※2014年度型)
- 東芝 550W VC-PG314(※2014年度型)
- 三菱 530W TC-BXA15P(※2011年度型)
- 日立 360W CV-PC500(※2015年度型)
- シャープ 上級機なし
これらは、2015年度における国内有名メーカー各社の紙パック式最上位機種の吸込仕事率ですが、見ての通り、全く高くはありません。
高価格で売ることが前提の最上位機種で、吸引力が不十分ということは基本的に考えられません。なので、メーカーとしてはこの程度で十分と考えているものと思われます。
ただし、360Wの日立機のみ、吸引力より超小型化+排気性能を優先していますので、それのみそれらの性能を重視する方向けです。
サイクロン式
サイクロン式では、実のところ吸込仕事率が高い掃除機は、サイクロン部が優秀ではありません。なぜなら、強い空気の渦(サイクロン)をつくる程に、そこでパワーを食われて吸引力は落ちてしまうからです。
ずっと評判が高かった、シャープのサイクロン掃除機は、吸込仕事率は最大でも450Wしかありません。
また、あの "吸引力の変わらないただ一つの掃除機" のダイソン製では、生産終了品を含めて最も吸込仕事率が高い機種でも、何と210W、最新型では170/160Wしかありません(※歴代の数値)。
海外製は、ヘッドを床に密着させる方法を取るため、実はこのレベルの吸込仕事率で掃除機を作るのが標準的で、かつ砂を吸い取るのが得意ですので、これでも必要十分なのです。
実は、家電Watchというネット上の家電情報サイトで、サイクロン掃除機に小麦粉を吸わせての吸引力比較実験を行っていましたが、やはりダイソン(「DC63」)が一番でした。
日本製に関しては、吸込仕事率は200W〜400Wまでありますが・・・実のところ吸込仕事率はあまり関係ないようです(汗)。
これに関しては、600W以上ある紙パック式でも不思議とあまり違いはないはずです。…当然ダイソンには負けています。
家電Watchは、コードレス機も比較実験しており、ダイソンの100W機「DC62」(現「V6」)がやはり断トツで一番でした。
しかも、注目すべきは、床面を吸う力自体は、日本製の横置き型のサイクロン掃除機よりも強いようであることです。とは言え、実はその機種は、コードレス機とは言え、価格は日本製のヨコ型高級機とも同等の高額機種でもあります。
ただし、海外製はヘッドを床に密着させるため、固形ゴミは弾きやすく、部屋の隅は掃除しにくいといったそれなりの欠点を持っており、日本メーカー製はそのような欠点を避けて作っていると見ることも可能です。
※これは紙パック式ですが、ミーレの220W機です。仮に660Wであれば、この3倍です。
そういう訳ですし、サイクロン式では、紙パック代が必要ない代わりにフィルター掃除という余計な手間がかかりますので、(ダイソン製以外を選ぶ場合には)サイクロン部分の評判を第一に考えるのが良いのではないでしょうか。
なので、サイクロン掃除機で吸込仕事率を基準に掃除機を選ぶのは、少し問題があるように思います。
サイクロン掃除機の場合、吸込仕事率が、
- 200W程度:高遠心分離力
- 300W程度:そこそこの遠心分離力の小型機
- 400W程度:そこそこの遠心分離力の中・大型機
こういった形となっています。
ただし、まともに遠心分離していないものでも、似たような数値となっている場合がありますので、吸込仕事率でサイクロンの性能を判断することは、不可能となっています(※詳細⇒「おすすめの掃除機・サイクロン式」)。
そして、残りの600W級の妙なパワー自慢の日立製とパナソニック製のサイクロン部の構造は、これらの写真のようになっています。
実のところ、これらの構造は紙パック式とあまり変わりないので、それに近いパワーが出るようになっています(※⇒「なんちゃってサイクロンとは」)。
■その他の掃除機の吸引力ランキング[原則最新]■
【紙パック式】
629〜600W | 599〜560W | 559〜530W | 529〜500W | 〜499W | |
東芝 | VC-PD8A (620W) | VC-PD7A (580W) | VC-PG314 (550W) | VC-PC6A (520W) | |
パナソニック | MC-PK16G (600W) | MC-PK16A (580W) MC-PC34AG (570W) | MC-PKL16A (520W) MC-PA35G MC-PA15J MC-PB5A MC-PB5F (500W) | MC-JP510G (300W) | |
日立 | CV-VW7 (600W) | CV-VP5 (530W) | CV-PC500 (360W) CV-CG3 (200W) | ||
三菱 | TC-BXA15P (530W) | TC-FXE10P TC-FXE8P TC-FXE7P TC-FXE5J (500W) | |||
シャープ | EC-KP7T EC-KP7F (500W) | ||||
ダイソン | |||||
エレクトロラックス | EET530 EET520 EET510 (250W) | ||||
ミーレ | SDCO0NB SDBO0MR (220W) SDAO0CY SDAO0RG (225W) |
【サイクロン式】
609〜500W | 499〜400W | 399〜300W | 299〜200W | 〜199W | |
東芝 | VC-C4 VC-C4A (290W) VC-MG900 VC-MG800 VC-MG600 VC-S500 (200W) | ||||
パナソニック | MC-SK16J MC-SK16A (500W) | MC-SR23J MC-HS700G MC-HS500G MC-SXD430 (300W) | MC-SR530G MC-SR33G (200W) | ||
日立 | CV-SC700 (430W) CV-SC500 (420W) CV-SC300 (410W) | CV-SC100 (340W) CV-SC90 (330W) | |||
三菱 | TC-EXE10P (320W) TC-EXE8P TC-EXE7J (300W) | TC-ZXE30P TC-ZXE20P (200W) | |||
シャープ | EC-CT12 (450W) | EC-QX310 (300W) | EC-VX700 EC-LX700 EC-LX600 (210W) EC-PX700 EC-FX60T (200W) | ||
ダイソン | CY24MH CY24MHCOM DC63COM DC63MH (170W) DC63TH (160W) | ||||
エレクトロラックス | |||||
ミーレ |
…ご覧の通り、何とダイソンがワーストです(笑)。綺麗に終わりましたということで・・・。
清掃力(吸引力)はヘッドが重要
実のところ、吸引力(吸込仕事率)が高くても、絨毯にくっ付いた髪の毛等はなかなか取れません。また、やはり絨毯やフローリングに静電気で張り付いたホコリも、掃除機ではあまり取ることが出来ません。
例え外国基準のダストピックアップ率が高くても、測定時には(日本においての)日常的な状況は再現されておらず、フローリング上では普通測定には「けい砂」という鉱物が使用されています。
絨毯上では、けい砂に加え、一応糸くずゴミ(これは髪の毛も想定しているのかもしれません)と繊維ゴミの実験項目もありますが、外国製もそこまでは公表していません。
また、床には静電気までは生じていないはずですし、湿って踏まれて貼り付いたゴミ等、想定外です。
しかし、それらを解決可能なのが、掃除機ヘッドの裏に付く回転ブラシです。これは、絨毯に絡んだ髪の毛や、フローリングに張り付いたホコリも、物理的に掻き取ることが可能です。
絨毯内部の粉状ゴミに関しては、それでもダストピックアップ率が高い方が良いはずですが、日本製掃除機では未測定です。これには、日本では室内で靴を脱ぎますので、室内には砂等殆どないという実情が反映されているはずです。
また、ダストピックアップ率が高いとされる外国製だと、先程も少し触れたように、ヘッドを床に出来るだけ密着させようとするので、ヘッドの前方の猫砂や米粒等の固形物には弱かったり、マット等に吸い付きやすく、壁際にも弱い等の、日本製にはない弱点があります。
そして、掃除機本体の吸引力自体は、(一応遠心分離する)サイクロン式では、高級機種では300W以下の物が多いですが、ダイソンは別物としても、日本製でもそれで一応十分です。
紙パック式の場合には、1万円以下の製品でも大抵どれも500W以上あるので、安物でも吸込仕事率はサイクロン式より上なのです(ただし、ゴミが溜まって来ると吸引力は落ちてしまいますが、、、サイクロン式もフィルター掃除をしないと、やはり吸引力は落ちてしまいます)。
なので、現状では殆ど回転ブラシの性能こそが、掃除機の清掃力を決めてしまっていることになります。
日本製の吸込仕事率が低いサイクロン掃除機に関しては、吸込仕事率は同メーカーの紙パック式の3〜2分の1しかありませんし、外国製のように床に密着させるタイプのヘッドでもありません。
しかし、基本的にヘッドはその条件に対応した設計にしているはずですので、回転ブラシの高性能さも手伝えば、十分カバーできるという事なのでしょう。
ただし、回転ブラシにもピンからキリまでありますので、どのような回転ブラシ(ヘッド)が高性能なのかというと、
- 自走式のモーター式回転ブラシ
- 非自走のモーター式回転ブラシ
- タービン(風力)式回転ブラシ[※非自走]
- 昔ながらの回転ブラシなしヘッド
の順となります。


※左:自走モーター式 / 右:タービン式
自走式の回転ブラシというのは、その回転力が強いために、ヘッド自体が自走力を持つもので(微弱な場合も有)、非自走とは、自走する程には回転力がない製品です。当然回転力の強い自走式の方が、清掃力も高くなります。
また、性能は原則価格に比例しており、日本製の場合、パナソニック、日立、シャープの高級機は、どれも自走式モーター式回転ブラシの中でも高性能品(紙パック式とサイクロン式で、ヘッド&回転ブラシは基本共通です)で、あとはダイソンは、以前は日本のフローリングや畳向きではありませんでしたが、2010年10月発売のDC26CF以降の現在では、それらとも少なくとも同等と言えるでしょう。
ただし、絨毯掃除を重視する場合には、欧米メーカーとしてダストピックアップ率を重視し、回転ブラシも備えた上で、吸引力が変わりにくい(下がりにくい)掃除機として、ダイソン(現行機種は「DC63」)は良いと言えるでしょう。壁際やヘッド前の固形ゴミには弱かったり、小さなマット等では動かしにくいという弱点もありますが、そういう長所も確かにあります。…まあ日本では、日本のメーカーの物で十分と言えば十分のはずですが・・・。
ヘッドは、最上級機(⇒「各社最高性能品一覧」)と同じ物が、それより少し安い機種にも付いていることが多いですので、そこが高い中でもお買い得、ということになります。
(※公表されている外国製掃除機のダストピックアップ率については、こちらをご覧下さい)
関連ページ: