サイクロン式の基本的知識として、時々のフィルターの掃除の必要が挙げられます。そろそろ皆さんサイクロン式はフィルター掃除が面倒だという噂を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
サイクロンとは言っても、実のところ、宙を漂ってなかなか床に落ちないようなホコリがそんなに簡単に遠心分離できるわけがないのです。なので、排気を綺麗にしようとすれば、結局フィルターでホコリを濾し取ることになり、その結果いずれフィルターが詰まって、フィルターの掃除をしなければならなくなるのです。
つまり、サイクロン式というのは、実は紙パック式以前にあった "フィルター式" という方式と、空気を回すことでゴミを遠心分離する方式を組み合わせたものに過ぎないのです。
それはダイソンにしても同様です。ただし、サイクロン装置の優秀さには各メーカーで差があり、やはり家庭用サイクロン掃除機の元祖・ダイソンが一番優れています。
近年は、特に高額機種においては、日本製でもまともなサイクロン掃除機が増えており、パナソニックのダブルメタルプチサイクロンと、シャープのパラレルフローサイクロン&2段階遠心分離サイクロン、東芝のトルネオVが、ダイソンには敵わないまでも比較的マシな造りとなっています。
しかし、それら以外だと、フィルターに頼る割合が高く、サイクロン式というよりは、サイクロン式とフィルター式のハイブリッド方式と言った方が相応しくなります。
そして、それらの中で一番マシだと言えるダイソンは、まだまだ完璧ではないにもかかわらず、普通は買えないほどの価格設定となっています。
なので、紙パック代を惜しむのでなければ、基本的には紙パック式で全く構わないと思います。
紙パックはそんなに頻繁に換えるものではありません。多くの人は2,3カ月に一回程度ではないでしょうか?
もちろん一円でも節約できるものなら、節約したいという方々もいらっしゃいますので、そういう方にはサイクロン式が良いかもしれません(※⇒紙パック代節約の達人達の会話)。
ただし、フィルターホコリで詰まったままで掃除を続けると、モーターに過剰な負荷がかかって、掃除機本体の寿命を縮めてしまいます。
また、長年の使用、もしくは酷使でフィルターが完全に目詰まりを起こし、フィルター掃除をしても吸引力が戻らなかったり、その最中にフィルター自体を痛めたりして交換の必要が生じると、1,000〜3,500円(送料別。高額機種程高いです)程度かかります。
なので、一度 "やってしまう" と、格安紙パック数十枚分の出費となってしまいます。
サイクロン式で一番優れているところは、実は一回の掃除で取れるゴミの量が分かるところです(笑)。その点を、掃除が楽しくなった、やりがいが出来たと絶賛する人が多いのです。
その他よくある疑問・誤解を、Q&A方式で書き出してみます。
サイクロン式はパワーが凄いらしいですね!
吸引力は、原則的に紙パック式の方が高いです。サイクロン式では吸気が紙パックを通過せずに済みますが、フィルターを通るので結局同じことなのです。
また、遠心分離用の空気の渦(=サイクロン)を作るために、空気の流れを強引に曲げまくりますので、その分パワーが落ちてしまいます。
サイクロン式は吸引力が落ちないんですよね?
しばらくはという程度ですが、吸引力が落ちないと言えるのは、とりあえずダイソン製だけです。数年前の国民生活センター調べですが、ダイソン以外の国産サイクロンだと、紙パック式より吸引力が落ちるのが実は速かったりします。
近年、〇年間フィルター掃除不要、と説明する機種もありますが、"モデルゴミ" と呼ばれる掃除機の性能テストの際に用いられるゴミは、一般家庭で吸込むゴミと質が違うので、困ったことにまともには参考になりません。特には、テストでは湿ったゴミを吸うことが一切ないのが、マズいかもしれません。
そんなこんなで、ダイソン等一部のサイクロンを除いては、サイクロン式というのは、紙パックが必要ない代わりに吸引力が落ちやすい掃除機、ということになって来ているように思います。(^^;
最近では日本製でも、前述のパナソニック・ダブルメタル型と、シャープ・パラレルフロー型&2段階遠心分離型、東芝・トルネオVだと、サイクロン(渦)を強化して吸引力が落ちにくくなっているという話ですが・・・(ヘッドを含めて)吸引力の面でも多少疑問が残り、あまりパッとしません。
パナソニックが「掃除機徹底比較 紙パック式VSサイクロン式」と称して、吸引力の比較グラフを作っていますが、これは基本的に遠心分離をしない(偽)サイクロン掃除機の場合です。有名な旧サンヨー製のエアシスも、こんな感じです。
サイクロン式は排気が綺麗と聞きます。
排気の綺麗さは、フィルターや紙パックの性能次第です。サイクロン式だから綺麗ということはありません。
ただし、サイクロン式は安めの機種でもかなり良いフィルターを使っていることがあり、特にメーカーの純正品以外の紙パックを使っている紙パック式掃除機と比べると、はっきり綺麗と思われます。
また、排気の臭いに関しては、サイクロン式がゴミ捨てを頻繁にしなければならないせいで、掃除機内部にゴミを溜め込ま(め)ないので、その分圧倒的に有利です。ただ、やはり紙パック式も、原則紙パックの価格に比例して対策が施されています。
サイクロン式はゴミ捨てでホコリが舞うと聞きますが・・・?
それはサイクロン式の宿命とされています。しかも、サイクロン式では、ゴミ捨ては毎回捨てるのが推奨されたりします。
ただ、(あまり遠心分離しない、いい加減なサイクロン掃除機の場合)フィルターの前にティッシュを挟んでおくとゴミが比較的舞いにくいように捨てることが出来ますし、フィルター掃除も少し楽になります。
また、ゴミ捨ての際だけでなく、フィルター掃除の際にもホコリが舞います。
なので、メーカーの宣伝として排気のきれいさが謳われていても、それを鵜呑みにしてアレルギー体質の方がサイクロン式を買ってしまうと、非常に不味いはずです。アレルギー体質の方は "無理をせず" 紙パック式にしておいた方が良いでしょう。
ただし、シャープの旧シリーズの最上位機種(「EC-VX600」)の場合には、ゴミ圧縮用の大型スクリューが付いていますので、ゴミ捨ては他より相当マシとなっていますが・・・フィルター掃除にはやはり問題がありますので、ホコリに弱い方は止めておいた方が良いでしょう。
サイクロン式は新世代の掃除機ですか?
紙パック式とでは特徴が一長一短ですので、単に別の選択肢と思うのが正しいのではないかと・・・。個人的にはアイデア商品に近い新家電(掃除機)だと思います。
新世代の掃除機は、"未完の大器" ・ロボット掃除機のはずです。
サイクロン式はこういう人に向いている、こういう人に向いていないというのはありますか?
フィルターを時々掃除しなければならず、また、ゴミ捨ても頻繁ですので、忙しい人には向いていません。なので一人暮らしの社会人や、共働きの人は紙パック式にしておけば、今まで通りの生活を送れます。
また、小さな虫の死骸やゴキブリを掃除機に吸わせる人は、紙パック式にしないとダストカップを開けられなくなるかもしれません(^^;。
サイクロン式は、ダイソン等ゴミの回転が見える透明なダストカップを使うまともな物だと、割れたガラス製コップや陶器の破片を吸い込ませると、内部が傷だらけの醜い状態となります。なので、事実上それらを吸い込ませることも、出来ないと考えておいた方が良いでしょう。
あとは、やはり毎回吸ったゴミの量が分かるのが楽しい人には向きますが、ゴミなんて見たくない人にはあまり向かないかもしれません。
サイクロン式をそれまで使ったことがなければ、最初は誰でも "こんなにゴミが取れたのか!" と、毎回感心しきりだと思います。
しかし、一カ月も経つと・・・結構飽きて、あまり清潔ではないゴミ捨てが面倒になるかもしれません。
ただし、紙パック式では、紙パックを交換しなければ、吸引力を強い状態に戻せません。しかし、サイクロン式であれば、フィルター掃除の手間を掛けさえすれば、無料で吸引力を強い状態に戻せます。
なので、勿論手間の問題も考えて、フィルターの詰りにくい、ダイソン等サイクロンの渦の強い本格的な商品に限っての話ですが、とにかくいつも掃除機の吸引力をベストコンディションで使いたい方には、サイクロンの方が良いと言えるでしょう。
もっとも、サイクロン掃除機が登場するまでは、皆が紙パック式を使い、紙パックにゴミが溜まって吸引力が落ちて来ても、特別困る方はあまりいらっしゃらなかったものと思いますが・・・(ここで世界一こだわったのが、家庭用サイクロン掃除機を開発したダイソン社のジェームズ・ダイソン氏なのかもしれません。…勿論、商売絡みですが)。
そこの所をどう思うかも、紙パック式とサイクロン式の選択の分かれ目かもしれません。
すばり、どちらが良いですか?
ずばり、実はどちらでも良いと思います(笑)。
ただ、本来の掃除だけでも大変なのに、更に面倒なのは御免という方には、紙パック式が良いでしょう。考え方によっては、紙パック式の方が面倒がない分、高級品だとも言えるでしょう。
また、実のところ、どちらが長持ちするかと言えば、それは紙パック式のはずです。日本製の(旧来の)サイクロン式だと、フィルターが詰まったまま使ってモーターを痛める人が多いようです。
最近では、モーターの過運転保護機構が付いている機種が多いはずです。
しかし、フィルターには、まめに清掃していても取れないホコリが溜まって行きますので、その場合には、使い込む内に掃除の途中で止まることが多くなります。
その為、結局音を上げる、つまり面倒だからと愛着を持てず、買い替えたくなってしまう人が多いのではないでしょうか。
しかし、サイクロン式を一度は使ってみなければ気が済まないと思う方は、サイクロン式にしておけば良いでしょう。
我が家の一度の掃除、更には一部屋の掃除で、どれだけのゴミが出るかを確認出来るというだけでも、一度は体験してみる価値はあります。
…今日は多かったとか、少なかったとか、リアルで面白いですし(※特にはしばらく掃除していない場合・・・)、何故紙パックにあんなに沢山のホコリが溜まるかの、長年の謎が解けます。
ただ、私としては、ペットの毛が多くて紙パック式だと非経済的過ぎる等の理由がある訳でなければ、1度だけでも良いのではないかと思います(以降は、個々人の相性次第だと言えるのでしょうが・・・)。
紙パック式は、交換時にどれを買ったら良いか分かりにくいです。
紙パックは、掃除機本体と同じメーカー製であれば、原則的には(=相当古かったり、家庭用ではなかったり、ハンディタイプや縦型だったりしなければ)どれでも使用することが可能です[※排気自慢の日立「かるパック」の上位機種には、推奨紙パック有]。
また、紙パックを買いに行くのが面倒だという方もいらっしゃるようですが、現在はamazon等で宅配して頂くことも可能です(送料はまちまちですが、商品自体は店頭よりも安い場合が多いです)。
サイクロン式のメリット | |
サイクロン派視点 | 紙パック派からの反論 |
紙パックが必要ないので経済的 | サイクロン式は不潔(ゴミ捨て&フィルター掃除) |
一回一回吸ったゴミの量が分かる | ゴミなんて別に見たくありません |
吸引力が続く | 頻繁なゴミ捨てとフィルター掃除が必要です。紙パック式は紙パックを替えるだけ |
指輪やおもちゃを吸い込んでも、すぐに取り出せます | 少しは大変ですが、紙パックでも可能です |
大量のペットの毛を吸わせるので、紙パック式では非経済的すぎる | ・・・それなら合理的だと思います |
何ヶ月も、紙パックにゴミを溜めておくのは不潔です | 頻繁にゴミ捨てをして、その度にゴミに触れるのこそ不潔です |
紙パックを買いに行かなくて良い | まとめて買っておく、もしくはネットで注文する |
紙パック式のメリット | |
紙パック派視点 | サイクロン派からの反論 |
メンテナンスは紙パックを交換するだけ | ゴミが溜まると吸引力が落ちるし、費用がかかる(※1年間に平均4枚必要) |
まともなサイクロン掃除機は高い | でも、紙パック購入費はいらないんです(※紙パック価格一覧) |
ゴキブリやガラスの破片を吸い取れます(※メーカー非推奨で自己責任です) | ・・・。(そういうのは吸わせません!) |
サイクロン式は頻繁に構造が変わるので、常に実験機みたいなもの | ・・・。(ダイソンなら大丈夫!) |
関連ページ
- 掃除機選びの基礎知識(姉妹ページ)
- 購入後のよくある誤解(面白ページ!?)
- やはり値段です
- おすすめ・人気の掃除機
- サイクロン掃除機とは〜その原理と欠点(発展編)
- 格安サイクロンの闇
- メーカー純正紙パック・ランキング